過去のお知らせ【2013年アーカイブ】
« お知らせ 一覧へ戻る がん化学療法看護 認定看護師という制度をご存知でしょうか。この制度は、がん化学療法が治療の選択肢となった時、がん化学療法の治療期、そして経過観察の時期の看護を専門した看護師を育成、認定するものです。
この認定看護師を目指す人々を対象とした首都大学東京 健康福祉学部のオープンキャンパスが11月30日に行われ、大門いまづクリニック院長の今津嘉宏先生が「がんと漢方医学―看護師が行う漢方医学とフィジカルアセスメント」と題し講演。がん治療における看護師の役割と漢方医学について語りました。
今津先生は近年、多くの医師が漢方薬を処方しているにも関わらず、約8割の医師、看護師が処方される漢方薬の詳細なメカニズムや処方の意図を理解していない現状を説明。これは、漢方について学校で勉強したことのある人材が、およそ2割にとどまっていることが影響していると語り、事前教育の重要性を示しました。
また、医師、薬剤師が見落としがちな患者さんの変化をチェックする役割が看護師にはあると語り、患者さんが発する様々なサインをキャッチするすべを身に着けることを勧めました。「僕は脈を3本(指)で測ります。ICUやオペ室時での測り方と同じです。血管の太さ、深さ、厚みが最も良くわかるのがこの方法です。」と語り、日常的に行っている検査からでも様々な情報を得ることができるとしました。加えて、「勤務時間を長くする必要はなく、質を上げること、視点や考え方を変えることが大切です。」と今津先生。たとえば、食欲不振の患者さんに漢方薬を処方するとしても、その症状がどこから来ているのかにより、処方するのは半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) かもしれないし、六君子湯(りっくんしとう) かもしれない、それ以外も考えられるとして原因を見極めることの必要性を力説しました。
さらに今津先生は漢方医学における「病気」の考え方を紹介。漢方では、全身倦怠感や食欲不振といった不定愁訴として捉えられがちな小さな変化も病気、「気虚」とすると語り、「フィジカルの変化もメンタルの変化も消化器の状態もみんな関係しています。これらをまとめて漢方薬では、気の状態と捉えます。口内炎だから口内炎の薬、食欲が無いから食欲が湧く薬、ではなく、全体として治すということを漢方では大切にしています。」と述べました。
最後に今津先生は「見方を変えること。小さな変化に気づくこと。漢方の言葉を使ってみることで、今と同じスキルでもっと多くの情報を患者さんのために役立てることができます。それが、がん化学療法の認定看護師に求められる仕事だと思います。皆さんのスキルを頭の中でより整理するために、漢方医学を活用してください。」と結び、オープンキャンパスに訪れた看護師たちにエールを送りました。