芝大門 いまづ クリニックからのお知らせ
漢方薬ってなあに?
講師:今津 嘉宏 先生(芝大門いまづクリニック院長)
13:05~14:05
・漢方の考えかた
・がん臨床に役立つ漢方薬
・看護師に期待すること
芝大門 いまづ クリニックからのお知らせ
vol.140 「冷え」は万病のもと。温かい体で冬を乗り切ろう
大寒に入り、冬の寒さもいよいよ本番。厳冬の冷え対策は万全でしょうか。冷えは“ちょっとした不調”と思われがちですが、実は万病のもと。がん、脳血管障害、心疾患など多くの病気の根源に冷えがあるのではないかと注目されています。
2014年10月に『上体温のすすめ』を出版し、この冷えに警鐘を鳴らしているのが芝大門いまづクリニックの今津嘉宏院長です。外科医としてがんの治療に携わり、数多くの入院患者を回診するなかで気づいたことが「冷え」だったと言います。「朝、病室を回診していると布団がはだけていたり、落ちていたり。体を冷やしている患者さんは体調が悪く、冷えにはなにかあると感じていました。いまは2人に1人ががんになる時代。最近ではメタボリック・ドミノという言葉も注目されています。これは1個の原因からドミノ倒しのように倒れて、最終的に死因につながる病気になるというものです。病気が始まる上流では、なにか単純なことが起きているのではないか。そして、体温を調節すれば、ドミノが倒れることはないのではないかと考えています」。
冷えがあったら、どこかに「問題」がある
「手足が冷たい」、「肩がこる」、「しもやけができやすい」、「おなかが冷えると下痢をしやすい」、「腰が冷えると腰痛や足にしびれを感じる」など、冷えの感じ方は人によってさまざまです。気管支喘息やCOPD (慢性閉塞性肺疾患)の人では肺に冷えを感じ、捻挫や骨折をすると患部に冷えの自覚症状が現れるといわれています。冷えを感じたら、体のどこかに問題があると考えた方がよいでしょう。
しかし、冷えの治療は非常に難しいとされています。西洋医学では冷えに該当する病名がなく、診断や検査法、治療法がないからです。今津院長は、「東洋医学には、冷えは病気の原因であるという考え方があります。ですから、東洋医学の考え方も取り入れながら、病気にならないように自分で体温の管理ができるようになってほしい」とセルフケアの重要性をアドバイスします。
精神的なストレスと子どもの冷えにご用心
冷えには、いろいろな原因があります。冬の冷えというと、気温の低下や寒冷が影響して手足が冷たくなったり、体調を崩したりする人が多くいますが、意外な原因もあります。それは、精神的なストレスです。
近年、精神的なストレスと体温には、関係があると知られるようになってきました。たとえば、会社勤めをしている人の場合、異動や転職などで慣れない仕事を始めると、精神的なストレスがかかり交感神経が優位になり、体が戦闘モードになって心臓の鼓動が速く、そして体温が上がってきます。「しかし、1か月、半年とこのような状態が続くとエネルギーがなくなって体温は下がってきます。精神的なストレスによって冷えが起きているときは、自律神経を乱しているストレスを解消することが大切です」(今津院長)。健康に気をつけていても、ストレスの多い生活をしていると体は温かくなりません。スポーツや趣味など、楽しくて夢中になれる活動を自分の生活の中に取り入れましょう。
また、冷えは大人だけでなく、子どもにも見られます。「冬になるとしもやけができやすい」、「風邪をひきやすい」といった不調は、冷えの兆候です。子どもの頃から体を温めることを大切にして、冷やさないように心がけましょう。「10代、20代は、男女ともにホルモンバランスが変わる時期。とくに10代の子どもをもつ親は、子どもの体温に気をつけて健康管理をしてあげてほしいと思います」(今津院長)。
冷えに効果のある温めポイント
では、冷えを感じたらどこを温めたら効果があるのでしょうか。今津院長によると病気のあるところは温度感覚が変わるため、温める部位は自分でわかることが多いようです。膝が痛いなら膝を、手が冷えるなら手を温めるというように部分的に温めます。肩がこりやすい人や、首が冷えると風邪をひきやすい人は、首の後ろが大事な温めポイントとなります。
また、冷えると内臓の働きが低下して免疫力も下がり、全身の活動に影響します。冷えから体調を崩しやすい人や手足に冷えを感じやすい人は、全身を温めましょう。四肢末端まで、全身に温かい血液を巡らせるには、へその下あたりを温めるのが効果的。体全体を温めることができます。
自分に合った体調管理の方法を見つけよう
冷えの自覚症状や生活環境は人によって違うので、自分の毎日の生活(衣食住)のなかから自分に合った対処法を見つけることが大事です。
簡単で長く続けやすいおすすめの方法は、起床後に1杯の白湯を飲むこと。体の芯から温まります。冷たい飲み物は一気に体を冷やして、なかなか体が温まりません。腸が冷えると全身の活動が低下し、体調はマイナスに傾きます。こうならないように飲み物や食べ物は胃腸を冷やさないものを選び、温かくして過ごしましょう。
体温は、いまの体の状態をわかりやすく表してくれるバロメーターです。発熱時にしか体温計を使わないという方は多いと思いますが、日頃から体温計を身近に置いて活用すると自分の普段の体温(平熱)がわかり、体調管理に役立ちます。体の温度には、皮膚の温度と深部体温の2種類があります。皮膚の温度は寝ているときは上がり、朝になると下がってきます。一方、体の深部温度(体温)は寝ているときに下がり、朝になると上がってきます。体の温度はこのように違いがあるため、「体温は、この2つの温度がちょうど交差するときに測定するのがいいです。起床後は食べたり飲んだりする前に、夜は布団に入る直前がよいでしょう」(今津院長)。体温は測定時の条件をきちんと揃えることが体調管理の大事なポイントです。ぜひ、起床時や就寝前などの測定習慣をつけるようにしてみましょう。
監修 芝大門いまづクリニック 院長 今津 嘉宏先生
2015年1月27日(火)19:00 ~ 20:00
会場 長野赤十字病院 南新棟2階 第一研修ホール
講演 がん治療と漢方
座長 長野赤十字病院 がん治療センター長 袖山治嗣 先生
講師 今津嘉宏
受講料: | 5,000円(税込) 会員 5,000円(税込) ※会員割引なし・クーポン使用不可 |
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日時: | |
会場: | 東京 株式会社エス・エム・エス本社 18階 セミナールーム |
【ナース専科×NPO法人キャンサーネットジャパン タイアップセミナー】
近年、医療用漢方薬が、抗がん剤による副作用の改善や、がん患者のQOLの維持向上に有効であるとの知見が得られ始め、がん臨床での関心が高まりつつあります。
いっぽうで、漢方薬とは?
がん臨床において、漢方薬がどういうときに有効で、なぜ効くのか?について、改めて知る機会はなかなかありません。
本企画では、漢方薬についての基礎的な知識とともに、漢方薬の使用の実態や臨床試験によりわかってきたこと、期待できることをお伝えするとともに、看護師として心がけるべきことなどについて、皆さんと一緒に考えます。
講師:今津 嘉宏 先生(芝大門いまづクリニック院長)
13:05~14:05
・漢方の考えかた
・がん臨床に役立つ漢方薬
・看護師に期待すること
講師:西村 元一 先生(金沢赤十字病院副院長)
14:05~14:55
・がんと、治療に伴う不快な症状
・漢方薬活用の実例
・がん治療の副作用対策で看護師に期待すること
講師:溝口 綾子 氏(乳がん体験者 KSHS:キレイに再建、ホンネで再建 主宰)
15:05~15:25
・乳がん治療を経験して
・ホルモン療法の副作用
・漢方薬を活用して
講師:講演者
司会:梅田 恵 氏(がん看護専門看護師:株式会社緩和ケアパートナーズ代表)
15:35 ~16:25
・来場者からの質問票に基づいた司会と講師とのQ&A
今津 嘉宏 先生
芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長
日本がん治療認定機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医・指導医、日本東洋医学会専門医・指導医。
西村 元一 先生
金沢赤十字病院副院長
石川県金沢市生まれ。1983年金沢大学医学部卒業後は金沢大学附属病院や関連病院で消化器外科医としての研鑽を積む。
1992年より金沢大学附属病院第2外科(現 消化器・乳腺・移植再生外科)のスタッフとなり、大腸癌の治療や研究に携わる。2008年から金沢赤十字病院勤務となり、2009年より副院長を務め現在に至っている。
大腸癌に関しては検診・診断から手術・薬物治療まで広い領域にわたるスペシャリストのひとりである。大腸がん啓発「ブルーリボンキャンペーン」アンバサダー。
梅田 恵 先生
がん看護専門看護師
溝口 綾子 氏
KSHS(キチンと手術・本音で再建の会)代表
自身の経験より、乳房再建の必要性を実感。乳がん治療、さらに乳房再建を考える際に、患者と医療者がホンネで語り合える場が必要と感じ、2009年に、KSHSを立ち上げる。
特別書籍販売会
当日は、会場限定でお得に買える書籍販売も開催!充実のラインアップでご用意しています。
定員:80名
2015年1月13日(火)午後7時からテレビ朝日「林修の今でしょ!講座」に出演します。
医者は風邪になってしまった時、どんな対処法で治しているのか?
医者の実践している効果抜群の治し方をレクチャーしてもらいます!
「温めた○○を飲む」「高熱のときは、○○の上を冷やす」「○○になって寝る」など、
目からウロコの対処法の数々。これを学べば風邪が治る!?
さらに、意外と知られていない風邪が治るお粥の食べ方や、
予防効果を上げる正しい手の洗い方をレクチャー!
「首にネギを巻く」など古くから伝わる民間療法の真偽も明らかに!
風邪対策を万全にし、寝込むことなく冬を乗り切りたい人必見の医療情報が満載!
私たち2人に1人ががんにかかり、4人に1人ががんで亡くなるという時代。がん治療の技術は日進月歩で、さまざまな治療法で多くの人たちが命を救われています。一方で、がんと共に生きる「がんサバイバー」の人たちも増えています。
がんと漢方というと、「漢方薬でがん細胞をやっつける、すなわち漢方薬でがんを治す」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際はがんやがんの治療で起こってくる、多くのココロとカラダのトラブルを緩和したり、がんサバイバーの元気を助けたり、いわゆる名アシスト“薬(役?)”として活躍している場合が多いのです。
そこで、元フジテレビアナウンサーでアロマセラピストの大橋マキさんが、がん医療における漢方の役割について漢方治療に詳しい外科医、今津嘉宏先生に話をうかがってきました。
大橋マキ(以下、大橋):クリニックは漢方腫瘍内科、がん漢方、漢方内科、消化器内科などさまざまな診療科を標榜していらして、さまざまな患者さんを診ていらっしゃるんですね。がんを患っている患者さんはどのくらいいらっしゃいますか?
今津先生:しっかりと統計を取っていませんが、全体の6割〜7割くらいはがん患者さんですね。インターネットやテレビの番組を見て来られる方が全体の3分の1、病院などから紹介される方が3分の1、残りは、もともと風邪などで当院にかかっていて、そのご家族ががんになったから診てもらいたいといって来られるケースなどです。
大橋:「がん漢方」というと、例えば、「漢方薬でがんを治す」とか、「これを飲むとがんが消える」とか、必ずしも正確ではない情報を信じている方たちもいるかと思いますが・・・。
今津先生:確かに、そういう方もいらっしゃいます。ただ、当院で診ている患者さんのほとんどの方は、漢方に対して正しく理解されているようです。もちろん、科学的な根拠のない情報を信じている患者さんには、事前に漢方薬でできることとできないこと、当院で行っている治療のことなどについて、具体的にお話しさせていただきます。「あなたはこういう状態なので、今は手術や抗がん剤、放射線治療など、西洋医学的な治療を選んだほうがいいですね」と説得することもあります。
大橋:漢方で診ている先生がそういう話をされると、患者さんは驚きますか?
今津先生:いろいろですね。なかには、これまで西洋医学的な治療を選ばなかった理由を、ご自身の言葉でしっかり話される患者さんもいます。だから私も、その理由(治療を受けない理由)に納得したら、患者さんの望む治療をします。
大橋:ところで、今津先生は外科医、専門医として手術も多く経験されています。がん治療は先生がおっしゃるように、手術や抗がん剤による薬物治療、放射線治療など西洋医学的なアプローチが主ですが、そこにあえて漢方薬を使った治療をしていきたいと思われたのはなぜなのでしょう。
今津先生:漢方治療に行き着くまでは、いくつかの段階がありました。
大橋:最終的な決め手は何だったんでしょう。
今津先生:それは意外とシンプルでしたね。手術後の合併症に、腸閉塞(イレウス)があります。おなかを開ける手術をすると、その後、大腸の動きが悪くなり、食べものや消化液など内容物がうまく流れなくなってしまうのです。腸閉塞は外科医がおなかを開けたことが原因の場合もありますが、治療をするにはまたおなかを開けないといけません。
大橋:そうするとまた腸閉塞が起こってしまう・・・悪循環ですね。
今津先生:そんなとき、ある医師から腸閉塞に伴う腹部膨満感に漢方薬が有効ということを聞いて、さっそく使ってみたんです。
そうしたら、腹部膨満感と腸の動きが改善され、漢方に興味を持つ大きなきっかけになりました。
大橋:でも先生、漢方には西洋医学と違った独自の理論があって、体系的に学ばないとむずかしいと聞いたことがあります。
今津先生:私が外科医だったことが幸いしているかもしれないですね。“手術で治らないものに漢方薬が有効なら使えばいいじゃないか”という発想でしたから(笑)。摩訶不思議な薬だなぁと思い、それから慶應義塾大学医学部に週1回通って、勉強を始めました。
大橋:大学では、漢方のどのようなことを学んでいらっしゃったのですか?
今津先生:私の専門は食道がんなのですが、当時はまだ抗がん剤治療も、放射線治療も進歩していなくて、手術一本だったんです。難治がんとされていて、助からない方が多く、そこに漢方治療が使える道はないかと考えたんです。そこで気付いたのは、外科と漢方は相性がいいということです。
大橋:え、外科と漢方?
今津先生:手術の際、患者さんのおなかの中を実際に触わるので、臓器やがんの重さや硬さ、血管やリンパがどう走っているかも目で見て分かりますが、大学で学んだ漢方の理論には、外科医として経験的に裏打ちするようなことばかり書かれていたんですね。
大橋:カラダの中で起こっていることと、漢方の理論が先生の頭の中では上手にリンクできたということですか?
今津先生:そうです。例えば、むくみがあった場合、漢方の考え方だと「水毒(すいどく)」と言いますが、実際、むくみがある部分の組織がどういう状態になっているかが経験から分かります。だから、この状態は確かに水毒で、この漢方薬が有効だろうって理解できるんです。漢方薬ほど外科医に向いている薬はないと思います。
大橋:具体的に、がん治療で漢方にできることには何がありますか?
今津先生:いろいろなことができます。また、漢方薬ではなく“漢方医学”の考え方を使うこともあります。初診で漢方薬を処方する患者さんは、3分の2ぐらいです。
大橋:漢方医学の考え方、ですか?
今津先生:そうです。残念ながら、今のがん治療って正直言って苦しさが伴うことの方が多い。治療期間も長くなるので、ココロもカラダも疲れてしまう。それは患者さんだけでなく、看護する側の家族もそうです。当院では患者さんが何を不安に思い、どうしていきたいか、どこが、何がつらいのかを一つずつ聞いていきます。そこから漢方治療が始まるんです。
大橋:少しずつ、患者さんのココロとカラダを解きほぐしているんですね。それはとても時間がかかるでしょう。
今津先生:初診では30分かけて話を聞きます。場合によっては同席されたご家族の治療をすることもあります。24時間365日とまではいかないけれど、患者さんをずっと支えているのは医療者ではなく、家族です。だから、家族のココロとカラダの健康がとても大事なんです。その上で、衣・食・住においての心がけを一緒に考えていきます。話をするなかで、患者さん自身が生活の間違いに気付いて変えていくことも多いです。
大橋:具体的にどういうことがありますか?
今津先生:例えば食事ですが、インターネットなどには患者さんのがんの食事について、さまざまな情報が錯綜しています。そこに捕らわれてしまう方もいて、間違った理解で食事を続けていることもあります。ですが、がん治療で大切なのは体力をつけること。元気になって体力がつけば、治療の幅が広がりますし、抗がん剤の副作用を軽減させることもできるかもしれません。治癒率も上がり、再発も防げます。
大橋:漢方治療の考え方を取り入れることで、治療のいい循環が生まれていくんですね。
今津先生:自転車のペダルをこぎ出す、そのタイミングでちょっとだけ後押しをする。それでうまく回るようになります。そのお手伝いをしているという感じです。
大橋:“患者さんの気付き。”それがとても大切な気がしてきました。
今津先生:とても大切です。ご自身が自覚していない症状でも、問診をしていくなかで徐々に分かっていくものです。初診のときはカルテにびっしり書かれていた問題点も、受診の回数を重ねるごとに減っていき、それに伴って患者さんの体調もいい方向に向かっていくことが多いですね。
大橋:先生と患者さん、そしてご家族の方がチームとなって治療に取り組むという、「チーム医療」ができているのではないかと思いました。
今津先生:そうかもしれないですね。チーム医療というと、医師、看護師、薬剤師、メンタル系をサポートする専門家などさまざまな医療者が患者さん中心に関わっていくというイメージがありますが、漢方なら医師と患者さん、患者さんのご家族の間でもできるんですよね。
大橋:患者さん自身が治療に積極的に関わるという感じがします。
今津先生:もちろん、そこに主たる治療をする主治医も関わってきます。
大橋:主治医の先生にはだまって漢方の治療を受けに来られる患者さんがいると聞くことがありますが、今津先生のところではどうでしょうか。
今津先生:そういう方も来ます。それは漢方治療に対してさまざまな考え方がありますので、基本的には当院で話した内容は診療情報提供書という形で主治医に戻します。
大橋:主治医の先生とは必ず連携するんですね。
今津先生:セカンドオピニオンとして当院を受診される患者さんも多いのですが、その場合、画像データなども必要になるので、主治医からいただくようにしています。逆に私はこういう目的でこういう漢方薬を処方しているという情報は、主治医にしっかり伝えます。お互いが知り得た患者さんの情報を共有することで、より最適な医療を患者さんに提供できると思います。
大橋:がん治療をおこなっている医師の、漢方に対する理解は広まっていますか?
今津先生:今は医学部のカリキュラムに漢方医学も盛りこまれていますし、若い人たちはどちらかというと漢方治療に興味を持ってくれていますね。年配の医師も徐々に理解を示してくれるようになっています。
大橋:今津先生が漢方薬をがん治療に取り入れるようになって、何か変わったことはありますか?
今津先生:今はがん診療もマニュアル化されて、基本的にはどこの医療機関でも同じ治療が受けられるようになりました。食道がんで言えば、手術、抗がん剤治療、放射線治療の3つの柱をうまく組み合わせることで、治癒率も上がりました。しかし、一方でデータが悪いから治療はできませんと言われてしまうような患者さんに対してのサポートが不足しています。それが漢方治療という手段を用いることで少し補えるようになったと感じています。
大橋:手応えを感じられているんですね。
今津先生:治療そのものにゆとりが生まれた気がします。
大橋:最近、がん治療に関わらず、その方にとって最適な医療とは何なのか、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の改善なのか、それとも別のところにあるのか。それは一人ひとり違っているけれど、尊重しなければいけないことなんだ、と感じています。実際問題として、がんと共に生きる「がんサバイバー」の方が増えていますし。
今津先生:漢方は、まさにその部分で重視される医療ですよね。QOLという意味で言うと、昔は大きくおなかを開ける医師、できるだけ多くの臓器を取れる医師が名医とされていたわけで、QOLという考えはそこにはありませんでした。しかし、今は内視鏡を使った治療やロボットを使った手術、ピンポイントで照射できる放射線治療、抗がん剤治療の副作用対策など、患者さんのカラダへの負担を考慮した治療法が実施されています。
大橋:がんになってからも自分らしく生きられる可能性が高まったのですね。実際、がんを患っている方も風邪を引きます。おなかが痛くなったり、蚊に刺されたり……。そういうことも含めて、がんサバイバーの方たちの健康管理を担うのは、今津先生のような先生ではないかと感じました。
今津先生:ありがとうございます。私自身は漢方という存在を知って、がん患者さんのつらさ、不安、苦痛に何らかの形で、多少なりとも応えることができるようになったと思っています。しかし残念なことに、漢方に詳しいけれど、がん治療には詳しくない医師もいます。そこが一つ課題かもしれません。
大橋:そんな今津先生が目指す医療はどこにありますか?
今津先生:いろいろありますが、一つはカラダのメンテナンスも含めた予防です。万人に通じる予防法はなく、それぞれの年代、性別、抱えている問題に合わせた予防が大事です。予防というとがん検診を思い浮かべる方も多いと思いますが、検診はがんを早期発見して、大事に至らないようにするためのものです。その前段階にあるのは、病気にならないための、まさに予防で、そこには漢方医学の考え方が不可欠だと思っています。
大橋:まさに、転ばぬ先の杖、ですね。
今津先生:しかも日常に即した方法が大事。無理しない予防でないと続きません。
大橋:日常というと、さきほど受付にいらっしゃった患者さんが、「今日、診察日かしら?」って。まるでお茶でも飲みに来たような感じでした(笑)
今津先生:僕の父は町医者だったんですが、僕も父と同じように町医者でありたいと思っています。誰もが気軽に相談に来てもらえるような。
大橋:患者さんの治療法を選ぶのを支援したり、QOLを改善する方法を助言したり、そしてご近所の頼りになるお医者様でもあって。今津先生って、コンシェルジュみたいです。
今津先生:町医者として、そうありたいと思っています。
※掲載内容は、2015年1月取材時のものです。