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自分の健康を知る方法(10)肩こりに2つの原因

 師走、今年もあとわずかになりました。みなさんは、仕事場や家の片付けを始めていますか。わたしも少しずつですが、自分の仕事の整理をするように心がけています。でも、たまった書類を見るだけで、肩がこってしまい、やる気が出ないこともありますね。

 若い方でも肩のこりを訴える方が増えています。それはパソコンが普及してから、日常生活の過ごし方が変わったこととも関係があるようです。じっと、パソコンの画面とにらめっこしていると、体のどこかに力が入り、目が疲れたり、肩がこったりしてきます。最近では、スマホを電車の中で変な体勢で操作したり、歩きながら画面を見たりと、体の使い方もかわったようです。

 昔は、肩こりは「運動不足」の一言で片付けられていました。しかし、最近では、肩こりの原因は、そんなに単純ではないようです。

目の疲れから

 まずは、目の疲れからくる肩こりです。眼鏡を使っている方に多く、パソコンなどを長時間使っていると目の周囲の筋肉が緊張したままの状態となり、場合によっては頭痛になる場合もあります。この肩こりは僧帽筋(そうぼうきん)に一致して広がっていきます。僧帽筋というのはお坊さんの頭巾のような形をした筋肉です。目の疲れから頭痛、肩こりとなる症状には、「葛根湯(かっこんとう)」を用います。

冷えから

 つぎは、冷えから来る肩こりです。寒い時期になると増えますが、夏の冷房の季節にも多い肩こりです。首や肩を冷やさないように心がけることが大切です。この肩こりは首から両腕にかけて広がることが多く、「桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)」が用いられます。

やはり運動は大切

 どちらの肩こりにも、運動が大切なことは言うまでもありません。目の疲れからくる肩こりの場合は、こめかみをマッサージしたり、頭皮をほぐしたりするといいでしょう。冷えから来る肩こりの場合は、首と肩の運動をすると効果的です。

 年末まであと数週間、仕事もプライベートも忙しくなってきます。自分の体の状態を観察する目を持って、体調管理に努めてください。もし、体の調子がうまく整わなかった場合は、医師、薬剤師、看護師へ遠慮なく相談されてはいかがでしょうか。

自分の健康を知る方法(9)「元気」を作る気力、体力、消化力

木枯らしが吹き、寒さが一段と厳しくなってきた今日この頃ですが、みなさんは元気に過ごされておいでですか。

 「元気」のバロメーターは、一人ひとり、異なると思います。朝起きたときに、気分よいときは元気だと感じたり、食べ物がおいしく感じるときは胃腸が元気な状態と考えたりする人もいるでしょう。

 この「元気」という目に見えないものを漢方医学では「気(き)」として考えます。


 「気」には、3つの要素があります。

 1つめは、精神的なものをいいます。これを「空気」のようなものと考えれば目には見えませんが、「気分」「気合」「気持ち」「雰囲気」など顔の表情に表れるものと考えれば、目にも見えますね。「気分が悪い、気が滅入めいる、気が気じゃない、気のせい、気持ちが落ち込む、気力がない、気にしすぎる」といった言葉を皆さんもよく使うと思います。心の葛藤など精神的ストレスは「気」の異常と考えます。

 2つめは、体力的なものをいいます。「最近、どうも元気がない」「週末になると元気がなくなる」「よく友人から元気が足りないと言われる」など、元気は、目に見えるような、見えないような、不思議な存在です。「元気がない、疲労困ぱい、すぐに足が疲れる、目が疲れる、活動性が落ちる、活気がない、力が出ない」など肉体的ストレスは、体力的な「気」の異常と考えます。

 3つめは、消化力をいいます。胃腸の調子については自覚しやすいのですが、他人にはわからないつらさがあります。「胃が疲れている、胃がもたれる、胃が痛む、ゲップが出る、すぐに下痢をする、消化不良、おなかをこわす、おならが出る」などは、消化力の「気」の異常と考えます。

心も体も疲れた時は

 このような「気」の異常の治療には、さまざまな対応が必要になります。西洋医学では、体力が低下していたら栄養療法やリハビリテーション、精神的に落ち込んでいたら向精神薬などによる心療内科での治療やカウンセリング、消化器疾患ならば消化器内科と、いろいろな診療科を訪ねる必要があります。

 しかし、漢方医学ならば、全部まとめて診断から治療が行えます。元気がないときは食欲もわきません。精神的ストレスが多いときは、食べ物の味がわからなかったり、消化不良を起こしたりします。症状はひとつではありません。こんなときこそ漢方医学の出番です。

 元気がなく精神的にも肉体的にも疲れている場合は、「気虚(ききょ)」と考えます。気虚には、人参湯(にんじんとう)を中心とした漢方薬を用います。四君子湯(しくんしとう)、六君子湯(りっくんしとう)といった漢方薬も人参湯の仲間です。

 「気虚」を治すには、胃腸を整えて消化吸収力を増し、エネルギーを増すことで、元気になっていきます。これが漢方医学の治し方です。

 たくさんの診療科を受診されている方、ぜひ一度、漢方医学の診断を受けてみてはいかがですか。



自分の健康を知る方法(8)「手」は情報満載

人生に思い悩んで、易者さんに手相をみてもらった経験、ありませんか。手相を見て人生を語るのは、易者ですが、わたしたち医療従事者は、手を診て健康の状態をいろいろと知ることができます。

 よく女性は、ネイルサロンへ通い、爪先の手入れをされます。爪だけでなく、指先のケアにも心がけている人もいらっしゃいます。しかし、男性はあまり指先にまで気を配っていませんね。しかし、手からは、大変多くの情報を得ることができます。手を診ると体の状態を推察することができます。

爪でわかる胸の病気

 爪を観察してみましょう。指の爪は1日に0.8~1.2mm成長します。爪は、よくカルシウムでできているとまちがわれていますが、髪の毛と同じケラチン組織でできています。

 変形した爪は、数週間前~数か月前、爪の根部に何らかの刺激が加わったことによって起こると考えられています。たとえば、体調が悪かったり、栄養状態が不良だったりした時期や、抗生物質などたくさん薬剤を服用した時期に、爪の変形がはじまることがあります。爪の変化は体調の変化と、よく相関します。

 典型的な爪の変形の仕方があります。慢性的な呼吸器疾患や心臓病では、爪が変形して、丸みを帯びた三味線の「バチ状」にふくらみます。この「バチ状爪」の人の中に、肺がんを患っている人もいますので、注意が必要です。

 「バチ状爪」とは逆に、へこんでいる爪の人がいます。これは貧血によることが多いと思います。貧血の場合は、爪自体ももろく、割れやすいことが多いと思います。

 がん化学療法でも、爪のトラブルが発生します。爪周囲の皮膚が荒れ、爪の変形、色素沈着などが起こります。

 爪の変化を漢方医学の「気血水(きけつすい)」から考えると、「けつ」の異常と考えます。「血」が足りないために爪に異常が起きていると判断し、「血」を補う薬を処方します。当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)が代表です。

指先が白い場合

 つぎに、指先をみてください。指先を冷たい氷などで冷やすと白くなる人は、血流が悪い場合があります。小学生の頃にしもやけになったことがある方は、同じ理由です。

 指先が白くなることをレイノー現象といいます。温度や振動によって指先まで血液が流れなくなる場合、レイノー病と診断されることもあります。これは、長くたばこを吸っている人や膠原こうげん病の人に起こる病気です。

 このような末梢まっしょう 血流障害を訴える場合は、プロスタグランジン製剤やニコチン酸系剤などが使われます。指先の血流障害を、漢方医学では「血」の異常と考え、「血」の流れを良くする当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)を用いて治療をおこないます。

指先が黒い場合

 逆に、がん化学療法を受けている人は、指先が色素沈着で黒くなる手足症候群がおこることがあります。とくにカベシタビン(ゼローダ)など5-FU系抗がん剤を使っている場合、色素沈着でお悩みの方は多いと思います。

 治療方法は、こまめに尿素クリームやステロイドを塗ったり、ビタミンB6剤を内服したりするのですが、なかなか良くなりません。

 わたしは手足症候群の治療には、その人の症状に合わせて漢方薬を処方するようにしています。たとえば、色素沈着がひどく、皮膚もひび割れてしまっている場合、八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)。あかく腫れ上がり、水疱すいほう形成している場合は、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)などです。

 指先を診るだけでも、こんなにたくさんの情報を見つけることができます。爪の手入れをしながら、ご自身の健康ももう一度、よくみつめてみてはいかがでしょうか。

自分の健康を知る方法(7)胃を守るポイント

食欲の秋、みなさんは季節の食材、楽しく召し上がっていらっしゃいますか。山の幸、海の幸など、秋には味覚を刺激するたくさんの食材が八百屋さんや魚屋さんの店頭に並んでいます。昔から季節のものを食することは健康にも良いと考えられています。流通機構が整備されていなかった時代には、なかなか手に入らなかったものが、現代では容易に家族団らんの食卓に並べることができます。

 しかし、せっかくのごちそうも、胃がもたれたり、胸焼けがしたりなど、体調が悪くては、食欲がわきません。

 胃の調子を良くする方法を考えてみましょう。自分の舌を診て胃の調子を知る方法は、「苔(こけ)」「歯形」でした(2013年10月4日「自分の健康を知る方法(1)朝、舌を見る」参照)が、もしも調子が悪いとき、胃を整えるにはいくつかポイントがあります。

1.温かいものを最初に胃の中へ入れること
消化管の働きは、温度によって左右されます。冷たい食べものは胃の動きばかりでなく、腸の動きも悪くします。特に寒い時期の食事は注意が必要です。「サラダは体にいいから」と、コンビニで買った冷たいサラダを一番最初におなかの中へ入れてしまうと、一気に胃が固まって動かなくなります。消化力は落ち、胃もたれの原因につながります。

 そこで、食事をするときには、かならず温かい飲み物や食べ物を先に胃の中へ入れてあげるようにしましょう。そうすることで胃の内側に暖かい布団を敷いてあげることができますから、あとから入ってくる冷たい食べ物で胃の壁を傷めることはありません。

2.濃いものは、うすめること
塩味、甘みなど、お好きな方はどうしても濃い味つけになってしまいます。濃い味の食べものは、濃度も高く、浸透圧も高くなりがちですから、直接、胃の粘膜を刺激します。胃粘膜の炎症やびらんなどの原因になります。

 味の濃いものを食べるときは、いっしょに薄味のものと組み合わせるように心がけましょう。

3.軟らかいものでも、よく噛みましょう
硬いものをまないで飲み込んでしまうと、のどにつかえてしまいますから危険です。柔らかいものもよく噛まないといけません。どんな食べ物でも、噛まないで飲み込んでしまうと消化するために胃をいつもより働かせなければなりません。胃を必要以上に使うことで胃が疲れてしまい、胃もたれの原因にもなります。

 わたしが小さい頃、祖母から「食べ物ばかりでなく、飲み物もよく噛むように」とよく言われました。噛むことで唾液が分泌され、食物繊維が細かくなり消化を助けてくれます。噛むことの効用は消化ばかりでなく、脳へ対しても有効です。噛むことによって脳へ刺激を与え、ボケの防止にもつながります。

漢方薬には、「健胃剤」というものがあります。胃を健康にする薬です。胃の調子を整えてくれます。その代表が六君子湯(りっくんしとう)です。最近の研究では、六君子湯に含まれるソウジュツという薬草が食欲中枢に働いて、がんによる食欲低下を改善することがわかっています。また、実験では、六君子湯がマウスの食欲を増すばかりか、がんにかかったマウスの寿命も改善するという結果がでています。

 衣食住のうち、健康な体を作るには、食を整えることがもっとも重要です。健康を保つために、食材ばかりでなく、食べ方にも注意して、健康管理をされてはいかがでしょうか。


自分の健康を知る方法(6)おなかの調子

すぐにおなかをこわしてしまう人、一週間に1回しか便通がない人など、下痢や便秘で悩んでいる人は多いと思います。最近は、ヨーグルトで腸を整える人や酵素などを使っている人がいらっしゃいます。

 便通のコントロールは、体にとって大変重要です。腸の中の状態が良いと便通もスムーズで体調も良いことを経験された方は多いと思います。医学的にも腸内環境を整えることで健康を保つことができると考えられています。

 漢方薬には、腸内細菌に作用して腸内環境を調節する力があります。わたしがおこなった実験結果では、マウスに手術を行うと体力が落ち、毛並みが悪くなります。手術を受けたマウスの腸内細菌を遺伝子解析で使って調べてみると大きな変化が起こっています。しかし、漢方薬を投与しておくと、腸内細菌は手術を行っても変化せず、毛並みも悪化しません。漢方薬が腸内環境を調節してくれたお陰です。

 次のグラフは、腸内細菌の分布を示したもので、「漢方薬なし」に比べて、「漢方薬あり」のグラフの形が、通常の分布に近いことがわかると思います。

便通を整えることは、大切だと言うことがこの実験からわかります。

 便通の状態は、なかなか他人には相談できないことですから、一人で悩んでいる方が多いと思います。そんな方はぜひ、遠慮せず医師、薬剤師、看護師へご相談ください。そのときに、便利なのが、ブリストールスケールです。これは便の性状を7段階にわけたものです。

 あなたの便は、どれにあたりますか。ブリストールスケールの(1)のタイプの人は、便の回数も少ないと思います。(7)のタイプの人は回数が多く、何度もトイレに行くことになります。というのも、便の状態と回数は関係があるからです。

 腸の中に便がとどまっている時間が短いと下痢になり、時間が長くなるにつれて硬い便になります。

 食中毒や大腸炎など、腸の中の状態が不安定な場合には、軟らかい便になりやすく、腸内環境を整える必要があります。また、おなかの動きが悪く、食生活が不規則な場合には、硬い便になり緩下剤などを使う必要があります。

 漢方医学では、単に整腸剤や緩下剤を使うだけでなく、下痢の場合は腸管の運動を調節する作用を持った大建中湯(だいけんちゅうとう)や抗生物質と抗炎症作用を併せ持った半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)を使います。

 硬い便の場合は、緩下剤としてダイオウ、ボウショウ、マシニンといったものを含んだ漢方薬をはじめ、おなかを温めたり、腸内環境を変える漢方薬を使ったりします。下痢の時に使う大建中湯はおなかを温めてくれますので、便秘の時にも効果があります。

 おなかの状態を整える漢方薬は、あなたの健康も整えてくれます。四季折々、あなたの体調にあった漢方薬を選び、健康を管理することをおすすめします。

自分の健康を知る方法(5)風邪を悪化させない

日に日に涼しさが増してきます。寒い冬への備えは万全ですか。今年もインフルエンザの季節が、もうそこまで来ています。予防接種はおすみですか。

 職場や電車の中で、くしゃみをする人やせきをしている人がだんだんと増えてきます。多くの感染症に対して、マスクは非常に有効な予防方法です。

 しかし、注意しなくてはいけないのが、マスクの付け方です。どんなに性能のよいマスクを付けていても、鼻の周りや顎のあたりに隙間ができていては、ダメです。隙間からウイルスが侵入してきてしまいます。しっかりと顔にフィットさせることが重要です。

もしも風邪を引いてしまったら

 マスクで予防をしていても、風邪にかかることがあります。こんなときこそ、漢方医学の出番です。有名な「風邪には葛根湯かっこんとう」という落語では、とにかく風邪にかかったら葛根湯ばかり処方する医者の話ですが、実際にはそう簡単ではありません。

 まずは、これまでお話ししてきた舌、脈、おなかの診方を参考にして、自分の体質を見きわめる必要があります。体力がある人、すぐに疲れる人など、体質は様々ですが、漢方医学では、「虚実きょじつ」で体質をはかることができます。

 風邪に使われる漢方薬に、葛根湯、小青竜湯、麻黄附子細辛湯があります。どの薬も即効性があり、速やかに症状を改善してくれます。

 ただ、この3つの漢方薬を有効に使うためには、「風邪の初期」であることがポイントです。「ちょっと首筋がこっている」「なんだか肩が重い」「鼻がムズムズする」「のどの違和感を感じる」など、いつもとちがう自分の体調の変化をいち早く察知して治療を開始することが重要です。もしも、体調の変化を発見できたら、すぐに自分に合った漢方薬を内服します。

 このとき、かならず白湯さゆで漢方薬を飲むことを忘れないでください。3つの漢方薬はすべて体を温める作用を持っていますので、冷たい水を飲んでしまうとお腹の中から冷えてしまい、漢方薬の作用を弱めることになります。漢方薬を飲んだ後は、できる限り体を冷やさないように努めます。冷たい水で手を洗ったり、裸足で歩いたりはしないでください。

 食事も大切です。風邪の時は元気をつけなくてはと、焼き肉を食べる人がいますが、これは本当に胃腸が丈夫で体力がある人だけにしてください。風邪の時は胃腸も弱っていますので、おかゆや温かいうどんなどにネギやショウガを入れて体の芯から温まるようにされるとよいでしょう。

ペニシリンがない時代からの漢方医学

 わたしたち、人間の歴史は、感染症との闘いと言っても過言ではありません。1929年にペニシリンが発見されるまで、感染症は多くの命を奪ってきました。様々な薬が開発された現在も、世界の各地ではいまだに感染症対策が重要な施策として行われています。

 漢方医学では、ペニシリンがない時代から風邪の治療を行ってきました。今回お話しした3つの漢方薬以外にも、症状に合わせていくつもの漢方薬が準備されています。もし風邪で困ったときは、漢方医学を思い出してみてはいかがでしょうか。きっと、あなたの健康に役立つと思いますよ。

自分の健康を知る方法(4)天気で変わる、体の調子

 台風が近づいています。住まいの点検はおすみですか。危機管理としては、家族との連絡方法など、いくつか確認しておく必要があると思います。

 昔から、雨の日の前になると古傷が痛む人がいらっしゃいます。お年寄りからは「神経痛が悪くなる」と言われることもあります。これはどうしてでしょうか。

 天気と健康の関係については、いろいろな学説があります。昔、「気圧と急性虫垂炎は、関係がある」という論文をみたことがあります。これによると低気圧になると免疫系に影響を与えるために急性虫垂炎が起こりやすくなるそうです。そこでわたしは自分が手術をした数百人のデータを手術日の前日と当日の天気と照らし合わせてみましたが、気圧との関係を見つけることはできませんでした。

 しかし、私のクリニックへお見えになる患者さんたちを診せていただいていると、やはり天気と体の調子は何か関係がありそうです。

 例えば、気圧が下がる時期になると頭痛がする人。雨の日前後は、月経痛が重くなる人。体のむくみがひどくなるのが、決まって気候の不安定な時の人、などです。

 漢方医学では、この気圧による変化を「水毒(すいどく)」と考えます。天気によって体調が変化する人は、体がむくみやすかったり、めまいや頭痛などの症状を訴える人が多くいらっしゃいます。また、関節の痛みや体の不調が天候に左右されるなど、天気によって体の調子が変わりやすい場合、「水毒」への配慮が必要となります。

 「水毒」によく用いられる漢方薬は、五苓散(ごれいさん)です。五苓散には、水のバランスに作用するアクアポリンを阻害して水の移動を抑えることにより、「水」の巡りを改善する作用があることがわかっています。

 天気によって体調が崩れる人は、「水」に気をつけて、体調管理をされるとよいでしょう。また、「水毒」をさらに悪化させる原因として、「寒さ」が関係することがあります。とくにこの時期は、体を冷やさないように注意してください。

自分の健康を知る方法(3)おなかは、すべてを知っている

寒くなると、おなかが痛くなることがあります。おなかが冷えてしまったために、痛みが起こったのでしょう。こんなときは手のひらをへそに当てて温めると痛みが和らぎます。これこそが、医学で行われる最も大切な「手当てあて」という治療方法です。

 

 おなかを大切にすることは、健康で生活するための重要なポイントになります。おなかが発信するサインに耳を傾けることで、自分の体調についていろいろ知ることができます。

 実は漢方医学では、おなかの所見からいろいろな情報をえて、治療の糸口にします。以前にもお話ししましたが、東アジアの伝統医学で、おなかの診察を行うのは日本だけです。中国の伝統医学である中医学や韓国の韓医学では、おなかを診察する方法はありません。

 この日本独特の診察方法である「腹診ふくしん」は、西洋医学で行う診察方法とは診るポイントがことなります。

 一つ目は、「腹力ふくりょく 」です。おなかを観察して、力士のように力強い場合は、「腹力がある」といいます。柳のようにやせ細った人のおなかは、へこんでしまっています。この場合は「腹力がない」といいます。これによって、その人の「虚実きょじつ」を判断します。
  二つ目は、「腹直筋のはり」です。みぞおちからへそにかけて、腹直筋がはっている場合は、肉体的あるいは精神的なストレスがあると考えます。

 これを理解するには、あなたが「強い風に向かって歩くとき」を思い出すといいでしょう。台風の時のように強い風を前面にうけながら前進するとき、風による強い力をはねのけるために、体中の筋肉に力が入ります。このとき、腹直筋は張っています。

 今度は、「風」を「ストレス」に置きかえてみます。あなたにストレスが加わっている場合は、知らないうちに前かがみになり、体中の筋肉に力が入り、腹直筋もはってしまいます。つまり、「腹直筋のはり」が現れるわけです。

 このようにいろいろな情報を得ることができる腹診は、毎日の生活をする上で、自分自身の体調管理に役立てることができる知恵となります。朝起きたとき、布団の中でゆっくりとおなかを触ってみてください。自分の体をいたわる気持ちでおなか全体を触ってあげることで、気づいていなかった自分の体調を見つけることができますよ。

自分の健康を知る方法(2)脈で体質を知る

 診療所や病院では、よく血圧を測ります。最近では、自動血圧計になっている施設が多いので、直接、脈を触れて脈拍数を測ることは少なくなっていると思います。

 わたしも水銀式血圧計をつかっていた頃は、患者さんの腕にマンシェットを巻き、聴診器で動脈の拍動を聞きながら血圧を測定していました。と同時に、脈拍数も、手首にある橈骨(とうこつ)動脈(親指側にある動脈)の拍動を触れながら1分間の脈拍数を数えていました。

 医学が進歩して、血液検査や画像診断(超音波検査、CT検査など)でいろいろなことがわかるようになると、医師や看護師が直接、患者さんの体に触れる機会が減ってきました。ときには、電子カルテの画面ばかりを見て、患者さんの顔すら見ない場合もあると聞いています。なんだか寂しさを感じますね。

 さて、話がそれてしまいましたが、今回の「自分の健康を知る方法」は、脈で自分の体質を見分ける方法です。

 体質は一人ひとり違います。たとえば、風邪をよく引く人、すぐにおなかをこわす人など、どちらかというと病気になりやすい体質の人がいます。一方で、夏ばてをしない人、重労働に耐えられる人など、病気にかかりにくい体質の人もいます。

 自分の体質を知ることで、日頃の生活の仕方が変わってきます。風邪の季節には、早めに予防を心がけるようになったり、夏に冷たいものを飲み過ぎないように注意したり、などです。

 漢方医学では、このことを「虚実きょじつ」という言葉で表現します。病気になりやすい体質の人には、漢方医学で「虚」と診断される人が多く、なりにくい体質の人は、「実」の人が多いようです。

 では、自分の脈を診てみましょう。手首の親指側に拍動する動脈が触れるはずです。このときに、脈を診るコツは、


(1)深呼吸をして気持ちを落ち着けてからおこなう

(2)ゆっくり時間をかけて脈にふれる


 ――のふたつです。どうしても自分の脈が見つからない人は、3本の指でさがすといいでしょ う。


すぐに脈が見つかる人は、「実の脈」と診断します。動脈の血管の輪郭がはっきりとわかり、強く押さえても脈が消えることがなく、逆に押し戻されてしまいます。それは、ゴム風船のように弾力があり力強く感じられます。
 なかなか脈が見つからない人は、漢方医学では「虚の脈」と診断します。「虚の脈」の人は、動脈の血管が触れにくく、強く押さえると脈が消えてしまいます。それはまるで水に浮いている葉を上から触れているように、少し力を加えてしまうとなくなってしまう感じです。

 なかなか脈が見つからない人は、漢方医学では「虚の脈」と診断します。「虚の脈」の人は、動脈の血管が触れにくく、強く押さえると脈が消えてしまいます。それはまるで水に浮いている葉を上から触れているように、少し力を加えてしまうとなくなってしまう感じです。

 すぐに脈が見つかる人は、「実の脈」と診断します。動脈の血管の輪郭がはっきりとわかり、強く押さえても脈が消えることがなく、逆に押し戻されてしまいます。それは、ゴム風船のように弾力があり力強く感じられます。
脈を診ることで、自分の体質を知り、日頃から体調管理をすることをおすすめします。「風邪は万病の元」と言います。「虚の脈」の方は特に、これからの季節、風邪を引かないように健康管理することが大切です。

自分の健康を知る方法(1)朝、舌を見る

 朝起きて、歯磨きをしながらボーッと自分の顔をながめていませんか。昨日、会社でやり残した仕事や、今日一日の予定は考えたりしている人も多いと思います。なかには、前日、少し飲み過ぎと体調が悪い人もおいででしょう。

 そんな朝のほんのちょっとした時間を活用して、自分の健康を知る方法をお教えします。それは、「舌診ぜつしん」です。

 みなさん、まずは自分の舌を見てください。何色をしていますか。紅色、赤紫色、暗い赤色など様々だと思います。また、中には白くなっている人もいると思います。

 漢方医学では、舌からいろいろな情報を集めます。その中で、日頃の体調管理に役立つ方法としては、(1)舌の表面の状態(2)舌のまわりの状態――のふたつを観察すると良いと思います。

(1)舌の表面の状態

 

 

 舌の表面はツルツルしていたり、ザラザラしていたりします。注目するべき点は、表面にできる「こけ」です。こけは、舌の表面の細胞の変化を見ています。口腔

内細菌の繁殖に伴い、変化するとも言われています。いくつかの研究の結果からは、胃の状態と相関することもわかっています。

 そこで、朝起きたら、歯を磨く前に自分の舌を観察してください。こけはありませんか。もし、こけがある場合は、胃炎などを起こしている場合がありますので、朝食をよくかんで食べたり、その日一日は暴飲暴食を控えたりといった体調管理をすると良いと思います。

(2)舌のまわりの状態

 舌は、口の中で歯に囲まれています。寝ている間は、上の前歯の後ろあたりにあるのが普通だと言われています。ここで観察するのは、舌のまわりの状態です。舌の両脇の部分に、「歯のあと」がついていませんか。まるで指で押したようにあとがついている場合があります。

 この歯のあとは、漢方医学ではふたつの意味があるそうです。ひとつは胃腸が疲れている場合、もうひとつはむくみがある場合です。

 二日酔いで朝、胃がもたれ、顔がむくんでいるときなどは、歯のあとがはっきりとあらわれます。こんなときは反省をしてお酒を控える必要があります。

 


 自分の健康を知る方法を学ぶことで、毎日の生活が元気に過ごすことができるようになります。自己管理を行えば病気知らずでいられると思います。漢方医学を生活に取り入れることで、楽しい毎日をお過ごしください。