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がん医療と漢方

私たち2人に1人ががんにかかり、4人に1人ががんで亡くなるという時代。がん治療の技術は日進月歩で、さまざまな治療法で多くの人たちが命を救われています。一方で、がんと共に生きる「がんサバイバー」の人たちも増えています。
がんと漢方というと、「漢方薬でがん細胞をやっつける、すなわち漢方薬でがんを治す」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際はがんやがんの治療で起こってくる、多くのココロとカラダのトラブルを緩和したり、がんサバイバーの元気を助けたり、いわゆる名アシスト“薬(役?)”として活躍している場合が多いのです。
そこで、元フジテレビアナウンサーでアロマセラピストの大橋マキさんが、がん医療における漢方の役割について漢方治療に詳しい外科医、今津嘉宏先生に話をうかがってきました。

クリニックのがんの患者さんは6割〜7割

大橋マキ(以下、大橋):クリニックは漢方腫瘍内科、がん漢方、漢方内科、消化器内科などさまざまな診療科を標榜していらして、さまざまな患者さんを診ていらっしゃるんですね。がんを患っている患者さんはどのくらいいらっしゃいますか?

今津先生:しっかりと統計を取っていませんが、全体の6割〜7割くらいはがん患者さんですね。インターネットやテレビの番組を見て来られる方が全体の3分の1、病院などから紹介される方が3分の1、残りは、もともと風邪などで当院にかかっていて、そのご家族ががんになったから診てもらいたいといって来られるケースなどです。

大橋:「がん漢方」というと、例えば、「漢方薬でがんを治す」とか、「これを飲むとがんが消える」とか、必ずしも正確ではない情報を信じている方たちもいるかと思いますが・・・。

今津先生:確かに、そういう方もいらっしゃいます。ただ、当院で診ている患者さんのほとんどの方は、漢方に対して正しく理解されているようです。もちろん、科学的な根拠のない情報を信じている患者さんには、事前に漢方薬でできることとできないこと、当院で行っている治療のことなどについて、具体的にお話しさせていただきます。「あなたはこういう状態なので、今は手術や抗がん剤、放射線治療など、西洋医学的な治療を選んだほうがいいですね」と説得することもあります。

大橋:漢方で診ている先生がそういう話をされると、患者さんは驚きますか?

今津先生:いろいろですね。なかには、これまで西洋医学的な治療を選ばなかった理由を、ご自身の言葉でしっかり話される患者さんもいます。だから私も、その理由(治療を受けない理由)に納得したら、患者さんの望む治療をします。

手術で治らない病気が漢方で治るなら……

大橋:ところで、今津先生は外科医、専門医として手術も多く経験されています。がん治療は先生がおっしゃるように、手術や抗がん剤による薬物治療、放射線治療など西洋医学的なアプローチが主ですが、そこにあえて漢方薬を使った治療をしていきたいと思われたのはなぜなのでしょう。

今津先生:漢方治療に行き着くまでは、いくつかの段階がありました。

大橋:最終的な決め手は何だったんでしょう。

今津先生:それは意外とシンプルでしたね。手術後の合併症に、腸閉塞(イレウス)があります。おなかを開ける手術をすると、その後、大腸の動きが悪くなり、食べものや消化液など内容物がうまく流れなくなってしまうのです。腸閉塞は外科医がおなかを開けたことが原因の場合もありますが、治療をするにはまたおなかを開けないといけません。

大橋:そうするとまた腸閉塞が起こってしまう・・・悪循環ですね。

今津先生:そんなとき、ある医師から腸閉塞に伴う腹部膨満感に漢方薬が有効ということを聞いて、さっそく使ってみたんです。
そうしたら、腹部膨満感と腸の動きが改善され、漢方に興味を持つ大きなきっかけになりました。

漢方薬ほど外科医に向いている薬はない

大橋:でも先生、漢方には西洋医学と違った独自の理論があって、体系的に学ばないとむずかしいと聞いたことがあります。

今津先生:私が外科医だったことが幸いしているかもしれないですね。“手術で治らないものに漢方薬が有効なら使えばいいじゃないか”という発想でしたから(笑)。摩訶不思議な薬だなぁと思い、それから慶應義塾大学医学部に週1回通って、勉強を始めました。

大橋:大学では、漢方のどのようなことを学んでいらっしゃったのですか?

今津先生:私の専門は食道がんなのですが、当時はまだ抗がん剤治療も、放射線治療も進歩していなくて、手術一本だったんです。難治がんとされていて、助からない方が多く、そこに漢方治療が使える道はないかと考えたんです。そこで気付いたのは、外科と漢方は相性がいいということです。

大橋:え、外科と漢方?

今津先生:手術の際、患者さんのおなかの中を実際に触わるので、臓器やがんの重さや硬さ、血管やリンパがどう走っているかも目で見て分かりますが、大学で学んだ漢方の理論には、外科医として経験的に裏打ちするようなことばかり書かれていたんですね。

大橋:カラダの中で起こっていることと、漢方の理論が先生の頭の中では上手にリンクできたということですか?

今津先生:そうです。例えば、むくみがあった場合、漢方の考え方だと「水毒(すいどく)」と言いますが、実際、むくみがある部分の組織がどういう状態になっているかが経験から分かります。だから、この状態は確かに水毒で、この漢方薬が有効だろうって理解できるんです。漢方薬ほど外科医に向いている薬はないと思います。

悪い循環をいい循環へ。漢方で後押しを

大橋:具体的に、がん治療で漢方にできることには何がありますか?

今津先生:いろいろなことができます。また、漢方薬ではなく“漢方医学”の考え方を使うこともあります。初診で漢方薬を処方する患者さんは、3分の2ぐらいです。

大橋:漢方医学の考え方、ですか?

今津先生:そうです。残念ながら、今のがん治療って正直言って苦しさが伴うことの方が多い。治療期間も長くなるので、ココロもカラダも疲れてしまう。それは患者さんだけでなく、看護する側の家族もそうです。当院では患者さんが何を不安に思い、どうしていきたいか、どこが、何がつらいのかを一つずつ聞いていきます。そこから漢方治療が始まるんです。

大橋:少しずつ、患者さんのココロとカラダを解きほぐしているんですね。それはとても時間がかかるでしょう。

今津先生:初診では30分かけて話を聞きます。場合によっては同席されたご家族の治療をすることもあります。24時間365日とまではいかないけれど、患者さんをずっと支えているのは医療者ではなく、家族です。だから、家族のココロとカラダの健康がとても大事なんです。その上で、衣・食・住においての心がけを一緒に考えていきます。話をするなかで、患者さん自身が生活の間違いに気付いて変えていくことも多いです。

大橋:具体的にどういうことがありますか?

今津先生:例えば食事ですが、インターネットなどには患者さんのがんの食事について、さまざまな情報が錯綜しています。そこに捕らわれてしまう方もいて、間違った理解で食事を続けていることもあります。ですが、がん治療で大切なのは体力をつけること。元気になって体力がつけば、治療の幅が広がりますし、抗がん剤の副作用を軽減させることもできるかもしれません。治癒率も上がり、再発も防げます。

大橋:漢方治療の考え方を取り入れることで、治療のいい循環が生まれていくんですね。

今津先生:自転車のペダルをこぎ出す、そのタイミングでちょっとだけ後押しをする。それでうまく回るようになります。そのお手伝いをしているという感じです。

患者さん+家族+医師によるチーム医療

大橋:“患者さんの気付き。”それがとても大切な気がしてきました。

今津先生:とても大切です。ご自身が自覚していない症状でも、問診をしていくなかで徐々に分かっていくものです。初診のときはカルテにびっしり書かれていた問題点も、受診の回数を重ねるごとに減っていき、それに伴って患者さんの体調もいい方向に向かっていくことが多いですね。

大橋:先生と患者さん、そしてご家族の方がチームとなって治療に取り組むという、「チーム医療」ができているのではないかと思いました。

今津先生:そうかもしれないですね。チーム医療というと、医師、看護師、薬剤師、メンタル系をサポートする専門家などさまざまな医療者が患者さん中心に関わっていくというイメージがありますが、漢方なら医師と患者さん、患者さんのご家族の間でもできるんですよね。

大橋:患者さん自身が治療に積極的に関わるという感じがします。

今津先生:もちろん、そこに主たる治療をする主治医も関わってきます。

大橋:主治医の先生にはだまって漢方の治療を受けに来られる患者さんがいると聞くことがありますが、今津先生のところではどうでしょうか。

今津先生:そういう方も来ます。それは漢方治療に対してさまざまな考え方がありますので、基本的には当院で話した内容は診療情報提供書という形で主治医に戻します。

主治医との連携で、患者さんに最適な医療を

大橋:主治医の先生とは必ず連携するんですね。

今津先生:セカンドオピニオンとして当院を受診される患者さんも多いのですが、その場合、画像データなども必要になるので、主治医からいただくようにしています。逆に私はこういう目的でこういう漢方薬を処方しているという情報は、主治医にしっかり伝えます。お互いが知り得た患者さんの情報を共有することで、より最適な医療を患者さんに提供できると思います。

大橋:がん治療をおこなっている医師の、漢方に対する理解は広まっていますか?

今津先生:今は医学部のカリキュラムに漢方医学も盛りこまれていますし、若い人たちはどちらかというと漢方治療に興味を持ってくれていますね。年配の医師も徐々に理解を示してくれるようになっています。

大橋:今津先生が漢方薬をがん治療に取り入れるようになって、何か変わったことはありますか?

今津先生:今はがん診療もマニュアル化されて、基本的にはどこの医療機関でも同じ治療が受けられるようになりました。食道がんで言えば、手術、抗がん剤治療、放射線治療の3つの柱をうまく組み合わせることで、治癒率も上がりました。しかし、一方でデータが悪いから治療はできませんと言われてしまうような患者さんに対してのサポートが不足しています。それが漢方治療という手段を用いることで少し補えるようになったと感じています。

大橋:手応えを感じられているんですね。

今津先生:治療そのものにゆとりが生まれた気がします。

がんと共に生きる人のQOLを考える

大橋:最近、がん治療に関わらず、その方にとって最適な医療とは何なのか、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の改善なのか、それとも別のところにあるのか。それは一人ひとり違っているけれど、尊重しなければいけないことなんだ、と感じています。実際問題として、がんと共に生きる「がんサバイバー」の方が増えていますし。

今津先生:漢方は、まさにその部分で重視される医療ですよね。QOLという意味で言うと、昔は大きくおなかを開ける医師、できるだけ多くの臓器を取れる医師が名医とされていたわけで、QOLという考えはそこにはありませんでした。しかし、今は内視鏡を使った治療やロボットを使った手術、ピンポイントで照射できる放射線治療、抗がん剤治療の副作用対策など、患者さんのカラダへの負担を考慮した治療法が実施されています。

大橋:がんになってからも自分らしく生きられる可能性が高まったのですね。実際、がんを患っている方も風邪を引きます。おなかが痛くなったり、蚊に刺されたり……。そういうことも含めて、がんサバイバーの方たちの健康管理を担うのは、今津先生のような先生ではないかと感じました。

今津先生:ありがとうございます。私自身は漢方という存在を知って、がん患者さんのつらさ、不安、苦痛に何らかの形で、多少なりとも応えることができるようになったと思っています。しかし残念なことに、漢方に詳しいけれど、がん治療には詳しくない医師もいます。そこが一つ課題かもしれません。

目指すは気兼ねなく訪ねてくれる「町医者」

大橋:そんな今津先生が目指す医療はどこにありますか?

今津先生:いろいろありますが、一つはカラダのメンテナンスも含めた予防です。万人に通じる予防法はなく、それぞれの年代、性別、抱えている問題に合わせた予防が大事です。予防というとがん検診を思い浮かべる方も多いと思いますが、検診はがんを早期発見して、大事に至らないようにするためのものです。その前段階にあるのは、病気にならないための、まさに予防で、そこには漢方医学の考え方が不可欠だと思っています。

大橋:まさに、転ばぬ先の杖、ですね。

今津先生:しかも日常に即した方法が大事。無理しない予防でないと続きません。

大橋:日常というと、さきほど受付にいらっしゃった患者さんが、「今日、診察日かしら?」って。まるでお茶でも飲みに来たような感じでした(笑)

今津先生:僕の父は町医者だったんですが、僕も父と同じように町医者でありたいと思っています。誰もが気軽に相談に来てもらえるような。

大橋:患者さんの治療法を選ぶのを支援したり、QOLを改善する方法を助言したり、そしてご近所の頼りになるお医者様でもあって。今津先生って、コンシェルジュみたいです。

今津先生:町医者として、そうありたいと思っています。

※掲載内容は、2015年1月取材時のものです。

大橋マキのひとことコメント
偶然にもこの取材が決まる少し前、がんを経験された女性の医師から、アロマセラピーでがんサバイバーのQOLを高めることはできないかという相談を受けました。私自身はかつてある病院の緩和病棟でアロマセラピーを使って、患者さんにリラックスや安心を得てもらうお手伝いをさせていただいたことがあったので、そのような方にアロマで何かできることはないか、ずっと考えていました。
そんななかで今回の漢方徹底取材。がん医療は進歩しているけれど、それでもまだ十分ではなく、がんに対する西洋医学的な治療を補い、QOLを上げ、がんと共に生きることを支えることも必要。そして、それが漢方で実践されている——。今津先生の話から、大きなヒントをいただいたような気持ちになりました。

目覚めスッキリ…良い睡眠は寝具選びから

 

目覚めスッキリ…良い睡眠は寝具選びから

皆さんにとって、今年はどんな年だったでしょうか。わたしは、このブログ連載が3年目に入り、多くの皆さんからいただいたご意見やご感想をたくさん読ませていただき、大変実りのある年になりました。本当にありがとうございます、心から感謝します。

 さて、わたしは京都にある400年の伝統を受け継ぐ寝具の老舗を訪れたことをきっかけに、睡眠について色々と考えるようになったと、前回お伝えしました。

 日本人の平均睡眠時間は7~8時間と言われています。1日24時間のうち、約3分の1をあてる睡眠は、人の健康に大きく関わっています。良い睡眠は健康で元気な生活をするために、極めて大切なポイントになります。

 冬の時期、皆さんは寝具をどうやって選んでいますか。羽毛布団やウールの毛布などと、素材で選んでいますか。それとも寝具の重さで選んでいますか。

 寝具を選ぶときに大切なのは、温度と湿度です。寝ている環境の温度と湿気を寝具によってコントロールすることで、良い睡眠が得られるようになります。衣服を選ぶときと同じように、寝具を選ぶと良いと思います。つまり、冬の寒い時期は、衣服を何層にも重ね着をして空気の層を作るようにします。寝具も重ねることによって空気の層ができ、温度と湿度を調節することができるようになるのです。

 もし、どの寝具を組み合わせると良いか分からないときは、寝具の専門家に直接相談してください。皆さん一人一人にあった寝具を選んでくれます。

体を温めることで眠る準備を

 体温を調節することで、睡眠を調節することができます。前回紹介した生姜しょうが湯は、体を温めることで眠る準備をしてくれます。たとえば、赤ちゃんが眠くなると手足が温かくなりますね。これは体温が上がっているためです。生姜湯で体温を上げることで、スムーズに寝られるようになるのです。体温が上がっていると、睡眠のリズムがよくなり、途中で起きてしまうこともなくなります。

 生姜湯の作り方は、簡単です。水洗いしたショウガを1~2ミリの薄さにスライスします。そのショウガを数枚、コップに入れて上から熱湯をそそぎます。これで完成です。簡単ですね。良い睡眠をとるために、生姜湯を役立ててください。

 睡眠と体温は重要な関係にあります。実は、眠る準備の時に自然と体温が上がる理由は、体の熱を下げるためです。手足から熱を逃がし、徐々に体温を下げていき、深い眠りに導いてくれるのです。

 睡眠中は、起きている時に比べて約1℃、体温は下がります。起きている時と寝ている時の体温の差によって、良い睡眠を得ることができます。つまり、起きている時に体温が低い人は、なかなか眠ることができなかったり、途中で起きてしまったりすることがあります。体温が高い人は簡単に体温を下げることができますから、良い睡眠をとることができるようになります。

 体を温める方法は、わたしの著書「上体温のすすめ」にも、詳しく書かせていただきましたので、ぜひ、ご参考にしてください。寒い季節に熟睡するための様々なコツ。毎日の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

寒い季節に熟睡できる五つのコツ

 

寒い季節に熟睡できる五つのコツ

寒い季節、みなさんは寝具をどうされていらっしゃいますか。

 先日、京都にある400年の伝統を受け継ぐ寝具の老舗を訪れました。数万点に及ぶ寝具の数々を見せていただく機会を頂戴しました。目からうろこが落ちることの連続で、改めて睡眠環境について考える良いチャンスとなりました。そこで、2回にわたって、睡眠の工夫についてお話しさせていただきます。

 皆さんも冬になって、寒さを防ぐためにいろいろと工夫されていると思います。

 足元が冷えるので、靴下をはいて寝る方もおみえでしょう。そんな人へワンポイントアドバイスです。寝るときにはく靴下は、足を締めつけたりしないものを選びましょう。ギュッとしまる靴下を選んでしまうと、逆に足先の血流が悪くなります。また、浮腫の原因にもなりますので、お気を付けくださいね。

 「少しぐらい締まっているのならば大丈夫」と考える方も、いらっしゃると思います。実は、これも避けた方が良いのです。ほんの少しの刺激でも人の身体は敏感ですので、反応します。

 例えば、靴の中に米粒ほどの小さな石が紛れ込んでいても、みなさんは気になりませんか。寝ている間に、緩やかな締め付けでも体へ刺激が加わります。良い刺激ならばいいのでしょうか、手足を締める刺激は体を緊張させ、ストレスになります。ひいては、足先を冷やす原因にもなりかねません。

 寝るときに注意するポイントとして、足元ばかりでなく、首から肩を冷やさないようにすることも大切です。首筋を冷やすと、風邪を引きやすくなりますし、肩こりの原因にもなります。寝るときに首回りにタオル1枚かけて寝るだけで、温かく寝ることができます。

低温やけどにもご注意を

 昔ながらのアンカをお使いの方、低温やけどに注意してください。最近では、使い捨てのカイロなどで、低温やけどされる方も多いようです。

 低温やけどは、「60℃で5秒程度、50℃で 3分程度、44℃で6~10時間」 (消費庁のホームページ)で起こると言われています。熱く感じない温度でも時間が長いとやけどをしてしまいますので、注意しましょう。

 意外と忘れがちなのは、電気毛布の最高温度です。電気毛布の温度は、最高で50℃以上になるものもあります。皆さんがお使いの電気毛布の温度を一度、確認してみてはいかがでしょうか。

 そして、温かく夜を過ごす工夫として生姜湯をお勧めします。生姜しょうが湯を寝る前に一口飲むことで、なかなか眠れない(入眠障害)や寒くて起きてしまう(中途覚醒)などに効果があります。ぜひ、お試しください。皆さんが、良い睡眠をとることで、健康で元気な毎日を送られることを心からお祈りしています。

寒い季節は要注意…死因第3位の病気は肺炎だった

 

寒い季節は要注意…死因第3位の病気は肺炎だった

寒い季節は体調管理が大切です。とくに注意したいのが肺炎です。昨年の死因第3位は肺炎でした。肺炎は、様々な原因から起こります。小さな子どもからお年寄りまで、肺炎になる危険性があります。

 肺炎の原因は様々です。ウイルスによるもの、細菌によるもの、結核によるもの、いろいろな感染症が原因になります。風邪を引いた後、なかなか治らない場合には、肺炎を疑う必要があります。感染症による肺炎ばかりでなく、心臓が原因で起こる心臓喘息ぜんそくなどもあります。

 では、肺炎にかからないようにするには、どうすれば良いのでしょうか。まずはワクチンを積極的に受けておくことが大切です。今年の10月から厚生労働省は高齢者を対象に、肺炎球菌ワクチンの接種を始めました。しかし、ワクチンだけでは防ぐことが出来ないものもあります。

 そこで、毎日の生活で行うことができる予防策があります。


1.口腔こうくうケア

2.手洗い

3.免疫力を上げる




1.口腔ケア:口の中をゆすぐ、歯磨きをする、うがいをする
口の中にいる細菌が肺炎の原因になります。寝ている間に、口の中の細菌が増えています。起きたときは必ず口の中をゆすぎ、歯磨きをすることで細菌数を減らすことができます。食事の後、食べたものの残りカスを減らすことでも、細菌の増殖を予防することができます。食後は必ず歯磨きをすることをお勧めします。

 のどにも、肺炎の原因となる細菌やウイルスがいます。朝起きたときには、うがいをしてノドをよく洗うようにしましょう。外出先から帰ってきたときばかりでなく、商談で人と話した後や友人と会話を楽しんだ後にも、うがいをするのが大切です。


2.手洗い
トイレの後、手を洗うことが習慣になっている方は多いと思います。肺炎を予防するために手を洗う場合のポイントは、手に付いた目には見えない細菌やウイルスを洗い流すことを意識することです。

 手すりやドアノブに触れた後、本屋で立ち読みをした後、知らないうちに手は汚れています。汚れている手で、髪の毛を触ったり、顔をこすったりしているうちに、肺炎の原因となる細菌やウイルスが広がっていきます。こまめに手洗いをすることをお勧めします。

 手洗いのコツは以前、このブログに書かせていただきましたので、参考になさってください。


3.免疫力を上げる
現在、病院に通院されている方は、いろいろな意味で免疫力が落ちていると思います。病院へ通院されていない方でも、疲れていたり、寝不足だったり、精神的ストレスがあったり、いろいろな原因で免疫力が落ちていると思います。様々な原因で、免疫力は落ちてしまいます。

 では、免疫力を上げるためには、どうすれば良いのでしょうか。とくに寒い冬、肺炎を予防するために心がけたいのが、体を冷やさない、体を温めることです。体を温めておけば、免疫力を活性化させておくことができるからです。

 体を温めるためには、外出するときに服を重ね着することも大切ですが、体の芯から温めることが重要です。例えば、簡易カイロを貼る場所をヘソの上にしてください。体全体を温めるためには、血液を温めることが効率的です。ヘソの位置には大動脈があります。大動脈を温めることで、血液を温め、体全体へ温まった血液を送ることができます。

 体を温める方法は、わたしの著書「上体温のすすめ」にも、詳しく書かせていただきましたので、ぜひ、ご参考にしてください。



 今年はデング熱、エボラ出血熱と聞き慣れない感染症が流行しました。インフルエンザも、昨年より早く流行しています。どうか、口腔ケア、手洗い、免疫力を上げることを毎日の生活に取り入れてください。そして、元気で健康な毎日をお過ごしください。

海外旅行には漢方薬を活用してみてはいかが?

 

海外旅行には漢方薬を活用してみてはいかが?

みなさんは、年末年始をどう過ごされる予定ですか。里帰りをされる方、年末ぎりぎりまで仕事がつまっている方、日頃の疲れをとるため、のんびりと寝正月を考えている方など、様々だと思います。

 今年の年末は9連休になります。この機会に海外旅行を計画されている方も多いと思います。海外旅行では毎年一番人気がある場所が、ハワイだそうです。みなさんの予定はいかがでしょうか。

 この季節になると海外旅行へ行かれる方から、「どんな薬を準備していけば良いのでしょう」とよく相談を受けます。わたしはいつも、みなさんへ胃薬、整腸薬、風邪薬、外用薬、湿布薬、絆創膏ばんそうこうを携帯していくことをお勧めしています。

・胃薬:食あたり、食べ過ぎ、胃のもたれ、消化不良など
・整腸薬:下痢、便秘、腹痛、腹部膨満感など
・風邪薬:咽頭痛、鼻水、鼻づまり、発熱など
・外用薬:虫刺され、かぶれ、吹き出物など
・絆創膏:靴ずれ、切り傷など
・湿布薬:筋肉痛、関節痛など



 世界各地の料理を舌で味わう、その国でしか食べることが出来ない料理を地元の音楽を聴きながら楽しむなど、「食」は、旅行の醍醐味だいごみのひとつです。しかし、旅行中、調子を崩すことが多いのが、胃腸の状態です。せっかく楽しみにしていた海外旅行、行きの長いフライトで便通の調子が狂ってしまったために、食欲がわかない。何を食べたせいかわかならないが、下痢になってしまったと便通の異常を訴えることも多いと思います。

知らない土地ではトラブルがつきもの

 胃腸の調子を調節するときに、重宝するのが、半夏瀉心湯はんげしゃしんとうです。この漢方薬は(1)内服してすぐに効いてくれるところ(2)胃にも腸にも効く、優れものです。海外旅行のお供には、なくてはならない漢方薬です。

 ホテルのクーラーが効きすぎてのどが痛くなった、旅の疲れが出て体調を崩したといった原因で風邪を引いてしまう方が多いようです。また、飛行機の中やバスでの移動は、ウイルス感染症にかかりやすい環境が続きます。こんなときは、漢方薬で対応しましょう。

 日頃から風邪を引くと(1)ノドから悪くなる人は麻黄湯まおうとう(2)だるくなる人は葛根湯かっこんとう(3)鼻水になる人は、小青竜湯しょうせいりゅうとうを準備しましょう。

 知らない土地で、見たことがない虫に刺されたり、気づいていたらかぶれていたりといったことがあります。肌のトラブルだけでなく、歩きすぎで靴ずれができるなどトラブルが起きやすいものです。

 ちょっとした切り傷や擦り傷など、絆創膏とセットで必要なのが軟膏です。

 漢方薬には紫雲膏しうんこうという紫色の軟膏があります。江戸時代の医師、華岡青洲が考案した薬で、さまざまな肌のトラブルや外傷に使える優れものです。

 旅行の楽しみはすばらしい景色を堪能することだという方が多いと思います。名所旧跡巡りや映画で見た場所を訪ねるなど、意外と歩く距離が長くなるものです。関節が痛くなったり、こむら返りを起こしたりします。こんなときは、芍薬甘草湯しゃくやくかんぞうとうが特効薬です。速効性があるので、夜中の突然の痛みをとってくれます。持続性がありますから、毎日内服しておくと疲れ知らず、になります。

・胃薬 整腸薬:半夏瀉心湯
・風邪薬:麻黄湯、葛根湯、小青竜湯
・外用薬:紫雲膏
・筋肉痛:芍薬甘草湯



 今年もあとわずかになりました。せわしない気分になりますが、毎日の生活を元気で健康に過ごすため、どうか、身体を大切にお過ごしください。漢方医学の智恵ちえを活用して、年末年始の準備をしましょう。海外旅行には、漢方薬を活用してみてはいかがでしょう。

機械で医療をサポートする国家資格とは?

 

機械で医療をサポートする国家資格とは?

医療従事者には、さまざまな国家資格があります。みなさんは、その国家資格のひとつであるMEって、ご存じですか。MEは、Medical Engineer の略です。これは臨床工学技士と呼ばれる資格です。科学の進歩に合わせて、医療現場には様々な最先端技術が使われるようになりました。臨床工学技士は、医療に関わる機械を管理する重要な仕事をしています。

 体調が悪くなって病院へ行くと、点滴を行う場合があります。1~2時間、外来でポタポタと水滴が落ちてくるのを眺めながら、静かに体が治るのを待ちます。その時、小鳥箱のような機械がついているのに、気づかれた方がいらっしゃると思います。あの小鳥箱は点滴が時間通り、決められた量で落ちるように制御する機械です。

 小さな子どもでは、ちょっとした水分量の違いで心不全になってしまう場合があります。手術中では、水分量の調節が重要なポイントのひとつになります。この点滴の水分量を調節する機械をメンテナンスするのが臨床工学技士です。

MEにも知ってほしい栄養学、漢方医学

 わたしは臨床工学技士になるための学校で長年、教鞭きょうべんをとっています。わたしが担当する授業は栄養学と漢方医学です。機械の構造がわかっていても、人の構造がわからなくては十分とは言えません。栄養学がわからないと、点滴の必要性や手術前後の全身管理の重要性を理解できません。同じように、西洋医学を理解するためには、漢方医学を理解しておく必要があると考えたからです。

 漢方医学では、同じ病気でも同じように治療することはありません。同じ病気に同じ薬ならば、医師でなくとも、コンビニエンスストアで買い求めることが出来ます。しかし、漢方医学では、同じ病気でも患者さんの体と心の状態によって、薬を変えます。

 同じように、医療機器を単なる機械として扱うのではなく、ひとつひとつの機械の調子を見ながら、メンテナンスをする必要があると思います。同じ機械でも同じように壊れるわけではありません。新しい機械は、周辺機器とうまく協調して作動するかが大切です。古い機械は具合の悪いところを中心に管理することが大切です。同じ機械でも、扱いは異なります。

 血液透析の機械や心臓の手術に使う人工心肺装置などを管理している臨床工学技士は、医療現場にはなくてはならないスタッフです。医師が患者さんを対象とするように、臨床工学技士は機械を扱います。このとき、漢方医学を学ぶことで、患者さんと同じように医療機器を扱えるようになってもらいたいと考えています。


高校の同級生が「がん」になりました

 

高校の同級生が「がん」になりました

わたしは昭和37年生まれの52歳です。自分ではまだまだ働き盛りと考えています。有り難いことに、これまで病気らしい病気はしたことがありません。しかし、先日、高校時代の同級生が「がん」になったとソーシャルネットワークで知りました。

 「がん」という言葉に仕事柄慣れているとはいえ、同級生の病気には少し考え込んでしまいました。

 長寿世界第1位の日本では、2人に1人が「がん」になるといわれています。では、がんになりやすい年齢は何歳でしょう。

 統計を見ると、52歳の死因は第1位=悪性新生物(がん)、第2位=心疾患、第3位=自殺です。やはり、死因の第1位は「がん」です。実は、一生を通じて死因の3位以内に「がん」があります。つまり、10代でも、20代でも、30代でも、「がん」にかかる危険性があるということです。

健康に暮らすヒントは、寒い時期と暑い時期にあり

 「がんにならないようにするには、どうすればいいのでしょうか」と質問されます。聖人君子のような生活をすれば、がんにならないのでしょうか。仙人のようにかすみでも食べて生きればいいのでしょうか。答えを見つけるのは、なかなか難しいと思います。

 わたしは、少しでも健康でいることが大切だと考えています。健康であれば、免疫力もしっかりと保たれ、小さながん細胞ならば、自分の力で退治することができるからです。健康な毎日を過ごすためのポイントは、人それぞれ、見つける必要があります。

 健康に暮らすヒントは、寒い時期、風邪を引かないようにすること、暑い時期、夏ばてをしないようにすること、です。健康に暮らすヒントは日常生活に隠されていると思います。

 わたしが医師になった約25年前と比べ、医学は飛躍的に進歩しています。血液検査、レントゲン検査、超音波検査などを使えば、非常に早期のがんを発見できるようになりました。そこで、わたしは現代医学を十分に活用して、早期発見・早期治療することを勧めています。

 以前なら、見つけることができなかった小さな胃がんも、電子内視鏡を使うことで診断できるようになりました。早期に見つかった胃がんは、おなかを切ることなく、内視鏡治療で切り取ることが出来るようになりました。手術後も、胃袋が小さくなることがありませんから、食事が制限されることもありません。手術後も元気な生活を送ることができます。

 がんになった同級生のSくんはその後、手術も無事に終わって元気になり、仕事にも復帰しています。これまで無病息災だった彼は今回の病気をきっかけに、これからの人生を一病息災として、元気で健康な毎日を過ごしていくと思います。Sくん、回復、おめでとうございます。

知っているようで知らない…肌のかゆみ対策

 

知っているようで知らない…肌のかゆみ対策

昨年よりも15日早く、10月27日夜、東京に木枯らし1号が吹きました。日に日に寒さが増す今日この頃、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。乾燥したこの時期になると、肌のかゆみを訴えてクリニックへお見えになる患者さんが増えます。

原因は様々で見つけるのに苦労

 肌のかゆみの原因は様々です。肝臓や腎臓の病気、アレルギー、虫刺されなどによって、肌のかゆみが起こることがあります。時には、精神的ストレスが原因となり、かゆみとして症状に出る場合があります。

 女性の場合は、月経周期に合わせてかゆみが出ることがあります。また、入浴して身体が温まるとかゆみが出る場合と、冷たい風に当たるとかゆくなる場合があります。

 肌のかゆみの原因は様々で、原因を見つけるのに苦労します。

 秋から冬にかけては空気が乾燥しています。乾燥もかゆみの原因になります。

ワセリンが乾燥から守ってくれる

 背中や手足がかゆくて眠れない。ストッキングをはくと肌がガサガサしてむずがゆい。首回りや服のこすれる場所がかゆいーーといった症状は、肌の乾燥が原因であることが多いと思います。この乾燥からくるかゆみには、保湿が一番効果的です。

 先日、Kさんという患者さんが「いくら皮膚科で薬をもらっても、よくならない」と訴えて来院されました。Kさんは70歳を超えた男性で、肌を診察すると乾燥していましたので、「乾燥が原因ですから、ワセリンで保湿すると良いと思います」とお話ししました。すると「ワセリンならもう試したが、全然効果がなかった」とお答えになりました。そこで私はワセリンの使い方を説明しました。

ワセリンをうまく使うコツ

 革製品の手入れに使うワセリンは、ベトベトしています。乾燥した肌にワセリンを塗ると、ほんの少しでもべたついてしまい、なかなかうまく使うことが出来ません。

 ワセリンを使うときには、コツがあります。

1.入浴後、5分以内にワセリンを塗る
2.タオルで身体を拭く前に、ワセリンを塗る

 このふたつを守って、ワセリンをかゆい部分に丹念に塗ります。水分が足りなかったり、ワセリンが多すぎたりすると、ベタベタしてしまいます。かならず、水滴が肌についている状態で、塗るようにしましょう。

驚くほど簡単な治療法

 2週間後にお見えになったKさん、ニコニコ顔で診察室へ入って来ました。「あれだけ苦労したかゆみが、ワセリンで治ってしまいました」とうれしそうにお話になりました。

 「以前、ワセリンを使ったときは効果がなかった。今回、ワセリンの使い方を教えてもらった方法で塗ってみたら、1週間でかゆみが消えました」と、ワセリンが乾燥肌(ドライスキン)を治してくれたようです。

からだのメンテナンスをおこないましょう

 日本では、四季折々の自然を楽しむことが出来ます。それぞれの季節によって、肌の状態も変わります。秋から冬にかけては乾燥対策が大切です。ワセリンを使って、保湿をすることで、からだのメンテナンスをしましょう。

 肌のかゆみがなくなると、夜もぐっすり眠ることが出来るようになります。かゆみがなくなることで、寝不足がなくなり元気になります。ぜひ、試してみてはいかがでしょうか。

秋の健康チェックを始めましょう

 

秋の健康チェックを始めましょう

今年も後、残すところわずかになりました。わたしは部屋の整理や掃除をはじめました。みなさんが年末に行う大掃除をこの時期にやっています。年末の慌ただしい時期に、片付けを行うと、どうしてもやり残したことが出来てしまうからです。

 家の中の片付けと同じように、この時期に、自分の体の総点検をされてはいかがでしょうか。

口の中に違和感を感じたら……

 健康のバロメーターは、消化器系にあります。

 食べ物をうまく消化、吸収することが、元気の源になります。消化器系とは、口から肛門まで、食べ物が通過するところをいいます。

(1)口のチェック:まずは、口の中を自分の舌を使って、くまなく確認します。歯の裏側は簡単ですが、頬と歯の間を舌で確認するのはけっこう時間がかかります。毎日、歯磨きをされている方は、口の中の状態をチェックしてみましょう。歯磨きの後、出血はありませんか。歯がしみたり、痛んだりする場所はありませんか。知らないうちに歯石がたまっているかもしれません、口の中に、少しでも違和感があるようでしたら、かならず歯科医師に相談しましょう。

 舌の状態も、大切なポイントになります。以前、このブログでもご紹介させていただいたように、舌の表面を見ることで、胃の調子を知ることが出来ます。

小腸の検査はカプセル内視鏡で

(2)食道から胃のチェック:仰向けに寝て、両手でみぞおちから下をゆっくりと触ってみましょう。このとき、大切なのは、強く押さないことです。みぞおちの部分には、胃があります。正確に言うと、胃に肝臓が重なり、横行結腸が乗っかっています。胃の裏側には膵臓すいぞうがあります。みぞおちをさわるだけで、これだけの臓器を診ることが出来ます。胃に不安がある方は、検査を受けることをお勧めします。

 みなさんの中には今年、バリウムや胃カメラの検査を受けた方もいらっしゃるかもしれません。わたしは、がんを見つけることが仕事ですので、心配な方には必ず胃カメラを受けてもらうようにしています。バリウムで、見落としがちな病気も胃カメラなら見つけることが出来るからです。

(3)小腸のチェック:みぞおちに置いた手のひらをゆっくりとヘソの方へ移動させましょう。ちょうど、みぞおちとヘソの間付近に小腸があります。これまで小腸の検査は難しく、病気を見つけることが困難でした。しかし、最近はカプセル内視鏡が発達したお陰で、簡単に検査を受けることができます。興味のある方は医療機関にご相談ください。

排便の色も体調を知るサイン

(4)大腸から直腸のチェック:ヘソまで来た手のひらを時計回りにおなかの上を回します。ゆっくり、お腹の上を一周します。どこか気になる場所はありますか。大腸の病気を見つけるには、便潜血検査を2日間受けます。便潜血検査を受けると、大腸の病気の約70%がわかると言われています。また、大腸の病気の60%は肛門からS状結腸までに発生すると言われています。

 大腸の内視鏡検査やバリウムの検査は、たくさん下剤を服用してから行いますので、なかなか受けるのに勇気が必要です。しかし、しっかりと病気を見つけるためには、必要な検査です。

(5)肛門のチェック:肛門をギュッと締めてみてください。力がうまく入りますか。肛門の機能は、年齢と共に、低下してきます。肛門括約筋の力も落ちてきます。肛門括約筋の力が落ちると、便が漏れるようになるほか、尿の漏れにも関係します。

 排便時に、出血がある場合、色を確認します。明るい色をしている場合は、肛門に近い場所からの出血が疑われます。黒い色の場合は、奥からの出血が疑われます。また、便のかたさも重要です。便の硬さを表現するのは、難しいことが多いと思います。そこで、ブリストル分類を活用します。「水のような便」「泥のような便」「便器の水に浮く便」「ソーセージやバナナのような便」「表面にしわやひび割れがある便」「ウサギの便のような硬い便」といった具合です。こうした便のかたさによって、食事の取り方の問題点を見つけたり、内服している薬の副作用などがわかったりします。

 健康は、毎日の生活の中で築きあげていくものです。1年に1回はかならず、自分で自分の身体の状態をチェックしましょう。そして秋になったら、体の汚れを大掃除してみてはいかがでしょうか。この時期に異常を見つけておけば、年内にすべて解決することも出来ます。ぜひ、早め早めのチェックをお願いします。

健康の秘訣をお教えします…上体温のすすめ

わたしの健康の秘訣ひけつをお教えします。わたしがこれまで25年余り医師として、多くの患者さんからいただいたすばらしい経験をもとに、見つけたことです。それが、「上体温のすすめ」です。

 どの時代も、お金や名誉を十分に手に入れた人や貧しい人が、最後に望むものは、元気で健康な身体です。秦の始皇帝が追い求めたもの、クレオパトラや楊貴妃が望んだ元気で健康な生活を手に入れるには、どうすればいいのでしょうか。始皇帝が莫大ばくだいな財産をもってしても手に入れることが出来なかったもの。それをわたしたちが、簡単に手に入れられるとは考えられません。

 テレビやインターネットにある魅力的なうたい文句に踊らされて、簡単に手に入る方法で、健康を手に入れられるとは思えません。健康管理に大切なことは、わたしたちひとりひとりに合った方法を見つけることです。それが「上体温のすすめ」です。

あなたの健康法は、本物ですか?

 毎日の生活の中で、身体の調子を気にしている方は多いと思います。

 「朝起きたら体操をして体調を整える」「朝食は必ずとるようにしている」「通勤はウォーキングシューズを履いて速足で歩いている」「仕事のストレスをためないように、努力している」「身体の疲れをとるために、毎日、入浴している」「睡眠は、しっかりとる」などなど。ひとりひとり健康管理で、大切にされているポイントがあると思います。しかし、あなたのその健康法、本当にそれでいいのでしょうか。

 はじめてはみたものの、三日坊主で終わってしまう健康法は、あなたには合っていないと思います。

健康管理に大切なこと

 では、あなたに合った方法は、毎日努力して、苦労して続ける方法でしょうか。お金をかけて手に入れる方法でしょうか。特別な器械を使ってする方法でしょうか。

 努力して苦労する方法は、長続きしません。お金をかける方法は長続きしません。特別な器械を使う方法は、誰にも出来る方法ではありません。

 わたしが考える健康管理は、みなさんが毎日の生活の中で、簡単にできることでなくてはいけないと思っています。わたしが考える健康管理は、誰でもどこでも出来る方法でなくてはいけないと思っています。私が考える健康管理は、あなたがいまから、すぐにできる方法で、何も準備しなくても出来る方法です。努力も苦労もいらない、そんな健康管理でなくてはいけないと思っています。

 例えば、「野菜は形よりも色で選ぶ」「常に利き腕とは逆の腕を使う」など、私が提案する上体温は、お金をかけずに長続きするものばかりです。

健康を保つための大切なキーワード

 「上体温のすすめ」は、みなさんひとりひとりにとって、体温をうまく調整することを考えるヒントです。年齢や性別、職業や生活環境によって、健康法は違うはずです。昼間働く人と、夜働く人は、食事や睡眠をとる時間が違います。日本に住んでいる人と地球の裏側に住んでいる人でも、同じように行うことが出来る健康法が、「上体温のすすめ」です。

 わたしの健康の秘訣をすこしでも、多くの皆さんにわかっていただくために、様々な角度からまとめさせていただきました。そして、「からだを温める」ことの重要性をみなさんに理解していただくために、漢方医学の知識を交えて温め方を提案させていただきました。それが、このほど上梓じょうしした「89・8%の病気を防ぐ上体温のすすめ ~名医が実践する新・体温健康法!~」(ワニブックス)です。

 この本がみなさんひとりひとりに合った方法を 自分自身の力で見つけられるヒントになれば、幸いと考えます。「からだを温める」ことを大切にして、元気で健康な生活を手に入れてください。