過去のコラム【2015年アーカイブ】
« コラム 一覧へ戻る4月は、新入学、入社式など、新しい出会いがたくさんある時期です。この春、医学部を卒業して、夢と希望を抱え、研修を始める新人の医師にとっても、4月は新しい環境での厳しい毎日の始まりです。
今から27年前、私も新人の医師として、慶應義塾大学病院で研修を受けました。新人の医師の朝は、入院している患者さんの血液検査を行うことから始まりました。朝早くから注射器を持って病棟を歩いている新人の医師は、患者さんから「吸血鬼」と呼ばれていました。
そんな毎日の研修では、机の上で学んだことを自分の頭で考えて、判断することの難しさを学びました。当時はまだ携帯電話やインターネットがありませんでした。わからないことがあると、仕事の合間に図書館で文献を調べる必要がありました。そんな時、先輩の医師や看護師さんから教えてもらう知識と経験は、文献にも載っていない貴重なものでした。
実際に、先輩の医師が患者さんへ説明している話を聞いたり、看護師さんが患者さんにやっている処置の方法を見たりすることで、多くのことを学びました。まさに、目と耳で学問を吸収していったのです。
そして、医師になった今、私は、患者さんから多くのことを教えてもらっています。毎日の診療で、おじいさんやおばあさんが口にする言葉から、少しでも長く体を使い続けられる工夫を学びます。小さな子どもからは、素直に感情を表現する大切さを知ります。私にとって、患者さんと話をすることは、本当に、勉強になる時間なのです。
医学は日進月歩です。常に新しい情報が発信されています。私は、1年を通して、さまざまな学会へ参加して、多くのことを吸収しています。
特に今年は、4年ごとに開催される日本医学会総会の学術講演が、2015(平成27)年4月11日(土)から、京都で開催されます。同じ日、東京の日本教育会館では、第18回 オンコロジーセミナー「高齢者がん治療とチーム医療―高齢者がん治療の問題をどのようにとらえ実臨床でどう生かすのか―」が、開催されます。私は、お昼の時間にお弁当を食べながら勉強するランチョンの講師を担当させていただき「高齢者がん患者への漢方医学」について、お話しさせていただきます。
そして、同日、熊本では「フォーラム がんと生きる ~こころとからだ 私らしく~」が開催されます。基調講演は、わたしの恩師である国際医療福祉大学学長の北島政樹先生です。私は、会場に設置される展示パネルの監修を担当させていただきました。もし、会場へお見えの方がいましたら、ご覧になってくださいね。
4月、どうか、みなさんにとって、すばらしい出会いと感動の毎日になりますように、心からお祈りしています。
秋田から、久しぶりに知人のHさんが訪ねてきてくれました。Hさんは、以前、同じ病院で仕事をし、いろいろと教えていただいた医療界の先輩です。東京生まれのHさんは、今、秋田で地域医療の仕事をされていて、「秋田の澄み切った青い空を見たら、一度で大好きになってしまった」そうです。
秋田には、2001(平成13)年、秋田で開催された日本消化器外科学会総会に、「上部胃
みなさんは、検診を毎年受けていますか。ぜひ、定期的に体のチェックをするために、検診を受けましょう。「健康が、自慢だ」と言う人でも、検診を受けることで、さらに自信を持てると思います。
みなさんもご存じのように、日本人の2人に1人が、がんにかかる時代です。わたしたちは、がんを避けることはできません。2013年の都道府県別年齢調整死亡率で、秋田県は男性の胃がん死亡率が日本一でした。原因はいろいろと考えられます。一番大きな問題は、がん検診を受ける方が少ないことだ、と言われています。がんは、予防することで治すことができる病気です。がん検診を受けることで、早期発見、早期治療ができるようになります。
しかし、検診を受けておけば良い、ということではありません。小学生の時に受けたテストを思い出してください。受けたテストの結果を受け取る前は、どんな点数か、ドキドキして不安だったと思います。100点満点が取れたときは、走って家に帰って、両親に早く報告した経験があると思います。しかし、残念ながら、何問か間違ってしまい、自分の不勉強さに悔しい思いをしたこともあるでしょう。そして、次のテストは、なんとか良い点数がとれるように気を引き締めたと思います。
検診も、小学校のテストと同じです。検査結果をみて、自分の欠点を見つけ、1年をかけて体調管理することが、一番大切です。
春がやってきました。気分も新たに、日々の生活を楽しんでください。上を向いて、きれいに咲いた花を楽しみながら、みなさんが、元気で健康な毎日を過ごされることを心からお祈り申し上げます。
今から25年前、わたしは、茨城県霞ヶ浦の近くにある国立病院で1年間、研修させていただきました。当時、私は、まだ医師になって3年目でしたので、毎日が緊張の連続でした。そんな縁もあってか、先日、第7回茨城県消化器外科漢方研究会へ呼んでいただき、「がんと漢方」と題して、お話をさせていただく機会を頂戴しました。
どうして、外科医が漢方を研究しているのか、不思議に思われている方も多いと思います。実は、外科学と漢方医学は大変に相性のよい学問なのです。外科学と漢方医学を実際の医療に活用した医師として有名なのは、皆さんもご存じの江戸末期に活躍した
では、どうして外科学と漢方医学は結びつきが強いのでしょうか。それは、どれだけ医学が進歩しても、外科医は機械に頼ることなく、実際に自分の手で病気に触れ、自分の手で病気を治すことを
簡単な例を挙げてみましょう。急性虫垂炎という病気があります。一般には、盲腸と呼ばれている病気で、緊急手術になる
この病気の診断は、血液検査、レントゲン、超音波検査などを組み合わせて行います。最近では、造影剤を使ったCT検査で診断するようになりました。しかし、手術をするかどうか、最後に決定するのは外科医の判断です。
外科医は、いろいろな検査結果を参考にしながら、患者さんのお
漢方医学は、血液検査もレントゲンもない時代に発展した学問です。五感を最大限に活用して診断を行います。治療方針を人の手によって決める急性虫垂炎の治療法は、漢方医学の治療法そのものです。どんなに科学が進歩しても、人の感覚を大切にする外科医が漢方医学をうまく取り入れる理由がここにあります。
手術という治療法がなかった江戸時代では、急性虫垂炎を漢方薬で治療していました。これを実践した昭和時代の医師が、龍野一雄先生です。1940年にペニシリンの精製方法が開発される前の時代に活躍した龍野一雄先生は、急性虫垂炎を手術することなく漢方薬で治療していました。
どんなに医学が進歩しても、外科学と漢方医学を学んだ多くの医師が、それぞれの学問の長所をうまく組み合わせて、病気を治していくことを、私は心から願っています。
東京電力福島第一原発事故で建設工事が中断していた福島県内の常磐自動車道のうち、常磐富岡―浪江インターチェンジ間が3月1日、開通しました。これで常磐自動車道は、埼玉県三郷市から宮城県
そして、3月11日を迎えました。東日本大震災から4年が過ぎました。震災の影響はまだまだ大きく、いろいろな問題を残しています。これまでも、これからも、多くの支援が求められています。
そんな中、2016年春の北海道新幹線開業の準備のために、寝台特急「北斗星」(札幌―上野)は3月13日に、定期運行を終えます。1988年の青函トンネルの開業に合わせてデビューした「北斗星」の廃止によって、鉄道旅行の象徴的な存在だった青い客車の特急「ブルートレイン」の姿が消え、一つの時代が幕を下ろします。
さらに、3月14日、北陸新幹線が開業します。東京―金沢間が、最速2時間28分で結ばれるようになります。日本海が身近になります。昨年の夏に金沢を訪れたときは飛行機でしたが、今度、北陸新幹線で行きたいと思っています。
関東から北海道、東北、北陸への陸路が整備されて、どんどん高速化していきます。高速道路と鉄道の発展とともに人の流れも変わっていきます。違った土地での新しい人との出会いが、新しい考え方を生んでいきます。これは、漢方医学と栄養学との出会いや、漢方医学と緩和ケアとの出会いに似ています。
異なった考え方がうまく混ざり合うことで、新しい医学が生まれていきます。わたしは、五感を大切にする漢方医学と、検査データを重視する西洋医学を融合することが、現代医学だと考えています。
たとえば、100人の患者さんを診察したとします。全員、血液検査を受けていただき、健康状態を評価します。結果を聞きに行った皆さんは、「検査結果は、正常だから問題ありません」と医師に告げられます。そんなとき、みなさんはどう考えますか?
検査結果が正常だったとしても、実際には、体調が優れない方や気分が悪い方がお見えになります。わたしは、検査では見つけることができない不調を拾い上げていくことが、大切だと考えます。そのためには、時間はかかっても、一人一人の話を正面から聞くことが求められます。検査結果だけに左右されない姿勢を学ぶために漢方医学があります。漢方医学は、決して、難解な学問でもなく、難しい薬理学でもありません。漢方医学は、医師が一人の人間として、患者さんと向き合う大切さを教えてくれます。
あなたの体調管理をまかせている医師は、ちゃんとあなたの話を聞いてくれているでしょうか。検査データだけを見て、顔を見ない医師にかかってはいませんか。病気になったとき、真剣にあなたの立場になって考えてくれるでしょうか。
つらい震災を経験し、わたしたちはまた、一つ学びました。日本がいかに発展しようとも、原点は人と人のつながりであり、それを積み上げてきた歴史だということを。この震災を自分たちの文化や伝統の中に受け入れ、後世に残すことが大切だと思います。わたしも、大学で学んだ西洋医学に漢方医学を受け入れ、これからの医療に受け継がれていくものを残すことが大切だと考えています。
わたしは、これまでに200回以上、大学や病院など、医師、薬剤師、看護師の皆様に、漢方医学のお話をしました。今回は、東京都三鷹市にある杏林大学医学部付属病院で、栄養学と漢方医学についてお話をする機会をいただきました。
実は、私は栄養学を学生時代に学ぶ機会がなかったため、医師として働きながら、勉強しました。患者さんの体調を考えると、食事の管理は重要だからです。特に、手術を受けた後の栄養管理は、術後の経過を左右します。がん化学療法を受けている患者さんの栄養管理も、副作用を軽減するために大切なポイントになります。
私は、日本静脈経腸栄養学会が行っている医師対象の研修会の講師をさせていただく際、実際の医療現場で栄養学が活用されるように、少しでもわかりやすく教えてきました。そこで今回は、杏林大学医学部付属病院のNST(栄養サポートチーム、Nutrition Support Teamの略)のみなさんに、私が学んできた栄養学と漢方医学の関わりについて、お話しさせていただきました。
栄養状態を見るためには、二つの方法があります。ひとつは、SGA(Subjective Global Assessmentの略)、主観的包括的評価です。もうひとつは、ODA(Objective Data Assessmentの略)、客観的栄養評価です。
SGAは、患者さんを実際に見て、触れて、感じて、栄養の状態を把握する方法です。「なんだか、顔色が悪い」「声に張りがない」などといった情報から、患者さんの全身状態を把握します。
ODAは、患者さんの検査結果をもとに、数値を比較して栄養の状態を把握する方法です。入院患者1000人の評価を行う場合など、患者数が多くなったときに役立ちます。
SGAとODAと、漢方医学がどう関わるか、疑問を持たれる方も多いと思いますが、「SGA=漢方医学の診断学」なのです。
聴診器もなく、血液検査やレントゲンがない時代の医学である漢方医学の診断学は、まさに、患者さんを実際に見て、触れて、感じることで診断します。
以前にも、このブログ(「自分の健康を知る方法(1)朝、舌を見る」)で書かせていただきましたが、舌の状態から、胃の状態を知る診察方法は、NSTに活用することが簡単にできます。また、検査データには表れない体調の変化を漢方医学では「
「何となく、元気がない」というのは、「気」が不足しているためです。元気がなく、気力がない患者さんには、体力も落ち、食欲もわかない(消化力が落ちている)状態と診断し、漢方医学では、「気」を増やす治療を行います。
日常生活にも、このNSTは応用することができます。仕事が忙しく体が疲れているときは、いつもと同じ定食を選ぶのではなく、栄養価の高い食事にします。精神的にめいっているときは、胃腸に優しい消化のよい食事を選ぶといいでしょう。肉体も精神も、回復させるためには、栄養が必要なわけです。
まだ栄養剤も点滴もなかった時代の漢方医学を現代の栄養学に活用することで、よりよい栄養管理をすることができるようになるわけです。
栃木県足利市へ、行ってきました。今回は、「がん治療や病棟での漢方治療について」のお話をさせていただきました。講演会場近くの足利駅から、徒歩ですぐの場所に、名跡、足利学校があります。その昔、足利学校では、儒教を教えていたそうです。足利学校で学んだ人の知識と経験が、日本中に広がりました。いまでも、儒教の考え方が、日本人の生活に溶け込んでいるのも、そのためでしょう。
儒教といえば、江戸時代の儒学者、貝原益軒が、80歳を超えて著した「養生訓」の中で、実体験に基づいた健康法を説いています。
わたしも、「養生訓」から多くのことを学びました。血液検査もレントゲンもなかった時代に、病気と診断すること自体が難しかったと思います。病気になったとしても、抗生物質も、点滴もなく、治療の選択肢は限られていました。「養生訓」では、どのように自己管理したのか、元気で健康的な毎日を過ごすにはどうすればよいのか、が記されています。
「養生訓」のはじめには、親からいただいたからだを道理(理論)に沿って、健康を保ち長生きすることが幸せである、と書かれています。人は、一人一人、体格も性格も違います。生まれた土地も育った場所も、違います。それぞれの人に合った方法で、体を維持して、病気やけがをしないように、生活するすべが大切になります。
みなさんも、毎日の生活で、ご自身の体をいろいろな道理(理論)でメンテナンスされていることと思います。最近はテレビや雑誌に、様々な健康情報があふれています。一つ一つは、理論的に正しいものです。しかし、それを組み合わせてみると、道理(理論)に合わず、理論的に説明がつかないことがあります。
例えば、「健康のために、
これとは真逆に、「肉は健康のためにはよくない」という意見があります。昔に比べて日本人の食生活が肉中心になったことが、いろいろな病気の原因であると考えられた道理(理論)です。ハンバーガーや牛丼などのファストフード中心の生活は、健康的な食事とは呼べません。若い時から、バランスのよい食生活を身につけ、肉ばかり取る食事をいさめるために考えられたものだと思います。
つまり、体を作る時期に、肉ばかり取っていると「肉は健康のためによくない」ので、バランスのよい食事を心がけ、だんだんと歳をとれば「健康のために、歳をとっても肉を食べましょう」ということになります。
このように、いつまでも健康で長生きするためには、自分の生活に合った道理(理論)を早く見つけることが重要になります。わたしの著書「上体温のすすめ」で、この道理(理論)を詳しく説明させていただきましたので、お時間があるときに、どうぞ、ご活用ください。
みなさんが、いつまでも元気で健康な毎日を過ごされることを心からお祈りしております。
みなさんは、ラクダが砂丘を歩いている写真を見たことがありますか。
わたしは、どこか異国情緒漂うその写真に、心が躍った記憶があります。先週末、鳥取県へ行ってきました。飛行機が、鳥取空港に降り立つとき、窓の下に広がる砂丘を見ることが出来ました。日本海沿岸に続く鳥取砂丘は、わたしの記憶とオーバーラップして、心豊かにさせてくれました。鳥取砂丘は、空の上から見ると、起伏に富み、すばらしい形をしていました。わたしは、昔
わたしは、毎年のように、山陰地方へ足を運んでいます。目的は、漢方医学教育です。鳥取県、島根県と続く山陰地方で、漢方医学を広めるために、何度となく出かけています。今回は、病院に勤める医師、薬剤師を中心に、鳥取市でお話をさせていただきました。
以前にも、このブログで書かせていただきましたが、漢方薬の使い方は、北国と南国で、異なっています。太平洋側と日本海側でも、漢方薬の使い方は、変わってきます。というのも、風土の違いによって、病気の症状が違うからです。例えば、太平洋側に比べて湿気と冷えのある日本海側では、膝の痛みなどの症状が強く出てきます。
同じように、暖かい地方と寒い地方では、がん化学療法の副作用の出方も変わります。例えば、胃がんや大腸がんの治療に使われる抗がん剤に、オキサリプラチンがあります。この薬の副作用は、手足のしびれ(
こんなときは、ブシ末の量を調節するとよいでしょう。ブシ末は、トリカブトから作られた漢方薬です。トリカブトは、神経毒を含んでいるので、危険なイメージがあります。しかし、医薬品として使われるブシ末は、加熱してありますから、毒性がほとんどありません。ブシ末は、一般的に肩こりや手足のしびれなどに処方されます。このブシ末の作用を応用して、オキサリプラチンのしびれを軽減するために使います。
もし、がん化学療法の副作用で苦しんでいる方がいらっしゃったら、ぜひ、
わたしが漢方医学を学んでいると、いつも人の知恵のすばらしさに感動します。昔、アイヌの人たちが、ヒグマを倒すために使っていたトリカブトが、現代医学で治すことができないオキサリプラチンのしびれを軽減するために活用されます。わたしは、ブシ末のすばらしい効果をアイヌの人たちに感謝しながら、がん化学療法で苦しんでいる多くの方へ、処方させていただいています。
まだまだ、寒い日が続きます。どうか、みなさまも、元気で健康な毎日を過ごすために、漢方医学を活用してください。
わたしは、先日の日曜日に、日本消化器内視鏡学会が主催している卒後教育セミナーへ参加してきました。東京ビッグサイトのレセプションホールには、休日にもかかわらず、多くの医師が、日頃の疑問を解決するため、新しい知見を得るため、さらなる向上を図るために、参加していました。わたしも、朝10時から夕方4時までの6時間、胃カメラを使った診断と治療について、勉強してきました。医師たちは、お昼ご飯の時間も、講義を聴きながら勉強するランチョンセミナーへ参加して、充実した時間を過ごしていました。
わたしは、医学部を卒業してから約25年の間、学会へ参加して講義を受けるだけでなく、壇上に立って、講演することを続けてきました。しかし、開業してからは、その機会も減ってしまい、日進月歩の医学の分野で進歩から置いて行かれるのではないか、と心配していました。しかし、ありがたいことに、開業後も、相変わらず、いろいろな学会からお誘いをいただき、参加させていただく機会を
今回のセミナーは、日本消化器内視鏡学会の専門医を継続するために、必要な講習会でもありました。ですから、食道がんの見つけ方や胃がんの治療法などといった内容で、専門家が専門家へ説明することが前提になっていました。もし、一般の方が参加されたとしても、講義の内容は、チンプンカンプンだと思います。場合によっては、医師でも専門外であれば、チンプンカンプンでしょう。
わたしは、毎年、胃カメラを500例以上、やらせていただいていますので、何とか講義の内容に、ついていくことができました。
その中でも興味をひいたのは、腹腔鏡内視鏡合同手術(Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery:LECS)です。ご存じの方もお見えだと思いますが、胃カメラと手術に使う腹腔鏡を同時に使って行う手術のことです。これまで、お
ただ、このLECSを行うには、胃カメラを使った治療(内視鏡的粘膜下層剥離術 Endoscopic Submucosal Dissection:ESD)ができる内視鏡医と、腹腔鏡を使った手術(腹腔鏡手術 Laparoscopic surgery)ができる外科医と、それを支える医療スタッフが必要です。
二十数年前に、わたしは、慶應義塾大学病院で初めて行われた腹腔鏡手術の助手をさせてもらいました。そのときの術者だった故大上正裕先生からは、その後、いろいろとご教授いただきました。ときには、夜遅くまで手術の実験に同行させていただきました。その当時の経験がありますので、いまでも、お腹の外から触れるだけで、お腹の中がどんな状態になっているのか、想像することができます。この技術と経験は、現在の漢方治療にも存分に
例えば、漢方医学では、お腹を触れて、いろいろな情報を集めます。この診察方法は、
わたしは、外科の知識と経験があったおかげで、他の診療科の医師よりも、漢方医学を楽に学ぶことができたと、思っています。先進医療には、高度な技術と卓越した経験が必要です。同じように、漢方医学にも、ちゃんとした医学的経験と知識が必要となります。
もし、みなさんが、専門的な治療を受けられるときは、学会の専門医資格を持っている医師に、検査と治療の相談をされるとよいでしょう。また、胃カメラの検査を受けるときでも、胃カメラの専門医(日本消化器内視鏡学会専門医)に検査をしてもらうようにしましょう。どうか、みなさんが、元気で健康な毎日を送られますように、心からお祈りしています。
初午には春団子を作る習慣があったことが、1939年(昭和14年)に、柳田国男がまとめた「歳時習俗
では、稲荷神社と
農耕や食物を
倉稲魂命は、
各家庭で、いなり寿司の作り方はいろいろあると思いますが、東日本と西日本では、いなり寿司の形が違うそうです。東日本では米俵の形、西日本では狐の耳に似せた三角だそうです。そんな中で、わたしがいつも
わたしは、初午のような昔からの習わしを大切にして、日々を過ごしていきたいと思います。忙しい毎日の中では、どうしても忘れがちになっている習慣や言い伝えなど、ひとつひとつ、立ち止まって考えてみるのもいいかもしれません。みなさんはいかがでしょうか。
わたしが学んだ外科学は、近代科学の集まりでした。しかし、手術の時は、先輩から教えていただいた心構えを大切にし、手ほどきを受けた手順をひとつひとつ守っていました。先輩たちの経験と知恵には、科学的理論ではなく、習慣や言い伝えに近いものもありました。しかし、その経験と知恵に助けられたことは一度ではなく、わたしにとっての財産になっています。
同じように、漢方医学にも、現代科学では解読できないことがあります。しかし、それはこれからの科学が証明してくれると信じています。その日が来るまで、わたしは、漢方医学も大切に守っていく必要があると思っています。
立春がすぎ、もうそこまで春がやってきています。どうか、みなさんも寒さに負けないように、いなり寿司を食べてからだを大切に過ごしましょう。みなさんが元気で健康な毎日をお過ごしになりますように、心からお祈りしています。
冬の寒さもいよいよ本番。冷え対策は万全でしょうか。冷えは“ちょっとした不調”と思われがちですが、実は万病のもと。がん、脳血管障害、心疾患など多くの病気の根源に冷えがあるのではないかと注目されています。
2014年10月に『上体温のすすめ』を出版し、この冷えに警鐘を鳴らしているのが芝大門いまづクリニックの今津嘉宏院長です。外科医としてがんの治療に携わり、数多くの入院患者を回診するなかで気づいたことが「冷え」だったと言います。「朝、病室を回診していると布団がはだけていたり、落ちていたり。体を冷やしている患者さんは体調が悪く、冷えにはなにかあると感じていました。いまは2人に1人ががんになる時代。最近ではメタボリック・ドミノという言葉も注目されています。これは1個の原因からドミノ倒しのように倒れて、最終的に死因につながる病気になるというものです。病気が始まる上流では、なにか単純なことが起きているのではないか。そして、体温を調節すれば、ドミノが倒れることはないのではないかと考えています」。
「手足が冷たい」、「肩がこる」、「しもやけができやすい」、「おなかが冷えると下痢をしやすい」、「腰が冷えると腰痛や足にしびれを感じる」など、冷えの感じ方は人によってさまざまです。気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の人では肺に冷えを感じ、捻挫や骨折をすると患部に冷えの自覚症状が現れるといわれています。冷えを感じたら、体のどこかに問題があると考えた方がよいでしょう。
しかし、冷えの治療は非常に難しいとされています。西洋医学では冷えに該当する病名がなく、診断や検査法、治療法がないからです。今津院長は、「東洋医学には、冷えは病気の原因であるという考え方があります。ですから、東洋医学の考え方も取り入れながら、病気にならないように自分で体温の管理ができるようになってほしい」とセルフケアの重要性をアドバイスします。
冷えには、いろいろな原因があります。冬の冷えというと、気温の低下や寒冷が影響して手足が冷たくなったり、体調を崩したりする人が多くいますが、意外な原因もあります。それは、精神的なストレスです。
近年、精神的なストレスと体温には、関係があると知られるようになってきました。たとえば、会社勤めをしている人の場合、異動や転職などで慣れない仕事を始めると、精神的なストレスがかかり交感神経が優位になり、体が戦闘モードになって心臓の鼓動が速く、そして体温が上がってきます。「しかし、1か月、半年とこのような状態が続くとエネルギーがなくなって体温は下がってきます。精神的なストレスによって冷えが起きているときは、自律神経を乱しているストレスを解消することが大切です」(今津院長)。健康に気をつけていても、ストレスの多い生活をしていると体は温かくなりません。スポーツや趣味など、楽しくて夢中になれる活動を自分の生活の中に取り入れましょう。
また、冷えは大人だけでなく、子どもにも見られます。「冬になるとしもやけができやすい」、「風邪をひきやすい」といった不調は、冷えの兆候です。子どもの頃から体を温めることを大切にして、冷やさないように心がけましょう。「10代、20代は、男女ともにホルモンバランスが変わる時期。とくに10代の子どもをもつ親は、子どもの体温に気をつけて健康管理をしてあげてほしいと思います」(今津院長)。
では、冷えを感じたらどこを温めたら効果があるのでしょうか。今津院長によると病気のあるところは温度感覚が変わるため、温める部位は自分でわかることが多いようです。膝が痛いなら膝を、手が冷えるなら手を温めるというように部分的に温めます。肩がこりやすい人や、首が冷えると風邪をひきやすい人は、首の後ろが大事な温めポイントとなります。
また、冷えると内臓の働きが低下して免疫力も下がり、全身の活動に影響します。冷えから体調を崩しやすい人や手足に冷えを感じやすい人は、全身を温めましょう。四肢末端まで、全身に温かい血液を巡らせるには、へその下あたりを温めるのが効果的。体全体を温めることができます。
冷えの自覚症状や生活環境は人によって違うので、自分の毎日の生活(衣食住)のなかから自分に合った対処法を見つけることが大事です。
簡単で長く続けやすいおすすめの方法は、起床後に1杯の白湯を飲むこと。体の芯から温まります。冷たい飲み物は一気に体を冷やして、なかなか体が温まりません。腸が冷えると全身の活動が低下し、体調はマイナスに傾きます。こうならないように飲み物や食べ物は胃腸を冷やさないものを選び、温かくして過ごしましょう。
体温は、いまの体の状態をわかりやすく表してくれるバロメーターです。発熱時にしか体温計を使わないという方は多いと思いますが、日頃から体温計を身近に置いて活用すると自分の普段の体温(平熱)がわかり、体調管理に役立ちます。体の温度には、皮膚の温度と深部体温の2種類があります。皮膚の温度は寝ているときは上がり、朝になると下がってきます。一方、体の深部温度(体温)は寝ているときに下がり、朝になると上がってきます。体の温度はこのように違いがあるため、「体温は、この2つの温度がちょうど交差するときに測定するのがいいです。起床後は食べたり飲んだりする前に、夜は布団に入る直前がよいでしょう」(今津院長)。体温は測定時の条件をきちんと揃えることが体調管理の大事なポイントです。ぜひ、起床時や就寝前などの測定習慣をつけるようにしてみましょう。
監修 芝大門いまづクリニック 院長 今津 嘉宏先生