過去のお知らせ【2014年アーカイブ】
« お知らせ 一覧へ戻る 実は私も、長年花粉症に悩まされていました。ですが、ここ数年は、飛散量がとびぬけて多い日以外は、順調に過ごせています。その私が勧める花粉症対策とは・・・。(1)まずは眼鏡やマスクをつける (2)花粉に長く触れない (3)帰宅したら服に付いた花粉をしっかり落とす などの基本的な予防法を徹底することです。「えっ?当たり前では?」と思うかもしれませんが、徹底的に花粉と接しない努力をする。これが一番の基本で一番の重要な部分です。
これを怠っていては西欧薬も漢方薬も十分に力を発揮することはできません。お薬を使う前にできることは必ず実践しましょう。
自分のストレス、そして体調の変化に気づくことも大切です。これは他の病気にも言えることですが体調の良し悪しに気づくことで、ストレスにどこまで対応できるのかがわかるようになります。花粉症の場合、花粉がストレスの原因です。体の調子が落ちると、花粉症の症状もひどくなりませんか。花粉症だからその対策だけすればいいという訳ではなく、ご自身の体全体を考えることが重要です。まずは体調を整え、そのうえで調子が悪いときには外出を控えるなど、花粉を避けるためにできることをより厳しく実践しましょう。
昨年、昭和薬科大学を退官された田代眞一(たしろしんいち)教授は、ご自分の体を使って数多くの基礎実験を行い、すばらしい研究結果をぼくたちに残してくれました。
数年前、京都の学会から東京へ帰る新幹線でご一緒させていただいた田代先生からは、基礎研究の題材の探し方や実験にまつわる苦労話など、終始ビールを片手に楽しいお話しを拝聴させていただきました。
田代先生からぼくがもっとも影響を受けた研究結果は、「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」についての研究です。
この研究は、田代先生の研究室にいらっしゃった で悩んでいた女性たちをなんとか苦痛から救うことはできないものかと、行われたものだそうです。田代先生のお人柄がうかがえる研究の一つです。
この研究は、実際に月経痛で悩んでいる女性に協力していただき行われた研究です。
使われた漢方薬は、「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」です。
この「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」は、「芍薬(しゃくやく)」と「甘草(かんぞう)」というたった2種類の生薬でできている漢方薬で、急激におこる筋肉のけいれんをともなう疼痛に用いられます。
研究の結果、「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」を内服すると月経痛が軽くなり、なかにはまったく鎮痛剤を使わなくてもよくなる女性もいらっしゃることがわかりました。
この漢方薬は、妊娠を心配している方や薬剤アレルギーを持っている方にとって、鎮痛剤を使わないですむわけですから、たいへんありがたいものだといえるでしょう。
しかし、田代先生のすばらしいところは、ここからです。この研究結果から、田代先生は、どうして「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」が効くヒトと効かないヒトがいるのか、をさらに追求され、原因を突き止められています。
月経痛で悩む日本人女性の4人のうち3人には「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」は有効で、残りの1人には、効かない。
どうしてなのでしょうか。
理由は、ヒトが「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」を分解して有効成分を作り利用するためには、ある種の腸内細菌が必要だったんです。この腸内細菌は、すでにみなさんの腸の中に住んでいるのですが、教育をしてあげないと「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」を分解することができないのだそうです。
ヒトの力では、分解することのできない成分でも、腸内細菌の力を借りてクスリとして活用することができます。このような腸内細菌のことを資化菌(しかきん)といいます。
腸の中には、100兆個の腸内細菌が住んでいます。人間の体を作っている細胞の数は60兆個と言われていますので、すごい数ですね。
ビフィズス菌を使った健康食品がたくさんあることからも、腸内細菌の重要性がうかがわれます。
「痛風の原因とされているビールをたくさん飲めば、痛風が治る。」という本まで出しているビール好きの田代先生ですが、田代先生の本当にすごいところは、ここからです。
「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」が効かなかったヒトへ、月経前から「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」を飲んでもらいます。すると、腸内細菌が教育されます。それまでは「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」を分解することが出来なかった腸内細菌が教育され、「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」を分解、活用することができるようになり、月経痛が治ることがわかりました。
ぼくのクリニックには、「駆け込み寺」のように、さまざまな悩みをお持ちの方がおみえになります。
ぼくは、決して言い伝えや経験論だけで治療するのではなく、漢方薬といえども、現代医学的に使い治療を行っていく必要があると思います。
宇宙ステーションで生活する時代に生きているわたしたちだからこそ、科学的に証明され解明された作用機序をひとつひとつ組み合わせて、理論的に漢方薬を活用して、病気を治していくことも大切だと思います。