コラム

このブログは、東京都港区麻布十番にある麻布ミューズクリニックで働いていた時、始めさせていただきました。麻布ミューズクリニックは、女性のための美容と健康の漢方クリニックでした。それまで、慶応義塾大学や済生会中央病院で、外科医として医療に携わってきましたが、まったく方向性の違ったクリニックでの診療となりました。
私はこのクリニックで、約1万人の女性を診察させていただくという貴重な機会をいただき、多くのことを学ぶことができました。
教科書や学校では学べないことを、患者さんから学ばせていただきました。例えば、男性にとってはそれほど苦痛でもない会社のクーラーも、女性にとっては、体調不良の原因になることや、気圧の変化で頭痛やめまいが起こるという女性特有の訴えがあることなどです。
私は、麻布ミューズクリニックにいらっしゃった患者さん全員に、
外科医だった頃には気付かなかったお腹のサインがあります。おへその下の馬の
実は、お腹の診察は外科医としても大切な技術です。外科医だった私にとって、外科的なお腹の診察方法と漢方医学の腹診の両方の技術を身に付けたことで、さらに患者さんの役に立つ医療になる力になりました。
私が、漢方医学を学び始めた当初、頭の中で描いていたのは、西洋医学と漢方医学の融合でした。そして、麻布ミューズクリニックの患者さんから多くを学ぶことで、それを実践することができるようになりました。今、私自分のクリニック(http://imazu.org/)で西洋医学と漢方医学を融合した医療で、患者さんに恩返しさせていただいております。
東京都港区にある私のクリニックでは、患者さんから教えていただいたこと一つ一つを大切にしています。西洋医学では診断がつかないときや治療法が見つからないときは、漢方医学で診察します。漢方医学で足りないものは、栄養療法を活用し、さらに患者さんの教えを加えて、皆さんの健康のために診療を続けています。
西洋医学と漢方医学の融合によって、「体を温めること」「睡眠を大切にすること」に気付きました。今、この二つのことを中心に本を執筆中です。来月には、皆さんにお見せできると思います。楽しみにしていてくださいね。
患者さんから教えていただいたことを大切にして、皆さんが毎日を元気で健康に過ごせるように、少しでも役立つ話を書かせていただきました。どうか、楽しい毎日をお過ごしくださいますように、心からお祈りしています。
2012(平成24)年11月2日から、始めさせていただいたこのブログも、今月で卒業させていただくことになりました。これまで、応援していただきましたみなさん、有り難うございました。残り4回、どうか、最後までお付き合いくださいね。
今回の話は、「祖母からの教え」です。みなさんもそれぞれに、祖父母や両親から教えてもらった生活の知恵があると思います。そんな「祖母からの教え」を基に、昨年10月、「上体温のすすめ」という本を書かせていただきました。実は、この本に書かなかった「祖母からの教え」が先日、役に立ちました。
ある日、私は仕事から帰り、家の中を
子どもの頃、古い日本家屋だった縁側の廊下は、木の板でできていました。裸足で歩いていた私は、木のとげを足の裏に刺すことがよくありました。そんなとき、裁縫の針を使ってとげを抜く方法を祖母から教わりました。まず、とげの刺さった角度をよく確認します。どちらから、どの角度で刺さっているかを確認できたら、あとは同じ角度で針をゆっくりと入れます。このとき、とげの後ろ側へ針を入れるのがコツです。
この方法は、医師になってからも、大変役立っています。外科外来に受診された患者さんのとげを抜くとき、裁縫の針の代わりに、注射器の針を使っています。痛みもなく、簡単にとることが出来ます。
もうひとつ祖母から教わった切り傷や擦り傷の治療法があります。子どもの頃の私は、本当によく、転んで膝をすりむいていました。
この方法は、医学的に考えてみると、傷の管理方法の新しい考え方に、ピッタリと当てはまっています。3つのポイントで説明します。一つめのポイントは、怪我をしたとき、傷が後から化膿しないように、よく洗浄することが大切です。洗うときは、水道水が一番手軽で簡単にできます。たっぷりの水道水で、しっかりと傷を洗い流すことがポイントです。
二つめのポイントは、消毒は最低限にすることです。しっかり消毒をすると傷の治りが悪くなることがあります。そして、三つめのポイントは、傷を乾燥させることです。傷が化膿するのを防ぐためには、乾燥させることが大切です。
「上体温のすすめ」を読んでいただいた読者から、いろいろと教えていただくことがあります。世代や地域が異なっても、共通することがあることに驚きます。それは、身体を冷やすと風邪を引く、寝不足は禁物、といった当たり前のことなのです。しかし、この当たり前のことに、真実が隠されていることに改めて気付かされます。
ぜひ、みなさんも、祖父母や両親からの教えを大切にしてください。そして、自分の子ども、そして孫へ、その教えを伝えていってください。お願いします。どうか、みなさんが明るく笑顔で毎日を送ることが出来ることを心からお祈りしています。
夏も終わりに近づき、身体の疲れを感じている方もいらっしゃると思います。そんなときは、呼吸を整えるとよいでしょう。
人の命にとって、もっとも大切なものは、空気です。生まれてから息絶えるまで、人は、空気がなければ生きていられません。空気がなければ、数分以内に死んでしまいます。こんなに大切な空気の存在をおろそかにしてはいけませんね。サボることなく絶え間なく行われている空気を取り込む動作、それが呼吸です。
空気は、さまざまな成分でできています。窒素が約78%、酸素が約21%、二酸化炭素が0.04%です。微量成分としては、アルゴン、ネオン、一酸化炭素、ヘリウム、クリプトン、キセノン、メタンなどがあります。
空気の成分のうち、人の体に利用するものは、酸素と二酸化炭素です。血液の中にあるヘモグロビンは、空気中の酸素を効率的に体の中へ取り入れ、体の中の二酸化炭素を効率的に肺から体の外へはき出すようになっています。このため空気中の酸素濃度が低い場所でも、人は、酸素をうまく取り込むことができます。
ハムスターの呼吸回数は、1分間に約135回といわれています。犬や猫は約30回、人間は約20回、馬は約15回、象は約5回と、生き物の呼吸回数は、様々です。中には、呼吸回数と寿命に関係があるという説を唱える人もいらっしゃるようです。
呼吸は、意識しないで働く自律神経がコントロールしています。自律神経は、運動したり緊張したりしているときに働く「交感神経」と、休んでいるときに働く「副交感神経」で成り立っています。交感神経中心の状態では、呼吸回数が増えやすく、手足への血流は減少し、末端は冷えてしまいます。さらに、呼吸回数を増やしていくと、「過換気症候群」と同じ状態になります。酸素が増え、二酸化炭素が減ります。すると、血管は収縮し、手足の末端への血液の流れは低下します。
健康のための呼吸法があります。呼吸法は大きく分けると、胸で一杯空気を吸い込む方法と、おなかを使って吸い込む方法があります。一般的に、女性は、胸で呼吸をしていることが多く、「胸式呼吸」と呼ばれています。これに比べて男性は、おなかの筋肉を使って呼吸をしているそうです。これを「腹式呼吸」と呼びます。腹式呼吸は、正確にいうと、おなかの筋肉を使っているのではなく、横隔膜を主に使う呼吸法です。
胸式呼吸と腹式呼吸は、どちらも呼吸をすること自体に変わりがありません。しかし、主に使っている筋肉が違うため、呼吸による疲労感や肺活量などに影響があります。
胸式呼吸は、
腹式呼吸は、交感神経と副交感神経のバランスから考えると、副交感神経が主に働く呼吸です。精神的にも肉体的にも、リラックスした状態になりやすい呼吸です。リラックスした状態は、体中の筋肉を和らげてくれます。すると末梢の血管への血液の流れが良くなり、温かい血液が手足末端まで流れてくれます。これによって、夏の疲れをとることができます。
皆さんが、元気で明るい毎日を過ごすために、呼吸を大切にしてみてはいかがでしょうか。
「夏の昼間は、暑いので運動不足なります」と訴える方が、たくさんいらっしゃいます。たしかに、今年の夏は記録的な暑さで、日中、外で体を動かすのは控える必要がありました。
しかし、このところは、朝夕に涼しい風が吹くようになりました。そろそろ、体を動かすチャンスがやってきたようです。それでは、体の調子を整えるためには、何をすればよいのでしょうか? 最も簡単な方法は、朝のラジオ体操です。
朝のラジオ体操は、健康な体を作るだけでなく、1日をけがなく過ごすためにも大切です。朝、十分に筋肉と関節を動かしておくことで、体の調子を整えることができます。
朝のラジオ体操には、これ以外にも大切な効果があります。それは、体を温められるからです。体を動かすことで、熱が生み出されます。実は、体の熱を作る最大の生産工場は、筋肉だからです。朝、筋肉を動かしておくと、まるで、体中の関節に潤滑油を差したように、スムーズに動かすことができるようになります。
決して、息が上がるような激しい運動をする必要はありません。体の関節をゆっくりと動かすことだけで十分です。
朝、体を動かしておくことで、体調管理ができるわけです。人の体も、車のエンジンも、しっかりと温めてから使わないと、壊れやすくなります。「人間と機械を一緒にするな」と、お叱りになる方もお見えでしょう。
私も、人の体の仕組みは、機械よりも複雑だと考えています。決して、同じとは考えていません。しかし、精密機械を使って検査をしたり、ものを作ったり、車のエンジンを動かしたりしたときなど、必ず、機械がちゃんと動くかどうか、確認をしておく必要があります。それぞれの歯車が、うまく回り、寸分の狂いもなく動くためには、慣らし運転を繰り返す必要があります。部品一つ一つの温度が安定しないうちは、歯車自体が、うまくかみ合わないことがあります。金属でできた歯車は、温度によって、大きさが変化するからです。すべての歯車が一定の温度になるまで、慣らし運転を続けた後、やっと検査を行ったり、ものを作ったりすることができるようになります。
人の体も、同じです。体が冷えたままで、急に走ったりすると、筋肉を痛めたり、関節をおかしくしてしまいます。スポーツをされる方であれば、おわかりと思いますが、準備運動をしたときと、しなかったときでは、体の動きに違いが出ます。
準備運動をちゃんと行ってから、スポーツをした場合は、体がスムーズに動いてくれます。しかし、準備運動をせず、体が冷えたまま動かすと、思い通りに体が動かず、良い成績が出ません。どんな簡単な運動をする場合でも、必ず、準備運動を行い、体を十分に温めてから行うことが重要となります。
ぜひ、体を動かしましょう、すべての関節をゆっくりと動かしてみましょう。みなさんの毎日が明るく健康で過ごすことができるように、心からお祈りしています。
「どんな野菜でも、一年中あると思っている人が多くなったの」と、わたしのクリニックの近所にある八百屋のおかみさんが嘆いておいででした。最近は、夏に冬の野菜がないか、冬に夏の野菜がないか、と尋ねる人が増えているのだそうです。
夏野菜の代表選手であるトマトやキュウリも、一年を通して手に入る野菜になりました。農業技術が進歩して、野菜の旬の時期はだんだんとなくなってきています。海外からの輸入野菜も増え、一年を通して欲しい野菜が手に入るようになりました。
体調管理を考えると、それぞれの季節に合わせて、旬の野菜をとることは大切なポイントになります。漢方医学では春夏秋冬、それぞれの季節の野菜には役割があるとされています。
夏野菜は、暑い夏を乗り切るために、必要な成分を含んでいると考えられています。夏野菜には「体を冷やす作用」がありますので、この猛暑の中、夏バテ予防には最適です。しかし、寒い冬に夏野菜をたくさんとってしまうと、体調を崩す原因になります。それぞれの季節の野菜の特性を知ることで、季節ごとの健康管理ができるようになります。
夏は、日差しが強く、暑い時期です。直射日光に当たり、ばてている体は、熱射病にならないように水分を必要としています。夏野菜にはキュウリ、ナス、ピーマン、トマトなどがあります。最近では、どれも一年中手に入る野菜です。しかし、ウリ科の植物であるキュウリは、とうがん、スイカ、ゴーヤなどの仲間です。昔、たわしに使われたヘチマも仲間です。ウリ科の野菜は、水分を豊富に含んでいるのが特長です。また、カリウムも含むため、塩分と水分を体の外に出す作用が期待できます。お年寄りや、心臓が悪く足がむくむ人には、必要な野菜のひとつです。
ナス科の植物であるナスは、ピーマン、トマトなどの仲間です。ナス科の植物は、ビタミンやミネラルなどの栄養が豊富に含まれていますが、注意しなくてはいけないことがあります。それは、ソラニンという物質です。学校の調理実習で、ジャガイモの芽には毒があるので取り除くように指導されたことがありませんか。実は、ジャガイモもナス科の植物です。ナス科の植物の多くは、ソラニンを含んでいます。
このソラニンは、神経に作用する毒です。ソラニンによる中毒症状は、数時間後に表れる、
ソラニンをとらないようにするためには、太陽光に当たって緑色になったジャガイモの芽、未熟なジャガイモの皮の緑色の部分、未熟なトマトなどを食べるのは避けることです。ソラニンは水に溶けますので、水にさらしたり、煮込んだりすれば、毒性がなくなります。
夏の季節、水分不足になるのを予防するため、ウリ科の植物を積極的にとることが大切です。そして、ナス科の植物で、不足がちになるビタミンやミネラルを効率よく補うことです。
残暑厳しい中、どうか、夏野菜を
毎日、暑い日が続きます。汗を一杯かいた後に、冷たい飲み物をグッと一気したときの爽快感はたまらないものです。しかし、冷たい物ばかりを飲んでいると、お腹(なか)を冷やし、体調が悪くなってしまいます。
暑い時期に、お腹を冷やさないようにするためのポイントは、食事の順番です。
世界遺産になった和食を例に取ります。日本料理は、バランスがとれていて、低カロリー食です。油を使う量も少なく、魚中心の料理となります。健康管理に心がけている人にとっては、理想的な食事スタイルだと思います。日本料理の代表的なコースを考えてみましょう。
長い伝統に裏打ちされた和食が持つ、知識と経験は、すばらしいものです。懐石料理では「飯・汁・向付、煮物、焼物、預け鉢、吸物、八寸、湯と香の物、菓子」という順番で運ばれます。最初に出される料理は、温かい料理「飯・汁・向付」です。
一品一品をみれば、温かい飯、温かい汁のつぎに、野菜の和(あ)え物やおひたしといった冷たい向付が、選ばれることがあります。温かい料理ばかりでなく、冷たい料理も組み合わされています。この組み合わせを考えると「飯・汁・向付」全体としては、温かい料理となります。
次から、温かい「煮物」、温かい「焼物」と続きます。「預け鉢」は、炊き合わせや酢の物といった冷たい料理が選ばれます。そして、温かい「吸物」、冷たい「八寸」、温かい「湯」と冷たい「香の物」と続きます。そして、最後に「菓子」です。いかがでしょうか?
温かい料理と冷たい料理のバランスが、わかっていただけたと思います。
日本料理をみてみると、非常に合理的で、バランス感覚に優れ、身体(からだ)に優しく、健康管理には、最適な料理だということがわかります。日本料理の神髄をうまく取り入れて、日常の健康管理に活(い)かしていきたいものです。しかし、現実には毎食、コース料理を食べ続けることは、なかなか難しいと思います。
胃腸を冷やさないためには、最初に口にする料理に温かい料理を選ぶことです。胃腸は、温度によって働きが変わります。胃腸は、温度が下がると働きも低下し、温度が上がると働きも活発になります。身体を温める栄養素を効率よく吸収するためには、胃腸を冷やさないようにすることが大切です。
夏の暑い日、よく冷えたビールを一気に飲み干し、「これが生きがいだ」というサラリーマンのお父さんにとっては、耳に痛い話です。しかし、健康管理のためには、温かいものを先に胃腸に入れておく必要があります。
一度冷え切ってしまった胃腸を再び、回復させるには時間と手間がかかります。美味(おい)しいビールを飲む30分前におつまみを一口食べておくなど対策をとっておくといいでしょう。
暑い夏、みなさんが、元気で健康な毎日をお過ごしになりますように、心からお祈りしております。
がん患者さんとその家族の皆さん、医療従事者、そして、市民の皆さんのための最新がん医療フォーラム「AKIBA CANCER FORUM 2015」が8月8日、東京都千代田区の秋葉原UDXで開催されます。このフォーラムは、各分野を代表する医療者による50近い講演や、子どもを対象としたプログラム、映画、ヨガ、患者会展示などが、すべて無料で参加できます。
がん医療の進歩は著しく、臨床研究も進み、各疾患の診療ガイドラインもできています。また新しい医療技術、医薬品の登場により、がん医療の個別化も進んでおり、患者がより良いがん医療を受ける環境が整ってきています。
しかしながら、がん患者とその家族の皆さんは、がんの治療を行わない放置治療や、科学的根拠が不十分なサプリメント、代替療法など、いわゆる「ジャンク情報」にもさらされています。
がんを「知り」「学び」、そして「集い」ましょう!
このフォーラムでは、日々進歩する最新がん医療情報や、現在問題となっているがん医療のテーマを取り上げ、がんを「知り」、がんを「学び」、がん患者、家族、医療者が「集い」、勇気、希望が持てるフォーラムになることを目的に開催されます。たとえば、小学生から高校生を対象とした手術用医療機器の体験セミナーでは、実際に、医療現場で使われている電気メスや内視鏡を使って、模擬手術を体験することができます。(http://www.cancernet.jp/acf/program/surgery-experience)
また、シアターでは、「エンディングノート」「50/50」「ぼくたちの家族」「希望のちから」の4本の映画が上映されます。もちろん、わたしも夕方5時から、「がんと漢方薬」と題して、約1時間お話しさせていただくことになりました。どうか、多くの方に参加していただきたいと思います。
そして、クロージングセッションでは、「がん100万人時代をどう生きるか?」について、それぞれの領域において活躍する方々をお招きし、その問題の共有と提言を議論していただく予定です。わたしの後輩の秋月玲子先生も参加する予定です。こちらもどうぞ、よろしくお願いします。
よい情報をより詳しく知るために、多くの皆様が参加していただけるよう願っています。
夏の日差しが、肌に刺さる日が続きます。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。とくに熱中症には注意が必要ですが、熱中症、日射病、熱射病の言葉の違いをみなさんはわかりますか。
熱中症は、太陽光など夏の暑い環境「暑熱環境」で生じる障害の総称で、熱けいれん、熱疲労、熱射病に大別されます。特に、太陽光によって体が脱水になっている状態を日射病ということもあります。
熱中症になると、水分が足りず脱水状態になるために、体が動かせなくなることや、体温が上がったために、めまいや痙攣(けいれん)などの症状などが起こります。夏の暑い日、家の中でも、外でも、体調が悪くなれば熱中症の可能性があります。
熱射病は致命的な状態を引き起こす
砂漠の上をゆらめく太陽をまぶしく見つめながら、フラフラと歩く姿、まるで映画のワンシーンのように、脱水状態を引き起こす熱射病は、炎天下で起こりやすい症状のひとつです。
脱水状態になると、体の水分が足りなくなることで、口が渇き、尿の量が減ります。脱水状態は、脳、心臓、肺、肝臓、膵(すい)臓、腎臓などの重要な臓器に、酸素と栄養を運ぶことができなくなります。このため「脳貧血」と呼ばれる意識障害を起こして、倒れてしまうことや、「ショック状態」と言われる、血圧の低下、脈の乱れなどの心臓の症状、肺機能障害による「呼吸困難」症状、過換気、息苦しさなどが起きます。これ以外にも、脱水状態によって、脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞(エコノミークラス症候群)など、命に関わる状態を招きます。
体の外から熱が加わった状態なら冬でも熱中症になる
夏の暑い日は、熱中症にならないよう注意が必要です。太陽光で体が熱されることにより、脱水状態や意識障害を引き起こすからです。熱中症は、夏だけではありません。
冬の寒い日にも起こります。銭湯で熱めのお湯につかりすぎたときや、サウナに長時間入りすぎたとき、フラフラになった経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。あの高温によるふらつきやめまいは、熱中症のひとつです。人は体の外から温めすぎると体調を崩し、意識状態が悪化し、場合によっては命を落とすこともあるわけです。
熱中症予防には漢方薬の活用も
熱中症の予防には、水分補給だけでなく、日傘、帽子を使うことが大切です。そして、漢方薬をうまく活用するとよいでしょう。
1.夏場の胃腸障害に、
夏ばての体に油ものは、胃もたれや腹痛の原因になることがあります。また、冷たい物ばかり飲んでいると、体がだるくなり、胃腸の調子も悪くなります。そんなときに、胃苓湯が活躍します。胃苓湯は、夏の胃腸障害を治してくれる漢方薬です。口の渇き、体の
2.夏ばてに、
炎天下を仕事で走り回っているうちに、だんだんと体力が奪われていきます。寝苦しい夜が続き睡眠不足も重なります。こんなときに、清暑益気湯が活躍します。清暑益気湯は、夏の体調を整え、体力低下を補ってくれます。
暑い夏がやってきました。どうかみなさん、熱中症に注意して毎日を元気で健康にお過ごしくださいね。
皇居の前を通ると、老若男女が元気に走る姿を見ることができます。2015年2月22日に開催された、東京マラソンには、3万5797人の方が参加されたそうです。
「東京がひとつになる日。」をテーマに開催された、この東京マラソンには、たくさんのボランティアが参加しました。わたしの仲間にも、東京マラソンを陰で支えた医師がいます。
学生時代から陸上競技を続けている堀口速史さんは、東京マラソン2015医療救護委員会ランドクター統括責任者を務めました。彼は、いつも輝く笑顔で患者さんに接する呼吸器専門医です。走ることが大好きな彼の
そんな堀口くんが、「マラソンの最高峰」に位置付けている、第68回富士登山競走が、7月24日に開催されます。「3776mの頂を目指して」行われるこの大会は、富士吉田市役所から吉田口登山道を経て、山頂にいたる21kmを駆け上がる過酷な競技です。
なんと、スタート地点とゴール地点の標高差は、約3000mになります。夏に開催される大会は、体調管理も難しく、堀口くんは、「平地を走る競技とは違うトレーニングが必要なんですよ」と、キラキラ光る瞳で語ってくれました。
私たちも毎日の生活で、強い日差しを浴び、熱中症に注意する必要があります。水分の補給ばかりでなく、直射日光を防ぐ工夫が必要になります。そんなとき、漢方薬をうまく活用するとよいでしょう。
1.水分コントロールに、
暑さに負けて、冷たい物ばかり飲んでいると、体がだるくなり、胃腸の調子も悪くなります。暑い夏は、水分の補給は必要ですが、飲み過ぎに注意する必要があります。そんなときに、五苓散が活躍します。五苓散は、水分コントロールをしてくれる漢方薬です。口の渇き、からだの
2.熱のコントロールに、
太陽光線によって皮膚が真っ赤になってしまったときや、暑さにのぼせてフラフラするときがあります。体温の上昇により、中枢神経が負けてしまい、倒れてしまう場合もあります。こんなときに、黄連解毒湯が活躍します。黄連解毒湯は、熱をコントロールしてくれる漢方薬です。のぼせ、火照り、日焼けなどを治してくれます。
暑い夏がやってきました。どうか皆さん、熱中症に注意して、毎日を元気で健康にお過ごしくださいね。
みなさんは、野菜をたくさん食べていますか。
健康・体力づくり事業財団の「健康日本21」が目標としている1日に必要な野菜の量は、350グラム以上です。キュウリに例えると、だいたい3本ぐらいになります。
仕事で忙しいみなさんにとって、350グラムはなかなかハードルが高いと思います。
そこで、コンビニなどで売っている「飲む食物繊維」を活用されている方もたくさんいらっしゃるでしょう。手軽に食物繊維を
しかし、本当にこれだけでいいのでしょうか。
食物繊維には、水に溶けるもの(水溶性食物繊維)と、水に溶けないもの(不溶性食物繊維)があります。「飲む食物繊維」は、水に溶ける食物繊維が入っているわけです。私たち日本人には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を1:2の割合で摂るように勧められています。
不溶性食物繊維には、大切な役割があります。不溶性食物繊維は、腸の有害物質を吸着する働きをしていて、身体に有害なものを掃除してくれているのです。
便秘や下痢に悩んでいる方は、積極的に不溶性食物繊維を摂るとよいと思います。
それでは、どんな食べ物に不溶性食物繊維が多く含まれているのでしょうか。それは、キノコやワカメなどです。ちょうど料理の
キノコとワカメを毎日、健康のために食べることで、腸の中の有害物質を掃除することができるわけです。素晴らしい食品ですね。
どうか、みなさん、上手に水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を組み合わせて、毎日の食生活を健康で元気になるように工夫しましょう。