2013年5月吉日 芝大門 いまづクリニック 院長 今津 嘉宏
「ドクターズファイル」インタビュー記事 取材日 2013年8月3日 一部改変
徳川将軍家の菩提寺の一つ、増上寺があることでも知られる港区芝大門。すぐ近くには室町時代から続く芝大神宮もあり、門前町としての面影を残しつつ、現在は大勢のビジネスマンが足早に行き交う街並みの一角に、2013年7月に開院した「芝大門いまづクリニック」を訪ねた。院長の今津嘉宏先生は慶應義塾大学医学部で最先端の消化器がん治療に携わるなど、外科の第一線でキャリアを重ねたのち、外科学の範疇では救いきれない多くの患者を自身の手で何とかして救いたいと一念発起。外科の対極にあるとも言える「漢方医学」を基礎から徹底的に学んだという異色の経歴の持ち主だ。クリニックでは外科医としての豊富な経験を生かしつつ、漢方医として体質改善、栄養指導といった全く異なるアプローチを交え、一人ひとりの患者にとって最適なオーダーメイドの治療に取り組んでいる。インタービュー中、穏やかな物腰で開業までのご自身の歩みを語る今津先生の一言一言に、「患者の命を守る」というただ一点に向かって専門領域の枠を超えてまい進する、一人の医師としての強い使命感を垣間見た。
漢方医学の考え方が、患者さんにより適した治療法を提案する一助に
− 開業なさって1ヶ月ですが、先生はここ港区にもともとご縁がおありだそうですね。
この場所に開業したのは、ここが妻の実家からほど近く、なじみ深い街だったからというのが一番の理由ですが、僕自身も大学卒業後に上京して以来、ずっと港区に住み、港区内の病院に勤務していました。かつて勤務し、現在も週に一度外来(現在は、月に2回)を担当している恩賜財団東京都済生会中央病院で診せていただいている患者さんも港区の方が多くいらっしゃったりと、何かとご縁が深い場所なんです。馴染みの場所で馴染みの方々と顔を合わせながら、これまでと同じような医療をより深めた形で実践していきたいという思いで開業したクリニックですから、開業からわずか1ヶ月、新しい仕事ではあるものの、不思議とあまり違和感なく順調なスタートを切ることができたと思っています。
− 漢方医学を交え、具体的にはどのような医療を実践されているのでしょうか?
病気を診断、治療していく上で、僕たち医師は検査、診断、投薬など、数多くの選択肢を患者さんの症状に応じて組み合わせることで、治療のストーリーを組み立てていきます。僕が学んだ外科学、栄養学、漢方医学という3つの考え方、つまり人の見方が3つになること。
より多くのレパートリーを持つことで、検査結果やエビデンスに左右されない診断を下すことができる。クリニックでは西洋医学と漢方医学、栄養学などを区別せず、3つの領域を織り交ぜて総合的な観点から病気について、患者さん自身が納得して治療に向かうことができるように、これまで医師として培った知識と経験を生かしつつ、患者さんを取り巻く病気と環境を整理する役割も担っていければと考えています。
− 外科の先端医療と漢方医学の研究を究められる中で、開業に行きついたのは、どういったきっかけからですか?
僕の父も外科医で、名古屋の実家で開業医をしているんです。昔は、名古屋駅のプラットフォームから実家の病院が見えましたよ。実家はいま、兄が継いでいますが、幼いころから、診察室で患者さんと接する父の姿を間近で見て、その姿こそが私にとっての医療の原点となりました。父の診察室に「傷寒論」「金匱要略」といった本が並んでいましたので、知らないうちに漢方医学に接していたのだと思います。
小学生の頃、にがい丸剤を毎日、飲んでいたことや鍼灸師に針を打たれていた経験が今の医療に大きく役立っています。そんな僕が、20年以上勤務した恩賜財団東京都済生会中央病院から慶應義塾大学医学部漢方医学センターへ移った時に、東日本大震災がありました。地震で、家族は地下鉄に閉じ込められ、心の底から恐怖を味わいました。その経験が「医師として今、できることをしなければ」という想いへつながり、「研究、教育の場から患者さんの一番近くへ」という思いで「芝大門いまづクリニック」を開業させていただくことにしました。
当時、漢方に着目する外科医は希少価値。それでも迷いはなかった
− 医師の道を志されたのも、やはりお父様の影響が大きかったのでしょうか?
「父に憧れて」とか「父のようになりたい」と考えて、医師をめざしたというのは少し違います。実際、僕は中学高校時代は絵を描くことにのめり込み、将来は美術方面に進みたいと考えていたほど、当時、医師になろうという選択肢は僕の中にまったくと言っていいほどありませんでした。そんなとき、大学受験を控えた高校3年になって、母から「あなたの尊敬する手塚治虫は漫画家でありながら、医師免許を持っているのよね」と発破をかけられ、当時の僕の反骨精神に火をつけたのでしょう(笑)。 母の一言にスイッチを押され、医学部を受験したんです。とはいえ、そもそも毎日病院の中で育ってきたようなものですから、僕にとって医療は空気とか水みたいな、ごく自然な存在です。幼い頃、父の自転車の荷台に乗って大きな鞄を抱え、往診について行ったものです。近隣の家々を訪ねては、畳の上で寝ているお年寄りが、みなさん一様に父の顔を一目見ただけで安心したようないい笑顔をされてましたね。そんな記憶が今も鮮明に残っていますよ。
− 学生生活のエピソードを少しお聞かせいただけますか?
大学に入学した当初、僕は医学部に対して「医師免許を取得するための職業訓練校」のイメージを持っていました。ところが同じ大学に進んだ兄の影響で学生会活動に参加し、学校運営やイベントの企画などを通じて、チーム力、ネットワークづくりに面白味を感じ、想像とは違う大変充実した時間を過ごすことができました。当時は今のような総合研修システムがありませんでしたから、医学部を卒業した学生はほとんどが大学に残る時代。僕は実家のある名古屋の大学にいましたし、あえて地元を離れる理由はなかったのですが、兄が「大学に残るのでは無く、もっと広いところでいろいろな人に会って、医師としての見分を広めるべきだ」と、上京することを勧めてくれたんです。
学生会長まで務めた僕が大学に残らないという選択は、周囲の仲間からも驚かれましたが、今思えば兄のアドバイスでいいきっかけをもらい、今の自分につながっているのだなと感じます。今となっては、地元名古屋で過ごした時間よりも、東京での時間のほうが長くなってしまいましたから、東京の水が合っていたのでしょうね。
− 慶應義塾大学の外科に入局され、外科医療の最先端を歩まれて先生が漢方に出会われたきっかけは?
僕が在籍していた当時の慶應義塾大学の外科医局は、最先端の外科医療を世に広めていこうという機運に満ち、そうした中にあってまさか自分自身が漢方に興味を抱くとは夢にも思っていませんでした。指導教授は、北島政樹先生でした。みなさんは、巨人軍の王貞治選手やタモリの主治医と聞けばおわかりだと思います。当時、慶應義塾大学の外科では、漢方医学の「か」の字もありませんでした。 そんな中、食道がんの手術や抗がん剤、放射線治療でどれだけ手を尽くしても、効果的な治療法が見いだせないケースが山のようにあることを感じ始めてもいました。調度そんな時、ある論文が僕に衝撃を与えたんです。それはトラブルで小腸の大部分の切除を余儀なくされた患者さんが、術後から下痢が続く後遺症に見舞われ、西洋医学で症状を抑えることができない中、漢方薬の一つ「大建中湯」を服用したところ、症状が劇的に改善されたというものでした。実はこの論文は当時、虎の門病院に勤務していた兄の論文だったのですが、外科学の治療で救い切れない患者さんを漢方という全く別のアプローチで救うことができる。そんな強い期待感を抱いた僕は、外科学と一緒に漢方医学を学ぶことを決意しました。今でこそ漢方はメジャーになりましたが、当時の外科医の中で漢方に目を向けるのはいわばマイナーリーグ、いや、変わり者と言ったほうがいいかな(笑)。 現状をブレイクスルー(打破)するには外科学とは全く正反対のものを学んでいくしかないと漢方医学の可能性を確信する自分に迷いはありませんでした。慶應義塾大学病院 漢方外来で、「死」を連想させる外科とは正反対の「生」を診る産婦人科の専門医であり漢方医学の指導医の村田高明先生に7年間、冷え症、月経不順、不妊症、更年期障害など、女性特有の病気を通して、漢方医学を学ばせていただきました。
地域のチーム医療の一端を担えるクリニックをめざして
− 栄養相談にも、力をいれているそうですが?
慶應義塾大学の外科で、胃の手術後の食事指導や肝臓や膵臓の術後管理をするなかで、栄養学の大切さを学ばせて頂きました。学生時代には栄養学の講義が無く、実地で学んだ栄養学です。現在は、日本静脈経腸栄養学会のTNT研修会首都圏地区世話人をさせていただいております。 専門的な知識をわかりやすく患者さんの治療に生かすことを常に念頭に置いて診療をさせていただいております。とくにがん患者さんの栄養指導に力を入れています。「肉を食べちゃダメ」「サプリメントや健康食品がいい」など、間違った思い込みをされているがん患者さんが多く、少しでも正確な情報を届けてあげたいと思います。
− ここを患者さんにとてどういった場にしていかれたいとお考えですか?
クリニックを訪れる患者さんの中には大学病院や中核病院を受診し、診療中の慌ただしい最中、緊張してしまってご自身の思いをなかなかうまくドクターに伝えられないということを話される方が多くいらっしゃいます。そうした思いをくみ取り、ここでは患者さんのお話しをじっくり時間をかけてお聞きして、治療に対する不安や疑問を解消して差し上げたいということが一つ。 セカンドオピニオンでは、時間の制限をせず、様々な疑問や不安についてお話しを聞かせていただいております。また慢性疾患などの場合、症状や検査結果に応じて一度診断が決まると延々と同じ薬を処方され続けるため、患者さんは機械的にそれを受け入れ、結果的に何のためにその薬を飲んでいるのかわからなくなってしますことがよくあります。 しかし本当は症状の改善具合に応じて生活習慣を工夫したり、食事を調節していくことによって、薬の量を徐々に減らしていくこともできるんです。 栄養相談では、会社や地域で受けた健康診断や人間ドックの結果を持参していただき、栄養士の指導で食事や運動の指導によって薬に頼りすぎる治療から自分の免疫力を活性化して、治していくという自己再生能力に準じた形へ転換していくことも、このクリニックのめざす大きな目標ですね。日本静脈経腸栄養学会が主宰する医師の講習会の講師をずっとやらせていただいておりますので、栄養士と協力し栄養相談も積極的にやりたいと思います。
− 先生が描いていらっしゃる、今後の展望についてお聞かせください。
慶應義塾大学の外科で学んだこと、食道外科を指導いただきました国際親善病院院長 安藤暢敏先生から「始めたらやめるな。」、先輩である慶應義塾大学外科教授 北川雄光先生から「毎日、コツコツと、続ける」など、いただきました貴重な言葉の数々を忘れずに、日々を無為に過ごさないよう患者さんのための医療をすすめて参ります。
「ドクターズファイル」インタビュー記事 取材日 2013年8月3日 一部改変
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内科、外科、肛門外科、消化器内科、がん漢方、漢方内科、漢方産婦人科 妊活、セカンドオピニオン、栄養相談、冷え症(冷え性)、減感作療法
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内科、外科、肛門外科、消化器内科、放射線科、がん漢方、漢方内科、漢方産婦人科
妊活、セカンドオピニオン、栄養相談、冷え症(冷え性)、減感作療法
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