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漢方医が考えたノロウイルス対策

ノロウイルスが世界中で騒ぎになっています。以前、ブログでもとりあげた「牡蠣かき」も原因のひとつと言われています。集団感染するのは、感染した人から出た便や吐しゃ物に含まれるウイルスが、周囲の人の手から手に広がったり、汚染された場所を掃除したときに空気中に飛散したりすることが原因のようです。

 ノロウイルスに感染すると、下痢、はき気、嘔吐おうと、腹痛、発熱などの症状がおこります。ひどい場合には、脱水から、命に関わることもあるこわい病気です。

 もし、ノロウイルスに感染しても、だいたい3日で症状がおちつきます。しかし、便の中には1週間程度、ウイルスが排出されますので注意が必要です。感染した人の便や吐しゃ物を扱う場合は、マスクと手袋を忘れずにするようにしてください。

 ノロウイルスから身を守るために最も大切なのは、うがいと手洗いです。日々の生活の中で、マスクをして自己防衛することや、常に手洗いを心がけるなど、家族全員で取り組む必要があります。

おなかから予防しましょう

 漢方医学でノロウイルス対策を考えてみましょう。

 漢方医学では、「未病みびょう」という考え方があります。これは、現代風に言うと予防医学のことです。

 漢方医学による対策としては、胃腸の状態を整えることになります。口から感染するノロウイルスを胃腸から体内へ簡単に侵入させないように、胃腸の状態を、漢方薬を使って調整しておくことです。

 このとき使う漢方薬は、人参湯(にんじんとう)類です。人参湯は、日頃から体力がなく、風邪を引きやすい人で、胃腸の状態が悪くなったときや体調管理のために使います。

 六君子湯(りっくんしとう)は、食欲に関係したグレリンという消化管ホルモンを増やす作用があり、がん患者さんの治療中にも使われています。

 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、免疫を高める作用があるという報告が数多くされている漢方薬のひとつです。

 まだまだ、寒い日が続きます。みなさん、風邪やノロウイルスに備えるには、うがいや手洗いばかりでなく、漢方医学で体の中から予防することも考えてみてはいかがでしょうか。

寒さでおなかにトラブル? 冬野菜が一番

 冬の野菜といえば、根菜類が中心になります。レンコン、大根、白菜、ネギなどが代表です。冬は、おなかが冷えて腸の動きが悪くなるため、便秘気味になる季節でもあります。そんなときに、食物繊維が豊富な冬野菜は、おなかの調節には最適です。また、ネギは、体を温める作用がありますので、寒い時期には大切な野菜です。

 そしてこの時期、下半身が冷えて、トイレが近くなる人も多いと思います。厚着をしているので、トイレに行くのも一苦労です。尿の回数が増えるのに、中には、尿が出きらないような残尿感があったり、尿道痛が出たりする人もいます。

 このような症状が続くときに、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)を使います。

 清心蓮子飲に含まれるレンコンの種を蓮肉れんにくとよびます。正月のおせち料理には、「先のことが見通せるようになりますように」との願いが込められた一品として、レンコンが必ず入れられていますが、レンコンの葉、茎、種なども漢方薬の材料に使われています。

 一方、体が冷えて尿の出が悪くなるときに使う漢方薬に、八味地黄丸(はちみじおうがん)があります。人は皆、年を重ねると寒さが体にこたえるようになってきます。夜の尿の回数が増える夜間頻尿、いきんでもなかなか尿がでない遷延性排尿やポトポトとしか尿が出ず勢いがなくなるなどの症状があるときにこの八味地黄丸を使います。

 女性で下半身が冷えて、ぼうこう炎を繰り返す場合には、猪苓湯(ちょれいとう)を使います。この猪苓湯は、残尿感や排尿痛など、急な症状にもよく効きます。
大寒、1年で一番寒い季節には、服を何枚も重ね着してもうまく温度調節ができません。やはり、体の中から温める必要があります。そのためには、口から入れる食べ物や飲み物に注意して、温かいものから体に入れるように心がけることが大切です。家族で冬野菜をたくさん使った鍋料理を楽しく食べて、健康管理をしていきましょう。

冬の牡蠣、ファストフード多い方に

ソースかしょうゆか

 冬の寒い時期、牡蠣かきが食べ頃になります。三陸や広島など、日本は海に囲まれていますので、全国に特産地があります。冬ばかりでなく、夏には能登の岩牡蠣もありますね。

 先日、牡蠣フライが大好物の友人から、質問を受けました。彼が行くレストランでは、牡蠣フライには、ソースが添えられるのだそうです。しかし、その友人は、しょうゆをかけてたべるのが当たり前だったとのこと。そこで私への質問は、牡蠣フライにソースをかけた方がいいのか、しょうゆの方がいいのか、医学的にどう考えるのか、というのです。

 わたしは大変困ってしまいました。

 お皿の脇に添えてあるレモンは、レモンに含まれるクエン酸に殺菌作用があるため、食中毒を予防すると説明はできるのですが、牡蠣フライにしょうゆとソースの組み合わせの効能までは、残念ながら医学的に説明できませんでした。

不足しがちな亜鉛たっぷり

 牡蠣には、亜鉛が豊富に含まれています。この亜鉛不足が、味覚障害の原因になることはみなさんもよくご存じだと思います。ファストフードが多い方は、栄養バランスがかたよってしまい、亜鉛不足になりがちです。和食の食材では、煮干しやごまなどに亜鉛は含まれています。毎日、少しずつ亜鉛をとるように心がける必要があります。

 がん化学療法を受けている方が、味覚障害を訴えることはよくあります。この場合は、治療として亜鉛を補充します。ただ、亜鉛不足以外にも治療による神経障害や口腔こうくう粘膜障害による味覚障害もありますので、注意が必要です。

 牡蠣の恩恵は、亜鉛だけではありません。牡蠣の殻は「ぼれい」と呼ばれ、こまかく砕いて漢方薬の原料にも使われています。使われている主な漢方薬は次の通りです。

安中散(あんちゅうさん)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

 日本は四季折々、様々な食材を楽しむことができる国です。その時々の旬を楽しむには、八百屋さんやお魚屋さんの知恵を借りるといいでしょう。安くて美味おいしい食材で楽しい食卓を家族と一緒に過ごすことが健康にとって、一番の栄養となります。その時期にしか食べられないものを季節の恵みと感謝して、毎日を過ごしましょう。

みかんは皮ごと食べよう

寒中お見舞い申し上げます。今年は寒波の影響で、寒い日が続きます。みなさん、生姜しょうがを使った寒さ対策は実践されていますか。

 さて、今年の第一回は、「みかん」の話です。

 「犬は外を駆け回り、猫はこたつで丸くなる」。みなさんも、こたつでテレビを見ながらみかんを食べた思い出があると思います。実は、みかんにはすごい力があるんです。

 この季節、八百屋さんの店先には、いろいろな種類のみかんが並んでいます。どのみかんにするか、と考えてしまうこともあると思いますが、大切なのは、温州うんしゅうみかんを選ぶことです。というのも、海外から輸入されるオレンジやレモンとちがい、日本で作られている温州みかんにしか含まれていない大切な成分があるからです。

 漢方薬では、温州みかんの皮も使います。「陳皮ちんぴ」は、温州みかんの皮を乾燥させたものです。この温州みかんの皮には、発がん抑制作用や血流改善作用などの力を持つというヘスペリジンが含まれています。このヘスペリジンは、オレンジやレモンには、ほとんど含まれていません。せっかく買うのでしたら、ヘスペリジンを多く含んだ温州みかんがおすすめです。

 この陳皮が含まれている六君子湯(りっくんしとう)は、がん治療の現場で抗がん剤による食欲不振の治療に活用されています。

 夏みかんやダイダイの未熟果実も、漢方薬として使われています。この未熟果実は、「枳実きじつ」と呼ばれています。主成分はリモネンで、アロマセラピーでは、リラックス効果があるとされています。

 この枳実は、精神的ストレスを和らげる効果がある半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)に含まれています。
漢方医学を活用して、自然の力で体を健康にすることが大切です。そのためには、みかんを食べるときは甘い実よりも、皮の部分が大切なようです。そこで、わたしは皮をよく洗って、皮ごとみかんを食べるようにしています。実の甘さと皮の酸っぱさが合わさり、意外とおいしくいただけます。そのうえ、みかんの力をすべて使うことができるからです。ぜひ、試してみてください。

ジンジャーティーで体を温めましょう

 寒い冬の季節、みなさんはどうやって体を温めていますか。

 最近は、保温効果に優れた下着が登場し、昔に比べると寒さ対策の選択肢が増えてきました。しかし、体を温めるには、体の中から温めることがポイントです。

 体の中から温めるためには、生姜しょうがをうまく使うといいでしょう。主婦の皆さんは、生姜を調味料として活用されていると思いますが、生姜は漢方薬に薬草としてよく用いられます。

 漢方薬で用いられるものには、生の生姜と、蒸して干した乾姜(かんきょう)の2種類があります。

 生姜は、すり下ろして薬味に用いたり、酢漬けにしてお寿司すしのガリとして食したりします。生のままですと、毒消しや胃の働きを助ける効果があります。主成分は、ジンゲロールです。風邪の時に使われる桂枝湯(けいしとう)に用いられます。

 乾姜は、乾燥させて保存されていた生姜など、ジンジャーティーに使われています。主成分はショウガオールです。腸閉塞の時に使われる大建中湯(だいけんちゅうとう)に用いられます。
 

年末に向けて漢方薬が必需品です

これから年末に向けて、忘年会、クリスマスパーティー、仕事納めとイベントが続く人が多いと思います。こんな時こそ、漢方薬の出番です。

 食べ過ぎ、飲み過ぎ、仕事のし過ぎと、何かと体に負担がかかります。体の不調はできる限り早く整えた方がいいでしょう。

食べ過ぎには

 周りの雰囲気で、つい食べ過ぎる場合もあります。いつもの量以上に食べてしまい、胃もたれや胃の痛みを感じる場合があります。

 胃のもたれ、胃の痛みには、安中散(あんちゅうさん)がよく効きます。

 宴会などで供される食事は、フライや天ぷらなどの揚げ物が多いと思います。油ものは、胃の弱い人にとっては、胃もたれの原因になったり、消化不良を起こしたりすることが多い食材です。

 消化不良には、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)が良いでしょう。

お酒には

 冬の宴会には、お酒がつきものです。日本人には、全くお酒が飲めない下戸げこの人が約5%いるといわれています。これは生まれつきアルコールを分解することができないからです。

 お酒を飲んで、顔が赤くなる人には、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)が特効薬です。お酒を飲む前に服用しておくと、悪酔いしません。

 お酒を飲んだ翌日、よく顔や手足がむくむ人には、五苓散(ごれいさん)がいいと思います。

疲れには

 年末で仕事に追われ、体の疲れがピークに達している人も多いでしょう。昼間、何とか年内に仕上げないといけない仕事を抱え、夜は宴会続きというサラリーマンの皆さんには、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が頼りになります。

 そして、この寒い時期、風邪を引かないようにたくさん服を着込んで営業に走り回っている方、会社では机に向かってパソコンにかじりついているため、肩こりがひどくなりがちです。こんな人には葛根湯(かっこんとう)です。葛根湯は風邪の時にも用いますから、この時期、風邪の予防にも役立ちます。
今年もあと10日余りになりました。1年の最後に体調を崩しては、年末年始、のんびり休むこともできません。どうか、今だからこそ、漢方薬を使って体調管理をしてみてください。良い年を迎えるために、ぜひ。

コーヒーにも合うシナモン 実は薬草です

 子供の頃、知り合いの方がお土産に持ってきてくれる京都の銘菓には、いつもニッキが使われていて、口の中に入れると独特の香りが鼻から抜けていきました。このお土産を兄弟で心待ちにしていたことを覚えています。このお菓子に使われていたのが、シナモンでした。

 最近では、コーヒーショップにシナモンのパウダーが置かれているので、ご存じの方もおいでだと思いますが、これが薬草の一種だということは、あまり知られていません。

 シナモンは、「桂皮けいひ」「桂枝けいし 」と呼ばれています。シナモンの木は、暖かい土地で発育する樹木で、この木の皮や枝を薬草として使います。

 アロマテラピーでもシナモンのオイルを使うそうです。

 シナモンは、様々な漢方薬に含まれています。風邪薬で使う葛根湯(かっこんとう)、過敏性腸症候群に使う桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、排尿障害に使う五苓散(ごれいさん)などです。


 シナモンの使い方は、3つに分けられます。

 一つ目は、上半身の症状に使います。その代表が、風邪の初期症状に用いられる桂枝湯(けいしとう)です。桂枝湯は、漢方薬の基本となる薬と言われています。皮膚にゾクゾクと寒気が走ったり、熱が出始めたりしたときに使われる薬です。冬の寒い時期など、ちょっとした体調の変化があったときにはシナモンをうまく使うと風邪の予防につながります。

 二つ目は、お腹なか の症状に使います。消化管の運動が低下してもたれたり、お腹が張ったりしたときに使います。過敏性腸症候群のように下痢をしたり便秘をしたりと症状が変化する場合にも、同じ桂枝加芍薬湯で治療を行います。

 三つ目は、下腹部の症状に使います。女性の月経に関係する症状に、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などのシナモンを含んだ漢方薬を用います。
このようにシナモンは、わたしたちの体調管理になくてはならない薬草の一つです。これから冬本番、みなさんも、積極的にコーヒーへシナモンパウダーを入れて、健康管理をしてみてはいかがですか。

自分の健康を知る方法(10)肩こりに2つの原因

 師走、今年もあとわずかになりました。みなさんは、仕事場や家の片付けを始めていますか。わたしも少しずつですが、自分の仕事の整理をするように心がけています。でも、たまった書類を見るだけで、肩がこってしまい、やる気が出ないこともありますね。

 若い方でも肩のこりを訴える方が増えています。それはパソコンが普及してから、日常生活の過ごし方が変わったこととも関係があるようです。じっと、パソコンの画面とにらめっこしていると、体のどこかに力が入り、目が疲れたり、肩がこったりしてきます。最近では、スマホを電車の中で変な体勢で操作したり、歩きながら画面を見たりと、体の使い方もかわったようです。

 昔は、肩こりは「運動不足」の一言で片付けられていました。しかし、最近では、肩こりの原因は、そんなに単純ではないようです。

目の疲れから

 まずは、目の疲れからくる肩こりです。眼鏡を使っている方に多く、パソコンなどを長時間使っていると目の周囲の筋肉が緊張したままの状態となり、場合によっては頭痛になる場合もあります。この肩こりは僧帽筋(そうぼうきん)に一致して広がっていきます。僧帽筋というのはお坊さんの頭巾のような形をした筋肉です。目の疲れから頭痛、肩こりとなる症状には、「葛根湯(かっこんとう)」を用います。

冷えから

 つぎは、冷えから来る肩こりです。寒い時期になると増えますが、夏の冷房の季節にも多い肩こりです。首や肩を冷やさないように心がけることが大切です。この肩こりは首から両腕にかけて広がることが多く、「桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)」が用いられます。

やはり運動は大切

 どちらの肩こりにも、運動が大切なことは言うまでもありません。目の疲れからくる肩こりの場合は、こめかみをマッサージしたり、頭皮をほぐしたりするといいでしょう。冷えから来る肩こりの場合は、首と肩の運動をすると効果的です。

 年末まであと数週間、仕事もプライベートも忙しくなってきます。自分の体の状態を観察する目を持って、体調管理に努めてください。もし、体の調子がうまく整わなかった場合は、医師、薬剤師、看護師へ遠慮なく相談されてはいかがでしょうか。

自分の健康を知る方法(9)「元気」を作る気力、体力、消化力

木枯らしが吹き、寒さが一段と厳しくなってきた今日この頃ですが、みなさんは元気に過ごされておいでですか。

 「元気」のバロメーターは、一人ひとり、異なると思います。朝起きたときに、気分よいときは元気だと感じたり、食べ物がおいしく感じるときは胃腸が元気な状態と考えたりする人もいるでしょう。

 この「元気」という目に見えないものを漢方医学では「気(き)」として考えます。


 「気」には、3つの要素があります。

 1つめは、精神的なものをいいます。これを「空気」のようなものと考えれば目には見えませんが、「気分」「気合」「気持ち」「雰囲気」など顔の表情に表れるものと考えれば、目にも見えますね。「気分が悪い、気が滅入めいる、気が気じゃない、気のせい、気持ちが落ち込む、気力がない、気にしすぎる」といった言葉を皆さんもよく使うと思います。心の葛藤など精神的ストレスは「気」の異常と考えます。

 2つめは、体力的なものをいいます。「最近、どうも元気がない」「週末になると元気がなくなる」「よく友人から元気が足りないと言われる」など、元気は、目に見えるような、見えないような、不思議な存在です。「元気がない、疲労困ぱい、すぐに足が疲れる、目が疲れる、活動性が落ちる、活気がない、力が出ない」など肉体的ストレスは、体力的な「気」の異常と考えます。

 3つめは、消化力をいいます。胃腸の調子については自覚しやすいのですが、他人にはわからないつらさがあります。「胃が疲れている、胃がもたれる、胃が痛む、ゲップが出る、すぐに下痢をする、消化不良、お腹なかをこわす、おならが出る」などは、消化力の「気」の異常と考えます。

心も体も疲れた時は

 このような「気」の異常の治療には、さまざまな対応が必要になります。西洋医学では、体力が低下していたら栄養療法やリハビリテーション、精神的に落ち込んでいたら向精神薬などによる心療内科での治療やカウンセリング、消化器疾患ならば消化器内科と、いろいろな診療科を訪ねる必要があります。

 しかし、漢方医学ならば、全部まとめて診断から治療が行えます。元気がないときは食欲もわきません。精神的ストレスが多いときは、食べ物の味がわからなかったり、消化不良を起こしたりします。症状はひとつではありません。こんなときこそ漢方医学の出番です。

 元気がなく精神的にも肉体的にも疲れている場合は、「気虚(ききょ)」と考えます。気虚には、人参湯(にんじんとう)を中心とした漢方薬を用います。四君子湯(しくんしとう)、六君子湯(りっくんしとう)といった漢方薬も人参湯の仲間です。

 「気虚」を治すには、胃腸を整えて消化吸収力を増し、エネルギーを増すことで、元気になっていきます。これが漢方医学の治し方です。

 たくさんの診療科を受診されている方、ぜひ一度、漢方医学の診断を受けてみてはいかがですか。



自分の健康を知る方法(8)「手」は情報満載

人生に思い悩んで、易者さんに手相をみてもらった経験、ありませんか。手相を見て人生を語るのは、易者ですが、わたしたち医療従事者は、手を診て健康の状態をいろいろと知ることができます。

 よく女性は、ネイルサロンへ通い、爪先の手入れをされます。爪だけでなく、指先のケアにも心がけている人もいらっしゃいます。しかし、男性はあまり指先にまで気を配っていませんね。しかし、手からは、大変多くの情報を得ることができます。手を診ると体の状態を推察することができます。

爪でわかる胸の病気

 爪を観察してみましょう。指の爪は1日に0.8~1.2mm成長します。爪は、よくカルシウムでできているとまちがわれていますが、髪の毛と同じケラチン組織でできています。

 変形した爪は、数週間前~数か月前、爪の根部に何らかの刺激が加わったことによって起こると考えられています。たとえば、体調が悪かったり、栄養状態が不良だったりした時期や、抗生物質などたくさん薬剤を服用した時期に、爪の変形がはじまることがあります。爪の変化は体調の変化と、よく相関します。

 典型的な爪の変形の仕方があります。慢性的な呼吸器疾患や心臓病では、爪が変形して、丸みを帯びた三味線の「バチ状」にふくらみます。この「バチ状爪」の人の中に、肺がんを患っている人もいますので、注意が必要です。

 「バチ状爪」とは逆に、へこんでいる爪の人がいます。これは貧血によることが多いと思います。貧血の場合は、爪自体ももろく、割れやすいことが多いと思います。

 がん化学療法でも、爪のトラブルが発生します。爪周囲の皮膚が荒れ、爪の変形、色素沈着などが起こります。

 爪の変化を漢方医学の「気血水(きけつすい)」から考えると、「血けつ」の異常と考えます。「血」が足りないために爪に異常が起きていると判断し、「血」を補う薬を処方します。当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)が代表です。

指先が白い場合

 つぎに、指先をみてください。指先を冷たい氷などで冷やすと白くなる人は、血流が悪い場合があります。小学生の頃にしもやけになったことがある方は、同じ理由です。

 指先が白くなることをレイノー現象といいます。温度や振動によって指先まで血液が流れなくなる場合、レイノー病と診断されることもあります。これは、長くたばこを吸っている人や膠原こうげん病の人に起こる病気です。

 このような末梢まっしょう 血流障害を訴える場合は、プロスタグランジン製剤やニコチン酸系剤などが使われます。指先の血流障害を、漢方医学では「血」の異常と考え、「血」の流れを良くする当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)を用いて治療をおこないます。

指先が黒い場合

 逆に、がん化学療法を受けている人は、指先が色素沈着で黒くなる手足症候群がおこることがあります。とくにカベシタビン(ゼローダ)など5-FU系抗がん剤を使っている場合、色素沈着でお悩みの方は多いと思います。

 治療方法は、こまめに尿素クリームやステロイドを塗ったり、ビタミンB6剤を内服したりするのですが、なかなか良くなりません。

 わたしは手足症候群の治療には、その人の症状に合わせて漢方薬を処方するようにしています。たとえば、色素沈着がひどく、皮膚もひび割れてしまっている場合、八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)。あかく腫れ上がり、水疱すいほう形成している場合は、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)などです。

 指先を診るだけでも、こんなにたくさんの情報を見つけることができます。爪の手入れをしながら、ご自身の健康ももう一度、よくみつめてみてはいかがでしょうか。