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過去のコラム【2014年アーカイブ】

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花粉症 まず症状を治療、次に体質改善

 みなさんは春分の日をどうやってすごしていますか。この時期、満開となる桜の花は、卒業式や入学式などいろいろな思い出と重なります。わたしも、淡いピンク色をした桜の花びらをたくさん集めて、遊んだ記憶があります。

 しかし、桜の時期は、花粉症の時期にも重なります。日本人の4人に1人は、花粉症だと言われています。わたしも花粉症対策に、余念がありません。

 花粉症の人にとって、暖かい気候の中で、マスクを付けての外出は、わずらわしくて、どうしても外出がうっとうしくなってしまいます。

 しかし、怠ってはいけません。しっかりマスクを付けて鼻と口から花粉が入ってくるのを防ぎます。そして、眼鏡をかけて、目に花粉が付くのを避けます。さらに、耳からも花粉が入る可能性がありますから、ここも防御しなくてはなりません。イヤホンなどで、花粉が耳の穴からはいってくるのを防ぎます。

 例年よりも飛散量は少ないと言われていますが、それでも、外出時は花粉が付きにくい上着を選んだり、洗濯物を家の中で干したりと、細かい注意が必要になります。みなさんも、いろいろとご苦労されていることでしょう。

「先表後裏」の治療法とは

 よく、「花粉症に効く漢方薬は、ありませんか」と聞かれます。

 「西洋薬を飲むと眠くなってしまう」「胃に負担がかかる」など、漢方薬に救いを求める人がいます。中には、副腎皮質ホルモンを含んだ薬の副作用が怖いと話す方もいらっしゃいます。

 そこで、漢方薬の出番です。花粉症治療の手順は、昔から「先表後裏(せんぴょうこうり)」にのっとって行われます。「先表後裏」とは、まず表面に表れている症状を治療していきます。その後から体の中にある問題を解決する、というものです。花粉症でみられる鼻水、目のかゆみなどは、「表」の症状ですので、こちらをまず先に治療していきます。その後、花粉症体質と言われる「裏」の問題を解決していくのです。

 「表」の症状に合わせて、よく使われる漢方薬は、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)です。小青竜湯は、鼻水がよくでる人に使われます。鼻がつまる人には、葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)です。ただ、高血圧症、甲状腺機能亢進こうしん症、前立腺肥大症などをお持ちの方は、ちょっと、注意する必要があります。それは、葛根湯加川芎辛夷に使われる麻黄(まおう)という薬草に、エフェドリンが含まれているからです。エフェドリンは、交感神経を刺激しますので、血圧が高くなったり、心拍数が増えたり、尿の出が悪くなる場合がありますので、主治医に相談してください。そんなときには、苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)、五苓散(ごれいさん)が使われることがあります。

 「裏」の花粉症の体質を改善したい場合は、胃腸の状態を中心に治していきます。ストレスがかかると胃が痛くなる人もいれば、下痢になる人もいます。体質は、一人一人異なりますから、時間をかけてコツコツと立て直す必要があります。春夏秋冬を通して、体の調子をお聞きしながら、調整していきます。

期待高い「経口ワクチン」

 最近、スギ花粉症の治療法として、「経口ワクチン」が認可されました。花粉症の時期を除いた日は、毎日、ワクチンを口に含むだけの治療法です。減感作療法の一つとして行われますので、アナフィラキシーショックなどを注意する必要がありますが、体質改善が期待できる新しい治療法です。この「経口ワクチン」は、花粉症治療の新しい1ページを開いたと感じています。この新しい治療法が、花粉症に悩む多くの人たちの苦しみを取り除いてくれると期待しています。

漢方薬 甘いのもあります

みなさんは、ホワイトデーにどんな物をプレゼントされましたか。

 このホワイトデーは、日本で生まれた記念日です。バレンタインデーにチョコレートをもらった人が、お返しにアメやマシュマロなどのお菓子、アクセサリーを贈る日とされています。なかには、ホワイトデーをきっかけに、大きく人生が変わった人もいるでしょう。この日本から発信された習慣は、東アジアの各国へ広がっているそうです。こんな話を聞くと、なんだか少しうれしくなりますね。

 さて、甘~いアメが、漢方薬にも使われていることをご存じですか。

 「良薬は口に苦し」といいますので、どうしても飲みにくい印象のある漢方薬ですが、アメが入っている漢方薬は、口に含むと甘さが広がり、大変飲みやすくなっています。子供たちにも喜ばれる漢方薬です。

 アメのことを膠飴(こうい)と呼びます。この膠飴が入っている漢方薬は、建中湯(けんちゅうとう)という名前がついています。「おなか(中)をなおす(建て直す)くすり(湯)」という意味で、消化器系の病気に使います。

 他にも甘みの強い「ナツメ」が含まれている漢方薬もたくさんあります。「ナツメ」は、大棗(たいそう)と呼ばれています。大棗もまた、胃腸の状態を良くして、体を丈夫にする漢方薬に使われています。

 さらに、梅干しやたくあんの甘みを付けるために使う甘草(かんぞう)も、漢方薬に使われています。甘草は、漢方薬の約70%に使われており、筋肉の緊張をほぐしたり、炎症を抑えたりする作用があります。甘草から抽出されたグリチルリチンは、アレルギーや慢性肝炎の治療にも使われています。

 膠飴、大棗、甘草といった漢方薬の材料は、単に漢方薬の味付けとして使われているのではなく、それぞれに役割を持っています。さまざまな薬草をうまく組み合わせることで、ひとつの漢方薬が出来上がっています。その組み合わせの妙こそが、漢方薬の秘密だと言えるでしょう。

 ホワイトデー、どうかすてきな出会いがありますように、心からお祈りしています。そして、みなさんが、甘い甘い漢方薬で、健康で元気な毎日を過ごされますように。

胃カメラ検査、漢方薬で「つらさ」軽減

みなさんは、胃カメラの検査を受けたことがありますか。

「胃カメラは、つらい検査だ」「あれは、苦しい検査の代表だ」との評判を耳にします。原因は、いろいろあります。胃カメラが、たいへんな検査だと聞いて身構えてしまうため、検査の前に行うのどの麻酔が不十分なため、のどの反射が人一倍強いため、といくつもの理由が考えられます。

しかし、胃カメラの負担は、検査する医師の技量と裁量によって、大きく変わるものです。

胃カメラは、いかに安全に行うか、ばかりでなく、病気を診断し、小さな病変も見落とさないようにすることが求められます。内視鏡医は、蛇のようにクネクネと曲がる胃カメラを巧みに操る技術と正確な診断能力が求められるわけです。

「苦しい検査」を上手に受けるには

こんな胃カメラを少しでも楽に、負担なく受けるためには、どんなことに注意をすれば良いのでしょうか。

ひとつは、検査前に胃の中に食べ物が残っていないように注意することです。検査の前日から、消化しやすいものを選んで食べる必要があります。夜遅くまで友人とお酒を飲んでいたり、おなかいっぱい食事をとったりすることは、避けるべきです。

もし、胃カメラの検査前日に、胃の負担を減らしたいのなら、茯苓飲(ぶくりょういん)という漢方薬を使うといいでしょう。茯苓飲は、胃の緊張を和らげ、胃に残っている食べ物を早く消化してくれます。

検査当日、緊張して心臓がドキドキして仕方がない場合は、早い時間に抑肝散(よくかんさん)をお湯に溶かして飲んでおくといいでしょう。抑肝散は、神経を和らげ、緊張を解きほぐしてくれます。

前立腺肥大症や緑内障を持っている方は、胃の反射を抑えるための薬が使えない場合があります。そのときは芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を使うと、胃の中をきれいに観察することができます。

芍薬甘草湯は、胃の筋肉を 弛緩 しかん させてくれます。

日本が誇る技術

わたしは、この20年間、毎年500例以上の患者さんの胃の中を拝見させていただいています。わたしが胃カメラの研修を受けた25年前と比べると、ブラウン管に映る景色は、ハイビジョン画像になり、性能は大きく改善しました。きれいな色をした胃、暴飲暴食のために荒れた胃、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染した胃、と様々な風景がカメラの前に広がります。

「評判の悪い胃カメラ」ですが、ほんの小さな病気も早期に発見することができます。日本が世界に誇る胃カメラを、ぜひ、みなさんに積極的に受けていただけるように、わたしたちも努力しています。世界の最先端技術を持つ日本の胃カメラと日本の伝統医学である漢方医学を合わることで、「安心して安全な胃カメラ」を提供することができると考えています。

魚の小骨をどうしていますか

 みなさんは魚の小骨を、どうしていますか。先日、いつもお世話になっているお寿司すし屋さんで、そんな話題になりました。

 隣で美味おいしそうに焼き魚を食べていた常連さんは、「昔は、頭からしっぽまで、すべて無駄にせず、食べたものだけれどねぇ」と言って、お皿を見せてくれました。骨一本のこっていませんでした。

 わたしも、小さな骨はよくんで食べるようにしていますが、キンキやたいの背骨は硬く、いつも残しています。しかし、常連さんは、そんな硬い背骨ばかりか、頭や顎の骨までも、噛み砕いて残さず召し上がっていらっしゃいました。

 「小さい頃、両親から硬い骨もよく噛んで食べるように、教育されました」と常連さん。わたしが特に感心したのは、その歯と顎です。

 硬いものも噛み砕くことができる丈夫な歯は、1日では出来上がりません。長年にわたり歯の手入れをしっかりとしていたのでしょう。顎の力も同じです。何度も噛むには、あごの筋肉がしっかりしている必要があります。毎日の積み重ねがあってこそ、できることだと心から感激しました。食事を大切にする家庭に育った常連さんは、若々しく元気にお見受けしました。

 最近の食材は、食べやすく栄養価に富んだものが多くあります。簡単に食材が手に入らない時代には、ひとつひとつの食材を大切にいただく工夫と心構えが違っていたのでしょう。食材を大切にする気持ちが、子供の教育にもしっかりと根付いていました。

 「8020(ハチマルニイマル)運動」は、1989年より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。健康維持のために、そして食事を楽しむためには、丈夫な歯と力のある顎が必要です。

歯痛や口内炎になったら

 しかし、もしも歯痛になったら、漢方には立効散(りっこうさん)があります。内服するばかりでなく、立効散をお湯に溶いて口の中をゆすぐと、痛みが消えていきます。同じように、口の中の痛みの原因となる口内炎の治療も、漢方薬が役立ちます。黄連(おうれん)が含まれた漢方薬には、口内炎の痛みを和らげてくれる作用があります。次の表をご覧ください。

歯痛

立効散(りっこうさん)

口内炎

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、
黄連湯(おうれんとう)など

 日本は四方を海に囲まれた国です。昔から海産物に恵まれ、皆さんの食卓も、魚介類を使った料理が、楽しい時間を演出してくれていると思います。何歳になっても食事を楽しむために、ぜひ、自分の体の手入れをする習慣を身につけてください。毎日の積み重ねによって、健康で元気な体を手に入れることができます。

雪質の違いで体調も変わる

今年の大雪で、関東地方などでは交通機関が麻痺まひしてしまい、日常生活が混乱しました。みなさんは、大丈夫でしたか。クリニックの近くにある芝公園でも、たくさんの枝が折れてしまいました。いまでも公園の中は落ちてきた枝で歩くことも難しい状態です。

 思いもよらない自然の力に、日頃、当たり前と思っていたことすらできなくなってしまいました。「朝、起きたら雪が積もり、扉が開かなかった」「雪の重さで建物が壊れてしまった」「雨用の靴ではすべってしまい、転んでしまった」――。これまでとは違うスケールの大雪を予想できなかったわたしたちは、自分たちの危機管理能力を試されているかのようでした。

 そんな中でも、子どもたちだけは、真っ白な雪を透き通ったまなざしで眺めていました。降り積もった雪の中にジャンプしてみたり、大きな雪だるまを作ったり。忘れられない楽しい思い出になったと思います。

関東の大雪、1回目と2回目の違い

 わたしは、今回の大雪でこんな発見をしました。それは、外来にいらっしゃった患者さんのお話の中に潜んでいました。

 「いつも、雨の前になると体調が悪くなります。今回、最初の雪の前は大丈夫だったけれど、2回目の雪の時は、体調が悪くなったんです」とのこと。

 最初の大雪は2月8日、2回目は14日。どちらも天気図では低気圧前線が太平洋側を通りました。

 2回とも同じように体調が悪くなるのでしたら、原因は低気圧と考えても良いでしょう。しかし、最初の時は大丈夫で、2回目は駄目だった、というのはなぜでしょうか。

 わたしは、以前から、低気圧前線が通る時には、頭痛やめまいがする方がよくお見えになることから、頭痛やめまいと気圧の変化には、関係があると考えています。しかし、気圧の変化だけではなかったようです。

 今回の大雪を振り返ってみましょう。最初は、サラサラの雪が東京を覆いました。湿気が少なく、風で飛んでしまうような軽い雪でした。しかし、2回目は水分を多く含んだ雪でした。木々の枝を折ってしまうような重たい雪でした。

 同じ雪でも性質が違いました。軽い雪には水分が少なく、重い雪には水分が多く含まれています。この水分の違いが、症状の違いになったのだと考えます。最初の雪は、気圧の変化だけでした。この患者さんは、気圧の変化だけでは、体調に影響がなかったのでしょう。しかし、2回目の雪では、気圧の変化と水分の変化があったために、体調が崩れてしまったのです。

 気圧の変化による頭痛やめまいに使われる漢方薬は、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)です。片頭痛や冷えからくる頭痛に用いられます。気圧の変化ばかりでなく、湿気など水分の異常による頭痛やめまいには、五苓散(ごれいさん)です。からだのむくみにも用いられます。
気候の変化が、みなさんの体の調子にも影響することがあります。日々の生活を健康に過ごすためには、気圧の変化ばかりでなく、気温や湿気など、自然といかにうまく付き合っていくかが大切になります。難しい自然の変化への対応を漢方医学で理解し、毎日をより良いものにするばかりでなく、急な異常気象にも、落ち着いて対応ができるようになりたいものです。

チョコレート、漢方薬との相性抜群

 きょうはバレンタインデーです。

 あなたがいただいたチョコレートには、愛が詰まっていますか。義理チョコや友チョコにも、ほんの少しでも気持ちが込められていればチョコの味もひと味違ってきます。

 昔、チョコレートは貴重品でした。栄養価にすぐれ、多くのミネラルを含んでいるカカオ豆は、薬として使われていた時代もあります。ポリフェノールも豊富に含んでいるカカオ豆が、チョコレートの原料です。このチョコレートの作用として、よく知られている成分が、カフェインです。カフェインは、コーヒー、緑茶、ウーロン茶にも含まれます。カフェインの効果は、利尿作用や交感神経興奮作用など、眠気を覚ます作用もあります。

 おいしいチョコレートも、食べ過ぎると体に負担がかかります。というのも、チョコレートには30~40%の脂質が含まれていますから、食べ過ぎるとカロリー過剰になります。バレンタインデーにたくさん、チョコレートをもらった方は、食べ過ぎに注意してくださいね。

 健康のために、チョコレートを生活にうまく取り入れると良いと思います。最近では、カロリーを減らすために、砂糖の量が減らしてあるチョコレートも売られています。「ブラックチョコレート99」は、1%の砂糖しか入っていませんので、低カロリーです。

 昔から「良薬は口に苦し」といいます。私のクリニックに来られる方の中にも、漢方薬の味が駄目で内服することができないとおっしゃる方が少なからずいらっしゃいます。そんな時わたしは、漢方薬とチョコレートを一緒に内服することをすすめています。

 せっかく、漢方薬が治してくれるとわかっている病気も、しっかりと漢方薬を内服していただかなければ病気を治すことができません。いかに漢方薬を内服してもらうか、いろいろな工夫がされてきました。

 漢方薬の味の中で、一番、評判が悪いのが苦みです。わたしがすすめている内服方法は、本当に簡単なものです。それは、漢方薬と一緒にチョコレートを食べたり、漢方薬をコーヒーで飲んだりすることです。すると驚くほど漢方薬が飲みやすくなります。漢方薬にチョコレート、コーヒー、ココア、抹茶などの「苦みには苦味を組み合わせる」と、不思議なくらい、漢方薬の味が消えてくれます。病気で口の中があれてしまい、食欲もなくなっているときなど、美味おいしいチョコレートと一緒に漢方薬を内服することをおすすめします。

 「漢方薬が飲みにくい」とおっしゃる方や小さな子供たちの病気を治すために、チョコレートが大活躍します。

冬の寒さに唐辛子や生姜

冬季オリンピックが開催されます。開催地ソチには、世界中から感動と興奮を期待された各国の選手たちが集まっています。現地にいる日本人選手も大会に向けて体調管理に余念がないと思います。

 ソチの寒さは厳しいと思いますが、みなさんは冬の健康管理をしていますか。この時期、指先があかく腫れてしまい、ときにはかゆみも出るしもやけに悩まされている人も多いでしょう。手袋をはめても、厚手の靴下をはいても、手足の指先が冷えきってしまう、そんな悩みはありませんか。

 昔、祖母が冬になると靴の中に唐辛子とうがらしを入れて温めてくれました。この唐辛子の作用は、カプサイシンという物質が、温かく感じるように知覚神経を刺激してくれるためです。たとえば、冷たいスープに唐辛子を入れると、口の中はまるでお湯を飲んだように感じます。

 同じような作用は、ハッカにもあります。しかし、ハッカの作用は、冷たく感じるように知覚神経を刺激しますから、冬場には歓迎されません。どちらかというと夏場に重宝されます。

 医療でも、このような自然界の力を借りて、健康を管理します。運動の後の筋肉疲労に、熱を持った筋肉を冷やす目的でハッカの成分を使ったり、固まってしまった筋肉を温める目的で唐辛子の成分を使ったりします。

 よく唐辛子で味付けをした料理を食べた翌日、お尻が痛くなることがあります。これは、お尻に唐辛子が作用しているからです。しかし、唐辛子をたくさん食べてもおなか中が熱くなることはありません。これは唐辛子の作用が、口から胃までは温めてくれますが、小腸から大腸を温めることは難しいからです。

 寒い時期に体の中を温めるには、唐辛子よりも、生姜しょうがのほうが良いでしょう。以前、ブログでも紹介させていただいた生姜湯をうまく使うことが大切です。

 手足の冷えに使われる漢方薬は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅうゆしょうきょうとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん)、桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)などがあります。残念ながら、どの漢方薬にも唐辛子は使われていません。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、しもやけの方には第一選択薬となります。また、女性で冷房による体の冷えからくる腹痛などにも使われます。

 八味地黄丸は、加齢に伴う体の冷えに使われます。白内障や前立腺肥大症などの症状をやわらげるときなど、広く使われます。

 桂枝加朮附湯は、肩こりや神経痛に使われます。上半身の痛みに使うことがあります。

 これから始まるソチ・オリンピック、日本はいくつメダルを獲得するのか、楽しみです。そして、6年後には、東京でオリンピックが開催されます。東京オリンピックを健康で元気に楽しむためにも、いまから漢方医学の力を使って、体のメンテナンスをされてはいかがでしょうか。

漢方医が考えたノロウイルス対策

ノロウイルスが世界中で騒ぎになっています。以前、ブログでもとりあげた「牡蠣かき」も原因のひとつと言われています。集団感染するのは、感染した人から出た便や吐しゃ物に含まれるウイルスが、周囲の人の手から手に広がったり、汚染された場所を掃除したときに空気中に飛散したりすることが原因のようです。

 ノロウイルスに感染すると、下痢、はき気、嘔吐おうと、腹痛、発熱などの症状がおこります。ひどい場合には、脱水から、命に関わることもあるこわい病気です。

 もし、ノロウイルスに感染しても、だいたい3日で症状がおちつきます。しかし、便の中には1週間程度、ウイルスが排出されますので注意が必要です。感染した人の便や吐しゃ物を扱う場合は、マスクと手袋を忘れずにするようにしてください。

 ノロウイルスから身を守るために最も大切なのは、うがいと手洗いです。日々の生活の中で、マスクをして自己防衛することや、常に手洗いを心がけるなど、家族全員で取り組む必要があります。

おなかから予防しましょう

 漢方医学でノロウイルス対策を考えてみましょう。

 漢方医学では、「未病みびょう」という考え方があります。これは、現代風に言うと予防医学のことです。

 漢方医学による対策としては、胃腸の状態を整えることになります。口から感染するノロウイルスを胃腸から体内へ簡単に侵入させないように、胃腸の状態を、漢方薬を使って調整しておくことです。

 このとき使う漢方薬は、人参湯(にんじんとう)類です。人参湯は、日頃から体力がなく、風邪を引きやすい人で、胃腸の状態が悪くなったときや体調管理のために使います。

 六君子湯(りっくんしとう)は、食欲に関係したグレリンという消化管ホルモンを増やす作用があり、がん患者さんの治療中にも使われています。

 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、免疫を高める作用があるという報告が数多くされている漢方薬のひとつです。

 まだまだ、寒い日が続きます。みなさん、風邪やノロウイルスに備えるには、うがいや手洗いばかりでなく、漢方医学で体の中から予防することも考えてみてはいかがでしょうか。

寒さでおなかにトラブル? 冬野菜が一番

 冬の野菜といえば、根菜類が中心になります。レンコン、大根、白菜、ネギなどが代表です。冬は、おなかが冷えて腸の動きが悪くなるため、便秘気味になる季節でもあります。そんなときに、食物繊維が豊富な冬野菜は、おなかの調節には最適です。また、ネギは、体を温める作用がありますので、寒い時期には大切な野菜です。

 そしてこの時期、下半身が冷えて、トイレが近くなる人も多いと思います。厚着をしているので、トイレに行くのも一苦労です。尿の回数が増えるのに、中には、尿が出きらないような残尿感があったり、尿道痛が出たりする人もいます。

 このような症状が続くときに、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)を使います。

 清心蓮子飲に含まれるレンコンの種を蓮肉れんにくとよびます。正月のおせち料理には、「先のことが見通せるようになりますように」との願いが込められた一品として、レンコンが必ず入れられていますが、レンコンの葉、茎、種なども漢方薬の材料に使われています。

 一方、体が冷えて尿の出が悪くなるときに使う漢方薬に、八味地黄丸(はちみじおうがん)があります。人は皆、年を重ねると寒さが体にこたえるようになってきます。夜の尿の回数が増える夜間頻尿、いきんでもなかなか尿がでない遷延性排尿やポトポトとしか尿が出ず勢いがなくなるなどの症状があるときにこの八味地黄丸を使います。

 女性で下半身が冷えて、ぼうこう炎を繰り返す場合には、猪苓湯(ちょれいとう)を使います。この猪苓湯は、残尿感や排尿痛など、急な症状にもよく効きます。
大寒、1年で一番寒い季節には、服を何枚も重ね着してもうまく温度調節ができません。やはり、体の中から温める必要があります。そのためには、口から入れる食べ物や飲み物に注意して、温かいものから体に入れるように心がけることが大切です。家族で冬野菜をたくさん使った鍋料理を楽しく食べて、健康管理をしていきましょう。

冬の牡蠣、ファストフード多い方に

ソースかしょうゆか

 冬の寒い時期、牡蠣かきが食べ頃になります。三陸や広島など、日本は海に囲まれていますので、全国に特産地があります。冬ばかりでなく、夏には能登の岩牡蠣もありますね。

 先日、牡蠣フライが大好物の友人から、質問を受けました。彼が行くレストランでは、牡蠣フライには、ソースが添えられるのだそうです。しかし、その友人は、しょうゆをかけてたべるのが当たり前だったとのこと。そこで私への質問は、牡蠣フライにソースをかけた方がいいのか、しょうゆの方がいいのか、医学的にどう考えるのか、というのです。

 わたしは大変困ってしまいました。

 お皿の脇に添えてあるレモンは、レモンに含まれるクエン酸に殺菌作用があるため、食中毒を予防すると説明はできるのですが、牡蠣フライにしょうゆとソースの組み合わせの効能までは、残念ながら医学的に説明できませんでした。

不足しがちな亜鉛たっぷり

 牡蠣には、亜鉛が豊富に含まれています。この亜鉛不足が、味覚障害の原因になることはみなさんもよくご存じだと思います。ファストフードが多い方は、栄養バランスがかたよってしまい、亜鉛不足になりがちです。和食の食材では、煮干しやごまなどに亜鉛は含まれています。毎日、少しずつ亜鉛をとるように心がける必要があります。

 がん化学療法を受けている方が、味覚障害を訴えることはよくあります。この場合は、治療として亜鉛を補充します。ただ、亜鉛不足以外にも治療による神経障害や口腔こうくう粘膜障害による味覚障害もありますので、注意が必要です。

 牡蠣の恩恵は、亜鉛だけではありません。牡蠣の殻は「ぼれい」と呼ばれ、こまかく砕いて漢方薬の原料にも使われています。使われている主な漢方薬は次の通りです。

安中散(あんちゅうさん)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

 日本は四季折々、様々な食材を楽しむことができる国です。その時々の旬を楽しむには、八百屋さんやお魚屋さんの知恵を借りるといいでしょう。安くて美味おいしい食材で楽しい食卓を家族と一緒に過ごすことが健康にとって、一番の栄養となります。その時期にしか食べられないものを季節の恵みと感謝して、毎日を過ごしましょう。