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過去のコラム【2015年アーカイブ】

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日本を代表するがん医師たちが秋葉原に集結

がん患者さんとその家族の皆さん、医療従事者、そして、市民の皆さんのための最新がん医療フォーラム「AKIBA CANCER FORUM 2015」が8月8日、東京都千代田区の秋葉原UDXで開催されます。このフォーラムは、各分野を代表する医療者による50近い講演や、子どもを対象としたプログラム、映画、ヨガ、患者会展示などが、すべて無料で参加できます。

 

がん医療の進歩は著しく、臨床研究も進み、各疾患の診療ガイドラインもできています。また新しい医療技術、医薬品の登場により、がん医療の個別化も進んでおり、患者がより良いがん医療を受ける環境が整ってきています。

しかしながら、がん患者とその家族の皆さんは、がんの治療を行わない放置治療や、科学的根拠が不十分なサプリメント、代替療法など、いわゆる「ジャンク情報」にもさらされています。

がんを「知り」「学び」、そして「集い」ましょう!

このフォーラムでは、日々進歩する最新がん医療情報や、現在問題となっているがん医療のテーマを取り上げ、がんを「知り」、がんを「学び」、がん患者、家族、医療者が「集い」、勇気、希望が持てるフォーラムになることを目的に開催されます。たとえば、小学生から高校生を対象とした手術用医療機器の体験セミナーでは、実際に、医療現場で使われている電気メスや内視鏡を使って、模擬手術を体験することができます。(http://www.cancernet.jp/acf/program/surgery-experience

また、シアターでは、「エンディングノート」「50/50」「ぼくたちの家族」「希望のちから」の4本の映画が上映されます。もちろん、わたしも夕方5時から、「がんと漢方薬」と題して、約1時間お話しさせていただくことになりました。どうか、多くの方に参加していただきたいと思います。

そして、クロージングセッションでは、「がん100万人時代をどう生きるか?」について、それぞれの領域において活躍する方々をお招きし、その問題の共有と提言を議論していただく予定です。わたしの後輩の秋月玲子先生も参加する予定です。こちらもどうぞ、よろしくお願いします。

よい情報をより詳しく知るために、多くの皆様が参加していただけるよう願っています。

熱中症の予防には水分補給、日傘、帽子…漢方薬も

夏の日差しが、肌に刺さる日が続きます。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。とくに熱中症には注意が必要ですが、熱中症、日射病、熱射病の言葉の違いをみなさんはわかりますか。

熱中症は、太陽光など夏の暑い環境「暑熱環境」で生じる障害の総称で、熱けいれん、熱疲労、熱射病に大別されます。特に、太陽光によって体が脱水になっている状態を日射病ということもあります。

熱中症になると、水分が足りず脱水状態になるために、体が動かせなくなることや、体温が上がったために、めまいや痙攣(けいれん)などの症状などが起こります。夏の暑い日、家の中でも、外でも、体調が悪くなれば熱中症の可能性があります。

熱射病は致命的な状態を引き起こす

砂漠の上をゆらめく太陽をまぶしく見つめながら、フラフラと歩く姿、まるで映画のワンシーンのように、脱水状態を引き起こす熱射病は、炎天下で起こりやすい症状のひとつです。

脱水状態になると、体の水分が足りなくなることで、口が渇き、尿の量が減ります。脱水状態は、脳、心臓、肺、肝臓、膵(すい)臓、腎臓などの重要な臓器に、酸素と栄養を運ぶことができなくなります。このため「脳貧血」と呼ばれる意識障害を起こして、倒れてしまうことや、「ショック状態」と言われる、血圧の低下、脈の乱れなどの心臓の症状、肺機能障害による「呼吸困難」症状、過換気、息苦しさなどが起きます。これ以外にも、脱水状態によって、脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞(エコノミークラス症候群)など、命に関わる状態を招きます。

体の外から熱が加わった状態なら冬でも熱中症になる

夏の暑い日は、熱中症にならないよう注意が必要です。太陽光で体が熱されることにより、脱水状態や意識障害を引き起こすからです。熱中症は、夏だけではありません。

冬の寒い日にも起こります。銭湯で熱めのお湯につかりすぎたときや、サウナに長時間入りすぎたとき、フラフラになった経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。あの高温によるふらつきやめまいは、熱中症のひとつです。人は体の外から温めすぎると体調を崩し、意識状態が悪化し、場合によっては命を落とすこともあるわけです。

熱中症予防には漢方薬の活用も

熱中症の予防には、水分補給だけでなく、日傘、帽子を使うことが大切です。そして、漢方薬をうまく活用するとよいでしょう。

1.夏場の胃腸障害に、胃苓湯いれいとう

夏ばての体に油ものは、胃もたれや腹痛の原因になることがあります。また、冷たい物ばかり飲んでいると、体がだるくなり、胃腸の調子も悪くなります。そんなときに、胃苓湯が活躍します。胃苓湯は、夏の胃腸障害を治してくれる漢方薬です。口の渇き、体の浮腫むくみ、胃腸不良、下痢などを治してくれます。

2.夏ばてに、清暑益気湯せいしょえっきとう

炎天下を仕事で走り回っているうちに、だんだんと体力が奪われていきます。寝苦しい夜が続き睡眠不足も重なります。こんなときに、清暑益気湯が活躍します。清暑益気湯は、夏の体調を整え、体力低下を補ってくれます。

暑い夏がやってきました。どうかみなさん、熱中症に注意して毎日を元気で健康にお過ごしくださいね。

マラソンせずとも熱中症には注意しましょう

皇居の前を通ると、老若男女が元気に走る姿を見ることができます。2015年2月22日に開催された、東京マラソンには、3万5797人の方が参加されたそうです。

 「東京がひとつになる日。」をテーマに開催された、この東京マラソンには、たくさんのボランティアが参加しました。わたしの仲間にも、東京マラソンを陰で支えた医師がいます。

 学生時代から陸上競技を続けている堀口速史さんは、東京マラソン2015医療救護委員会ランドクター統括責任者を務めました。彼は、いつも輝く笑顔で患者さんに接する呼吸器専門医です。走ることが大好きな彼のが、参加するランナーの安全と健康をしっかりと見つめていたことで、大会は無事に行われたと思います。

 そんな堀口くんが、「マラソンの最高峰」に位置付けている、第68回富士登山競走が、7月24日に開催されます。「3776mの頂を目指して」行われるこの大会は、富士吉田市役所から吉田口登山道を経て、山頂にいたる21kmを駆け上がる過酷な競技です。

 なんと、スタート地点とゴール地点の標高差は、約3000mになります。夏に開催される大会は、体調管理も難しく、堀口くんは、「平地を走る競技とは違うトレーニングが必要なんですよ」と、キラキラ光る瞳で語ってくれました。

 私たちも毎日の生活で、強い日差しを浴び、熱中症に注意する必要があります。水分の補給ばかりでなく、直射日光を防ぐ工夫が必要になります。そんなとき、漢方薬をうまく活用するとよいでしょう。

1.水分コントロールに、五苓散ごれいさん

 暑さに負けて、冷たい物ばかり飲んでいると、体がだるくなり、胃腸の調子も悪くなります。暑い夏は、水分の補給は必要ですが、飲み過ぎに注意する必要があります。そんなときに、五苓散が活躍します。五苓散は、水分コントロールをしてくれる漢方薬です。口の渇き、からだの浮腫むくみ、胃腸不良などを治してくれます。

2.熱のコントロールに、黄連解毒湯おうれんげどくとう

 太陽光線によって皮膚が真っ赤になってしまったときや、暑さにのぼせてフラフラするときがあります。体温の上昇により、中枢神経が負けてしまい、倒れてしまう場合もあります。こんなときに、黄連解毒湯が活躍します。黄連解毒湯は、熱をコントロールしてくれる漢方薬です。のぼせ、火照り、日焼けなどを治してくれます。

 暑い夏がやってきました。どうか皆さん、熱中症に注意して、毎日を元気で健康にお過ごしくださいね。

1日野菜350グラムが目標…食物繊維の摂り方を考えましょう

 みなさんは、野菜をたくさん食べていますか。

 健康・体力づくり事業財団の「健康日本21」が目標としている1日に必要な野菜の量は、350グラム以上です。キュウリに例えると、だいたい3本ぐらいになります。

 仕事で忙しいみなさんにとって、350グラムはなかなかハードルが高いと思います。

 そこで、コンビニなどで売っている「飲む食物繊維」を活用されている方もたくさんいらっしゃるでしょう。手軽に食物繊維をることができますから、健康に気を配っている方にとって、大変ありがたい飲み物ですね。

 しかし、本当にこれだけでいいのでしょうか。

 食物繊維には、水に溶けるもの(水溶性食物繊維)と、水に溶けないもの(不溶性食物繊維)があります。「飲む食物繊維」は、水に溶ける食物繊維が入っているわけです。私たち日本人には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を1:2の割合で摂るように勧められています。

 不溶性食物繊維には、大切な役割があります。不溶性食物繊維は、腸の有害物質を吸着する働きをしていて、身体に有害なものを掃除してくれているのです。

 便秘や下痢に悩んでいる方は、積極的に不溶性食物繊維を摂るとよいと思います。

 それでは、どんな食べ物に不溶性食物繊維が多く含まれているのでしょうか。それは、キノコやワカメなどです。ちょうど料理の出汁だしをとる代表的なものが、豊富に不溶性食物繊維を含んでいます。調理の方法は、煮ても、焼いても、いためても大丈夫です。どんな食べ方をしても、しっかりと不溶性食物繊維を摂ることができます。

 キノコとワカメを毎日、健康のために食べることで、腸の中の有害物質を掃除することができるわけです。素晴らしい食品ですね。

 どうか、みなさん、上手に水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を組み合わせて、毎日の食生活を健康で元気になるように工夫しましょう。

【阿部純子のトレンド探検隊】うつ病から認知症まで“こころの不調”に用いられる漢方治療

 アレルギー疾患、高齢者疾患、婦人科疾患、皮膚科疾患などに渡って用いられ、いまや最先端医療のひとつとして世界的に評価されている漢方治療。「体・心・肌」の不調を治す漢方薬は、うつ病や認知症、睡眠障害といった精神的な病気や症状に対しても有効であることがわかっている。

 こころの不調に対し、どのように漢方医療が関わっているのか、「芝大門 いまづクリニック」院長の今津嘉宏さんのセミナーに参加して話を伺った。

 外科医としてキャリアをスタートした今津さんは、がん治療に携わる中、抗がん剤や放射線治療による副作用に苦しむ患者を目の当たりにして、その解決法を模索する中で漢方を学び始める。婦人科領域に漢方医学を取り入れていた産婦人科医の村田高明さんに師事し、漢方医学の基礎を学び、外科学と漢方医学の融合を目指してきた。

「こころはどこにあるか難しい。精神的なものは脳だろうし、機能としては心臓になる。現代医学的にこころの不調を考えると、こころは神経系、免疫系、内分泌系、からだは循環器系、呼吸器系、消化器系と細分化されてしまう。

 こころの不調を西洋医学で治療するとなると、精神科、心療内科、免疫系、内分泌系、産婦人科など、原因を探るにはいろいろな科に行かなければならない。西洋医学の考え方だと、本来のあり方からどんどん遠ざかってしまうイメージがある。

 対して漢方医学はとてもシンプルな考え方だ。漢方薬の観点からこころを見ると『気』というひとつの言葉で表現できる。こころに関わるものは『気』のほかに『血』『水』があり、この3つに関連している薬を処方すればよい。漢方治療をしながら、必要であれば専門医療機関へ紹介することができるので、漢方薬は漢方医療と西洋医療のキャッチボールするためのハブとしての役割があると思う」

◆自律神経に作用する漢方薬

 脳でこころに関わるのは、感情、情緒、理性。漢方では「喜・怒・憂・思・悲・恐・驚」の7つの感情の変化をいう。

 ストレスや怒りを感じたとき、アロマやヨガ、運動、入浴など人それぞれに気分転換があるが、気分の切り替えがうまくできず、脳を休めることをさせないと、うつ病になる可能性がある。現在ではうつ病は生活習慣病のひとつになっており、こころが疲れたために脳に負担がかかり起こるといわれる。漢方医学では「気」に問題にある状態なので、気を改善する薬を使う。

 代表的なものは「蘇葉(そよう)」、これは赤シソの葉で、気を調整するときに使う漢方薬の原料。殺菌作用だけでなく気分を調整してくれる薬として使うことができる。蘇葉が入っている漢方薬が「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」。

「陳皮(ちんぴ)」とはみかんの皮で、「枳実(きじつ)」は熟していない状態のダイダイなどの果実。両方とも気を巡らせるときに使う薬草で「香蘇散(こうそさん)」に使う。香蘇散には蘇葉も含まれている。「桂皮(けいひ)」はシナモンのこと。このように日常生活でも摂れるような材料を漢方は取り入れている。

 こころの中で神経系の中心となるものが、交感神経と副交感神経で、自律神経とは交感神経と副交感神経の両方のバランスを指し、自律神経のバランスが崩れると体の調子や、精神的な不調を訴えるようになる。

 交感神経はアドレナリン、副交感神経はアセチルコリンというホルモンが働いている。交感神経が働いているときはいわば戦闘態勢で、心拍数が早くなる、呼吸が荒くなる、手に汗をかくなどの状態が起こる。血管を収縮し血流を下げているので手足が冷える。副交感神経が働いているときは、呼吸が穏やかでリラックスした状態になり、ねむくなったり、空腹を感じたりする。血管を広げて血流を良くするため手足は温かくなる。

 漢方医学では「気・血・水」の中でも水のバランスを良くすると、自律神経のバランスは良くなる。めまいやふらつき、耳鳴り、頭痛、足のむくみ、冷えは漢方医学でいうと水のバランスが悪い=自律神経のバランスが悪いということになる。この治療に用いるのが「五苓散(ごれいさん)」。五苓散は「猪苓(ちょれい)」「茯苓(ぶくりょう)」「蒼朮(そうじゅつ)または白朮(びゃくじゅつ)」「沢瀉(たくしゃ)」「桂皮」の5種類の生薬から成る。

◆認知症、アルツハイマーに作用する漢方薬

 急激に高齢化社会が進む日本では、2020年には65~75歳よりも、75歳以上のパーセンテージの方が上回る。平均寿命が長くなると浮上するのが健康寿命の問題で、認知症の中でも増加するアルツハイマー型認知症に対する対策を見直す必要がある。

「抑肝散(よくかんさん)」は、夜泣きや疳の虫に処方されてきた漢方薬で、英語ではメンタル・コントロール・メディスンと呼ばれるように、感情、理性を調整してくれる作用があることが近年の研究で判明している。

 抑肝散はうつ病、メンタルケアだけでなく、認知症における行動、心理症状に伴う各症状を改善するという治療効果が報告されている。アルツハイマー型認知症の薬物治療に用いられる薬は、副作用として日常生活動作(ADL)に支障をきたし、つまずいたり、転びやすくなるが、抑肝散はそれを起こさないということがわかっている。

 また、現在がん治療を行っている患者にも漢方を処方されることがあるが、これは抗がん剤の副作用の軽減や生活の質(QOL)を良くすることが目的で、免疫や全身症状を改善させるという意味で使われている。

 CDDP(シスプラチン)という抗がん剤の副作用は腎機能障害で、がんは治るが副作用で苦しむケースも多い。CDDPを投与された患者に、漢方薬を併用したところ、腎臓の機能を低下させずに抗がん剤としての効果は減らしていないことがわかった。こういったデータを提示して、実際の現場でも漢方薬を処方している。

 免疫機能は人間の体は外から入ってくるものを取捨選択して、受け入れていいものか毒なのかを分けているが、ジャッジするのが腸管免疫。舌で味覚を確かめる、強い胃酸で菌を殺す、小腸、大腸で良いものと悪いいものを仕分けるなど、腸管免疫は体を守る防御機能になっている。

 腸管免疫には腸内細菌が関係しているが、昔の人は腸内細菌に関係する薬は、腸管免疫にも作用すると知っており、腸管免疫に働く漢方薬が生まれた。漢方では気の分類に入り、消化器を調整する薬としては薬用人参をメインに他の漢方を組み合わせたものを使う。

◆性ホルモンに作用する漢方薬

 男性と女性ではホルモンの変化が異なり、2週間単位で女性はホルモンバランスが変わり、男性と比べて変化の大きい女性ホルモンが精神的にも大きな影響を与える。

 女性ホルモンは物忘れ、認知症、脳血流、アルツハイマー、更年期症状など、脳に影響を及ぼすホルモンといわれている。精神的な要因が大きい拒食症の比率を見ると女性は男性に比べると10倍になっている。うつ病は男性に対し女性は2倍、認知症は3倍だ。

 漢方薬を処方する場合、同じ症状でも男性と女性では処方する薬が違うという。女性は「血の道症」といった、月経前症候群、出産後母体症候群、更年期症候群といった女性ホルモンの変化による症状が出ることも多い。こういった場合は「血(けつ)」に働く漢方薬が処方される。

 女性ホルモンに作用する薬は3つあり、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」は「血(けつ)・水」の異常に働き、記憶学習能力、睡眠の改善、卵巣機能、免疫機能を改善する。「加味逍遥散(かみしょうようさん)」は「気・血」に働き、更年期障害を改善する。「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」は「血」に働き、冷えやのぼせを改善する。

 漢方医学の本場は中国だと思われているが、漢方医学は日本で培われた日本独自の医学体系で、中国の伝統医学である「中医学」や韓国の伝統医学「韓医学」とは、診断方法や治療法が全く異なるという。また、西洋医学と漢方医学の双方を一人の医師が処方できるのは日本だけだ。

 漢方薬は改善が見られなければ変えることができ、2週間、早い時は3日で変えることもあるという。漢方薬はずっと続ける必要はなく、良くなったらやめてよい。

 漢方薬は全身状態を改善しながら、悩んでいる症状も改善するような効き方なので、ドクターショッピングをしても改善が見られないと悩む場合は、漢方医学の専門医師に相談してみるのも手段として有効ではないだろうか。漢方薬は保険医療が適用されるので、医師にかかれば保険で処方ができる。

文/阿部 純子

乳がんの患者セミナーやラン&ウォーク、ファッションショー…

働き盛りの女性たちが死亡するがんのトップは、乳がんです。女性たちが乳がんで苦しまないようにするために、乳がんについて正しい知識を持つことが大切になります。そんな強い思いのひとつとして、2015(平成27)年7月4日(土)東京国際フォーラム ホールD7にて、第23回日本乳癌学会学術総会 患者セミナーが開催されます。

 座長は、北里大学病院乳腺・甲状腺外科の谷野裕一先生です。谷野先生とは約20年前、一緒に勉強をした仲間です。このセミナーへの参加は無料です。ぜひ皆さん、ご参加くださいね。

 医師として働く中で、常にがん診療を中心に行い、乳がんの患者さんも数多く診察させていただいております。私のクリニックには、乳がん治療による体調の悪化や薬の副作用などのいろいろな悩みを抱えた方がたくさんいます。

 ホルモン療法の副作用によるホットフラッシュや筋肉痛、関節痛など、はっきりとわかる症状の場合はいいのですが、言葉にできないような不調や気分の変化などで悩んでいることが多いようです。主治医へ相談しても、取り合ってもらえず、ひとりで苦労している方がまだまだたくさんいらっしゃいます。自分ひとりで考え、悩んでも解決できないことが、たくさんあると思います。そんな方に少しでも明るくなってもらおうと企画された催しがあります。

 日本乳癌学会は7月5日、東京都江東区のシンボルプロムナード公園で、ランニング&ウォーキングイベント「RUN&WALK for Breast Cancer Survivors」を開催し、同日11時10分から、公園特設ステージで、乳がん体験者の皆さんによるファッションショーが行われます。実際に乳がんを経験した人たちが、自分たちの手で作り上げたファッションショーです。どうか、多くの皆さんに楽しんでもらいたいものです。

 関連記事:日本乳癌学会、ランニング&ウォーキングイベント初開催…7月5日

 元気で、明るい女性が、活躍できる日本をつくるためにも、乳がんを早期発見、早期治療する必要があります。20歳でも乳がんになる危険性があることを知ってもらい、日頃から、自己検診をされることをお勧めします。

 どうか、皆様が、いつも元気で明るい毎日を送ることができますように、心からお祈りしています。

6月30日は「夏越の祓」…冷房対策は防寒方法を応用しよう

私の通勤路にある東京・港区の芝大神宮(http://www.shibadaijingu.com)では、6月30日に「大祓おおはらい式」が行われます。

 大祓式(大祓神事)とは、日々の暮らしの中で知らず知らずのうちに犯したであろう罪や過ち、心身のけがれはらい清め、無病息災を祈る神事です(http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/gyouji/index.html)。毎年6月と12月の末日に行われます。芝大神宮では、『夏越なごしはらえhttp://www.shibadaijingu.com/archives/2015/06/post-1083.html)』の祭儀に引き続き、『の輪くぐり』も行われます。行列を編成して行われる『茅の輪くぐり』にも、参加したいものですね。

 芝大神宮のことは、以前にもご紹介させていただきました。毎朝、芝大神宮の前を通ると、多くの参拝者が、頭を垂れている姿を見ることができます。その真摯(しんし)な姿に、私は、いつも心を打たれます。

 神社で行う二拝二拍手一拝(http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/sanpai/)は、慣れていないとうまくできませんね。芝大神宮の名誉宮司勝田勇さんに伺ったところ、この参拝の作法は、「平安時代、目上の人に会ったときの挨拶方法」だったのだそうです。神社を参拝するときは、しっかりと、神様へ挨拶ができるといいですね。

 夏至(今年は6月22日)を過ぎると、夏がやってきます。毎日の生活で、体調管理に気を配る必要があります。とくに、バスや電車に乗るとき、冷房で体調を崩すことがあります。外は暑いのですが、冷房が利いた乗り物で汗が冷え、体調が悪くなることがあるからです。こんな時は、冬の防寒方法を応用しましょう。首回りを冷やしてしまうと、首や肩がこる原因になったり、寒気がして風邪を引く原因にもなります。

 防寒方法は、簡単です。首の後ろに薄いハンカチ1枚を巻きましょう。直接、冷房の風が、首筋に当たることを防ぐことができます。

 暑い季節、皆様が元気で健康な毎日を過ごされることを心からお祈りしております。

<お知らせ>

 名古屋方面の皆様へ、ご案内です。7月15日(水)午後1~2時、JR名古屋駅前にあるウインクあいち(愛知県産業労働センター)にて、「睡眠と生活習慣病」と題して、睡眠と生活習慣病との関係を中心にお話しさせて頂きます。入場は無料です。事前に申し込みをされて、ぜひ、ご参加くださいね。お待ちしております。(http://www.kyoto-nishikawa.co.jp/news/news20150705.html

ソーシャルで気づいた…ドリアン助川くん、誕生日おめでとう

高校の同級生で作家のドリアン助川くんが、一足先に誕生日を迎えたという情報が、ソーシャルメディアを通じて入ってきました。最近、ソーシャルメディアから毎日のように情報が入ってきます。その中でも、ドリアン助川くんの誕生日を忘れていた私は、懐かしい友人の誕生日を知らせてくれたソーシャルメディアの働きに、心から感謝しました。

 テレビをほとんど見ない私にとって、ソーシャルメディアは、貴重な情報源の一つになっています。リアルタイムに知らせてくれる情報の中には、大切なものもそうでないものも含まれています。

 ちょっと知りたいことを調べるだけでなく、過去に自分が調べたことを覚えていて、次々と情報を送ってくれる機能があるようです。携帯電話でもパソコンにも調べたい言葉の頭文字を入力するだけで、すぐに以前に調べた言葉を表示してくれる機能があります。

 例えば、みなさんの携帯電話に、「ど」と入力してみてください。どんな言葉が候補に、あがってきますか。「土曜」「どらえもん」「ドラマ」など、さまざまだと思います。以前に一度でも調べたことがある言葉が優先して候補のあがってくるようにプログラムされているからです。ちなみに、私のパソコンですと、「毒」「ドーピング」や「ドリアン助川」などがでてきます。面白いですね。

 しかし、この携帯電話やパソコンが与えてくれる情報には、注意が必要です。というのも、なりすましやオレオレ詐欺と同じように、知らないうちに惑わされてしまう危険性があるからです。

 携帯電話やパソコンの検索には、いろいろな仕掛けがされています。その中でも、がんに関する情報には、わらにもすがりたい気持ちを利用して、お金もうけを企んでいる人たちの情報も混ざっているからです。

 私が所属している日本緩和医療学会(2015年6月18日~20日、パシフィコ横浜で、第20回日本緩和医療学会学術大会が、開催されています)では、多くの人たちへ、がんに関する情報を正しく伝えるためのさまざまな活動を行っています。

 「がんによく効くサプリメント」「がんが治る健康食品」など、本当に多くの情報が、テレビやラジオを通じて、流されています。そして、最近、特定保健用食品に加え、機能性表示食品という新しい表示方法が、始まりました。ちょっと、考えただけでは、本当に良いものは、何かを選ぶことは難しいと思います。

 日本緩和医療学会では、補完代替療法ガイドラインを誰にでも活用できるように公開し、情報提供しています。現在は、第2版の作成を進めているところです。また、日本補完代替医療学会も、「がんの補完代替医療ガイドブック」を提供しています。

 ぜひ、お金儲けのための情報や、オレオレ詐欺に近い間違った情報に、惑わされないように、みなさんは気をつけてください。

 最後に、ドリアン助川くん原作の映画「あん」が、日本全国で公開されています。お時間があるとき、心に栄養のエキスを与えるために、足を運んでみてはいかがでしょうか。この情報は、信頼がおけるものですよ、私が保証します。みなさんが、毎日を元気で健康に過ごされることを心からお祈りしています。

 ドリアン助川くん、誕生日おめでとう。

今日のとっておき

認知症の行動・心理症状(BPSD)にも漢方薬が効く!? 漢方の可能性はスゴい

皆さんは「漢方」治療を受けたことがありますか?

先日、ふみっちーは漢方アンバサダーズ主催(後援 ツムラ)の「まだ、あなたが知らない“漢方”2015」セミナーに参加してきました。漢方の正しい知識と最前線情報を学べるセミナーということで、じつに興味深い内容だったんですよ★

「こころの不調と漢方治療」をテーマにレクチャーしてくださったのは、芝大門いまづクリニックの今津嘉宏院長。

もともと外科の先生で、20年前に「治療に行き詰まったがん患者に漢方でのアプローチが功を奏した」ことが、漢方を深く学ぶきっかけになったのだとか。現在は、婦人科をメインに漢方を取り入れているそうです。

「こころの病で医療機関を受診しようとすると、現代医学では、複数の科での受診が必要になることもあります」

神経系、免疫系、内分泌系、循環器系……うーん、確かに。西洋医学的分類で書き出していくと、病の原因がどこからなのか、細かく分かれますよね。それによって受診科が変わることもあるわけです。

「それが、漢方医学だとじつにシンプル。

〈気〉〈血〉〈水〉のバランスを整える

アプローチをするのです」

たとえば、うつ病。現代医学では神経系や免疫系、内分泌系と関わりがあるとされ、さまざまな治療薬が用いられています。しかし、そのほとんどに副作用があると言われています。また、薬も種類が多いだけに、自分に合った薬が見つかるまで、大変そうですよね。

「漢方医学では、うつ病は〈気〉に問題がある状態と考えます。〈気〉を補う、あるいは調節する、巡らせる漢方薬を処方するのです。

補うときは〈人参、黄耆(おうぎ)〉

調節するときは〈厚朴(こうぼく)、柴胡(さいこ)、蘇葉(そよう)〉

巡らせるときは〈陳皮(ちんぴ)、枳実(きじつ)、桂皮(けいひ)〉

を使います」

近頃はプチうつなど、「病院に行くほどではないんだけど」という不調を抱えている人も多いようです。そんな人にも、漢方はうってつけではないかしらん。

会場には漢方薬の原料となる生薬が展示されていました。

ふみっちーが知っているものもありましたよ♪

会場内が笑いと驚きのどよめきに包まれたのは睡眠について。

そうそう、なかなか寝付けないとか、ふみっちーも不眠には少し悩まされてるんですが…

「現代医学では、睡眠は“繰り返し意識を失う状態”と定義されています」

ホントですか〜〜〜???(笑)

それだけ、睡眠はきちんとわかっていないのだそうです。

「睡眠で大事なのは頭を休息させること。

漢方では、メンタルコントロールメディスンとして抑肝散(よくかんさん)を用います。

生活習慣病、メタボリックシンドロームが進行してドミノ倒しのように次々と病気を引き起こしてしまう“メタボリックドミノ”のスタート地点、川上のほうに、睡眠があります。質の良い睡眠を取ることは、健やかに歳を重ねるためにとても重要なことなのです」

女性は、ホルモンの関係で男性よりもあらゆる病気のリスクが高いというお話もうかがいしました。

拒食症は男性1に対し、女性は10倍

うつ病は同じく、2倍

認知症は3倍

骨粗しょう症はなんと13倍にも!

こ、これは……。女性の方がうつ病リスクが高い、などと聞いたことはありますが、ここまでとは。

女性ホルモンってデリケートでスゴいものなのですね。再認識。

「そんな女性のために、また特に婦人科系の症状によく用いられている漢方薬が、

血と水のバランスを整える〈当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)〉

気と血のバランスを整える〈加味逍遥散(かみしょうようさん)〉

血のバランスを整える〈桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)〉

です」

漢方薬は1人ひとりの身体のバランスに合わせて処方し、2週間くらいで改善の実感があるそう。早い人では3日でもわかるとか。

速効性がみられるものもあり、改善がみられなかったら、ほかの漢方薬に変えることもあるのだそう。

そうなんですよね、実はそれは知っていました。

ふみっちーは花粉症なんですが、そのとき処方された漢方薬を飲んだら、10分で鼻水が止まったことがあります。

漢方のスゴさを思い知った瞬間でした。

「漢方薬はずっと服用し続けるものだと勘違いされている方もいらっしゃるようですが、改善したら、服用は終了です」

保険適用となるものもあるのも、ウレシイところですよね。

ツムラの漢方薬が出来るまでの展示もありました。調合品からエキス顆粒、製品となるわけですね。

ツムラのホームページには、薬局で買える漢方薬のほか、漢方に詳しい病院や医師の検索サイトの紹介もあります。もっと漢方について知りたい、漢方薬治療を受けてみたいと思った方は、早速チェックしてみてくださいね♪

ツムラ

自分のつらさをうまく伝えられない患者の話を聞く大切さを学ぶ

1年の半分が過ぎようとしています。みなさんにとって、2015(平成27)年の前半は、いかがでしたでしょうか。わたしは、毎日の診療にたずさわりながら、いろいろな人との出会いをいただき、多くのことを学んだ時間でした。

 みなさんは、1日に、何人の人と会話をしますか。家族との会話、仕事場での会話、内容もさまざまだと思います。ひとり暮らしで1日だれとも会話をしないという方もいらっしゃるでしょう。私は、毎日、30人以上の人と話をさせてもらっています。その中には、おしゃべり上手な人、口が重い人など、いろいろな人がいらっしゃいます。私の仕事は、そんな人たちの話を聞くことが中心です。

 先日、外来にお見えになった70歳過ぎの女性Tさんは、診察室のいすへ腰掛けるなり、これまでの自分の病気の経過について話し始めました。30歳半ばから患った背中の痛みで来院されたTさんは、これまでに大学病院や有名な整形外科の病院など、さまざまな医療機関を受診されてきました。数年前には、「気のせいだろうから精神科を受診しなさい」と言われ、何年もの間、自律神経失調症という診断名で薬を飲んでいたそうです。しかし、一向に良くならなかったのです。

 背中の痛みを訴えると、家族にも嫌な顔をされるため、家の中では自分の症状をずっと黙っていました。

 友人のご紹介で、私のクリニックへ来院されました。初診の時、Tさんは座るやいなや30分以上話し続けました。病気の話に始まり、話の後半では生まれたころの話、生い立ち、結婚の苦労話や死別した伴侶の話など、人生そのものの話になりました。

 今回の受診とはかけ離れた内容の話になってきましたので、私は「すみませんが、そろそろ、診察させてもらってもいいでしょうか」と声をかけさせてもらい、無事、診療が終わりました。

 数週間してから、再び、Tさんが外来へお見えになりました。前回の治療のお陰で背中の痛みが消えたことがうれしかったのでしょう。今度は、どうしてこれまでの医療機関では治してくれなかったのか、と再び、これまでかかった医療機関の話が始まりました。今回は20分程度で話が終わり、「ありがとうございました」とお辞儀をして、お帰りになりました。

 そして1か月後、Tさんは「あの痛みは、なんだったんでしょうね」と笑みを浮かべ、数週間の出来事を簡単に話し、満足した様子でお帰りになりました。

 Tさんから、これまで受診した医療機関では、自分のことを理解してもらえていないと感じていたこと。いつも、担当医へ、思うように自分のつらいところを伝えられなかったことなどをお聞きしました。改めて、医療の現場では、人の目を見て、しっかりと会話をすることが大切だということをTさんに教えていただきました。

 病気は、気の持ちようで変わると言われています。みなさんの毎日の生活も、会話を通して、ストレスをためないようにすると良いと思います。どうか、みなさんが毎日、元気で健康に過ごされますように、心からお祈りしています。