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過去のコラム【2013年アーカイブ】

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漢方薬をうまく飲むには?

工夫1 オブラートをうまく使いましょう

 漢方薬を処方すると、「良薬は口に苦し」と言っていただける方なら良いのですが、「なんでこんなにまずいの?」と、白旗を揚げてしまう方もいらっしゃいます。がん患者さんでは、腫瘍によるえん下障害や抗がん剤の副作用で味覚異常が起こったり、放射線治療で唾液が出なくなり漢方薬がのどに詰まりやすくなったりします。ただでさえ病気でつらいときに、漢方薬を飲むこと自体が苦痛を伴うようではいけません。

 そんなときには、オブラートの出番です。


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オブラートで、漢方薬を包みます。このとき大切なのはしっかりと漢方薬を包むことです。場合によっては数枚使っても大丈夫です。最近では、袋状になっている便利なオブラートもあるそうです。

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水を準備します。オブラートで包んだ薬が浮かぶ程度の量です。

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準備した水の上にソーッとオブラートの包んだ薬を浮かべます。

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徐々にオブラートがゼリー状に溶けてきます。周囲がゼリー状になったらオブラートに包まれた薬と水を一緒に飲み込みます。ノドをツルンと通っていきますよ。


 これならば口の中でにがい味が広がることもありませんし、大量の水分を飲む必要もなくなります。試してみては、いかがでしょう?

工夫2 漢方薬を美味しく頂きましょう

 漢方薬の味がどうしても駄目な方に、「漢方薬を美味しくいただく」方法をお教えしましょう。昔から漢方薬の作用は、アロマテラピーなどと同じようにニオイにも味にも効果があると言われています。漢方薬を「ニオイと味も一緒に楽しみながらお飲みください」と指導を受け、お湯に溶かして飲んでいる方も沢山いらっしゃることと思います。しかし、その風味が苦手な方もいるでしょう。そんなときは、抹茶、コーヒー、ココアで味付けしてみてはいかがでしょうか?


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コップに大さじ1杯のお湯を準備します。お湯の温度は、できるだけ高温が良いようです。

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お湯の中に漢方薬を入れ、かき混ぜます。数分で溶けてくれます。

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ここへお好みで抹茶粉末、インスタントコーヒー、ココアの粉を大さじ1杯加え、充分に溶かします。

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適度な温度になったら、内服します。


 この方法は、小さな子供にも好評で、がん患者さんにも毎日違った味を楽しむことが出来ると喜ばれています。

日本の伝統を守り続ける漢方医学

 おせち料理に初詣。門松にお屠蘇(とそ)。お年玉にカルタ遊び。正月になるといろいろな日本の伝統を楽しむことが出来ます。各地方、各家庭で食されるお雑煮も、伝統の一つですね。みなさんは2013年の正月をどこで誰と過ごしておいででしょうか? 正月になると日本の伝統を守っていくことの大切さを身近に感じます。

 日本独自の伝統医学である漢方医学も、言うなれば、日本の伝統のひとつでしょう。その漢方医学も科学の進歩によって未知の部分が解明されるようになってきました。1887年に長井長義博士が、麻黄(まおう)という生薬(薬草)からエフェドリンを発見し気管支喘息の治療薬として多くの患者さんを救うことができたように、これまで西洋医学では治すことが出来なかった病気の治療に漢方医学は役立てられてきました。最近では、日本で腸閉塞症の治療薬として使われている大建中湯(だいけんちゅうとう)が、2011年、アメリカの食品医薬局(FDA)で漢方薬の臨床研究が開始されました。

 これまでは経験豊富な漢方専門医にしか使いこなすことが出来なかった漢方薬が、今後ますます、どの医師でも現代医学的に基礎薬理学を根拠にがん患者さん達のために活用されるようになっていくと考えられています。

 伝統文化を守っていくことは、日本の魂を忘れないようにすることです。しかし、古いままのものを受け継いでいくことが伝統を守ることではありません。それは、歌舞伎が常に新しいものを取り入れてファンの心を魅了するのと同じように、伝統によって守られる漢方医学も、その時代に合わせ、新しい科学を取り入れ進歩していくことが大切だからです。これからの漢方医学は、最先端医療と協調し、常に患者さんの身になって使われていく医学として成長していくものと考えます。