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コラム

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秋の健康チェックを始めましょう

 

秋の健康チェックを始めましょう

今年も後、残すところわずかになりました。わたしは部屋の整理や掃除をはじめました。みなさんが年末に行う大掃除をこの時期にやっています。年末の慌ただしい時期に、片付けを行うと、どうしてもやり残したことが出来てしまうからです。

 家の中の片付けと同じように、この時期に、自分の体の総点検をされてはいかがでしょうか。

口の中に違和感を感じたら……

 健康のバロメーターは、消化器系にあります。

 食べ物をうまく消化、吸収することが、元気の源になります。消化器系とは、口から肛門まで、食べ物が通過するところをいいます。

(1)口のチェック:まずは、口の中を自分の舌を使って、くまなく確認します。歯の裏側は簡単ですが、頬と歯の間を舌で確認するのはけっこう時間がかかります。毎日、歯磨きをされている方は、口の中の状態をチェックしてみましょう。歯磨きの後、出血はありませんか。歯がしみたり、痛んだりする場所はありませんか。知らないうちに歯石がたまっているかもしれません、口の中に、少しでも違和感があるようでしたら、かならず歯科医師に相談しましょう。

 舌の状態も、大切なポイントになります。以前、このブログでもご紹介させていただいたように、舌の表面を見ることで、胃の調子を知ることが出来ます。

小腸の検査はカプセル内視鏡で

(2)食道から胃のチェック:仰向けに寝て、両手でみぞおちから下をゆっくりと触ってみましょう。このとき、大切なのは、強く押さないことです。みぞおちの部分には、胃があります。正確に言うと、胃に肝臓が重なり、横行結腸が乗っかっています。胃の裏側には膵臓すいぞうがあります。みぞおちをさわるだけで、これだけの臓器を診ることが出来ます。胃に不安がある方は、検査を受けることをお勧めします。

 みなさんの中には今年、バリウムや胃カメラの検査を受けた方もいらっしゃるかもしれません。わたしは、がんを見つけることが仕事ですので、心配な方には必ず胃カメラを受けてもらうようにしています。バリウムで、見落としがちな病気も胃カメラなら見つけることが出来るからです。

(3)小腸のチェック:みぞおちに置いた手のひらをゆっくりとヘソの方へ移動させましょう。ちょうど、みぞおちとヘソの間付近に小腸があります。これまで小腸の検査は難しく、病気を見つけることが困難でした。しかし、最近はカプセル内視鏡が発達したお陰で、簡単に検査を受けることができます。興味のある方は医療機関にご相談ください。

排便の色も体調を知るサイン

(4)大腸から直腸のチェック:ヘソまで来た手のひらを時計回りにお腹なかの上を回します。ゆっくり、お腹の上を一周します。どこか気になる場所はありますか。大腸の病気を見つけるには、便潜血検査を2日間受けます。便潜血検査を受けると、大腸の病気の約70%がわかると言われています。また、大腸の病気の60%は肛門からS状結腸までに発生すると言われています。

 大腸の内視鏡検査やバリウムの検査は、たくさん下剤を服用してから行いますので、なかなか受けるのに勇気が必要です。しかし、しっかりと病気を見つけるためには、必要な検査です。

(5)肛門のチェック:肛門をギュッと締めてみてください。力がうまく入りますか。肛門の機能は、年齢と共に、低下してきます。肛門括約筋の力も落ちてきます。肛門括約筋の力が落ちると、便が漏れるようになるほか、尿の漏れにも関係します。

 排便時に、出血がある場合、色を確認します。明るい色をしている場合は、肛門に近い場所からの出血が疑われます。黒い色の場合は、奥からの出血が疑われます。また、便のかたさも重要です。便の硬さを表現するのは、難しいことが多いと思います。そこで、ブリストル分類を活用します。「水のような便」「泥のような便」「便器の水に浮く便」「ソーセージやバナナのような便」「表面にしわやひび割れがある便」「ウサギの便のような硬い便」といった具合です。こうした便のかたさによって、食事の取り方の問題点を見つけたり、内服している薬の副作用などがわかったりします。

 健康は、毎日の生活の中で築きあげていくものです。1年に1回はかならず、自分で自分の身体の状態をチェックしましょう。そして秋になったら、体の汚れを大掃除してみてはいかがでしょうか。この時期に異常を見つけておけば、年内にすべて解決することも出来ます。ぜひ、早め早めのチェックをお願いします。

健康の秘訣をお教えします…上体温のすすめ

わたしの健康の秘訣ひけつをお教えします。わたしがこれまで25年余り医師として、多くの患者さんからいただいたすばらしい経験をもとに、見つけたことです。それが、「上体温のすすめ」です。

 どの時代も、お金や名誉を十分に手に入れた人や貧しい人が、最後に望むものは、元気で健康な身体です。秦の始皇帝が追い求めたもの、クレオパトラや楊貴妃が望んだ元気で健康な生活を手に入れるには、どうすればいいのでしょうか。始皇帝が莫大ばくだいな財産をもってしても手に入れることが出来なかったもの。それをわたしたちが、簡単に手に入れられるとは考えられません。

 テレビやインターネットにある魅力的なうたい文句に踊らされて、簡単に手に入る方法で、健康を手に入れられるとは思えません。健康管理に大切なことは、わたしたちひとりひとりに合った方法を見つけることです。それが「上体温のすすめ」です。

あなたの健康法は、本物ですか?

 毎日の生活の中で、身体の調子を気にしている方は多いと思います。

 「朝起きたら体操をして体調を整える」「朝食は必ずとるようにしている」「通勤はウォーキングシューズを履いて速足で歩いている」「仕事のストレスをためないように、努力している」「身体の疲れをとるために、毎日、入浴している」「睡眠は、しっかりとる」などなど。ひとりひとり健康管理で、大切にされているポイントがあると思います。しかし、あなたのその健康法、本当にそれでいいのでしょうか。

 はじめてはみたものの、三日坊主で終わってしまう健康法は、あなたには合っていないと思います。

健康管理に大切なこと

 では、あなたに合った方法は、毎日努力して、苦労して続ける方法でしょうか。お金をかけて手に入れる方法でしょうか。特別な器械を使ってする方法でしょうか。

 努力して苦労する方法は、長続きしません。お金をかける方法は長続きしません。特別な器械を使う方法は、誰にも出来る方法ではありません。

 わたしが考える健康管理は、みなさんが毎日の生活の中で、簡単にできることでなくてはいけないと思っています。わたしが考える健康管理は、誰でもどこでも出来る方法でなくてはいけないと思っています。私が考える健康管理は、あなたがいまから、すぐにできる方法で、何も準備しなくても出来る方法です。努力も苦労もいらない、そんな健康管理でなくてはいけないと思っています。

 例えば、「野菜は形よりも色で選ぶ」「常に利き腕とは逆の腕を使う」など、私が提案する上体温は、お金をかけずに長続きするものばかりです。

健康を保つための大切なキーワード

 「上体温のすすめ」は、みなさんひとりひとりにとって、体温をうまく調整することを考えるヒントです。年齢や性別、職業や生活環境によって、健康法は違うはずです。昼間働く人と、夜働く人は、食事や睡眠をとる時間が違います。日本に住んでいる人と地球の裏側に住んでいる人でも、同じように行うことが出来る健康法が、「上体温のすすめ」です。

 わたしの健康の秘訣をすこしでも、多くの皆さんにわかっていただくために、様々な角度からまとめさせていただきました。そして、「からだを温める」ことの重要性をみなさんに理解していただくために、漢方医学の知識を交えて温め方を提案させていただきました。それが、このほど上梓じょうしした「89・8%の病気を防ぐ上体温のすすめ ~名医が実践する新・体温健康法!~」(ワニブックス)です。

 この本がみなさんひとりひとりに合った方法を 自分自身の力で見つけられるヒントになれば、幸いと考えます。「からだを温める」ことを大切にして、元気で健康な生活を手に入れてください。

デジタル化の波に襲われた白衣の天使たち

「白衣の天使」の微笑ほほえみに、苦しい闘病生活を乗り切ることが出来た。優しい看護師さんの言葉に、病気で落ち込んでいる気持ちが救われた。みなさんも、こんな経験があると思います。

 病気を治すのは、医師だけではありません。看護師さんの「ナイチンゲール精神」が、病気や怪我けがに苦しんでいる患者さんを救います。

 一番に患者さんの気持ちを考え、患者さんに寄り添い、患者さんのために働く看護師さんは、医療現場になくてはならない存在です。看護師さんは、医療現場で導入されつつある「チーム医療」の大切な一員です。

 医療が日進月歩で進む中で、診療にも電子カルテが導入されるようになりました。看護記録も、「手書き」から「パソコン」へ変わってきました。アナログの「手書き」では、患者さんが訴えた言葉や数字には表れない身体の変調など、1日として同じ状態ではない体の状態を書き留めることが出来ました。しかし、デジタルの「パソコン」となると、入力する項目が決められています。

 マニュアルに沿って観察したことを数字に置き換えて入力したり、チェック項目を埋めていったりするようになりました。これまで、看護師さんが実際に手で触れ、肌で感じていた情報は、電子カルテになったために、記録することが難しくなってしまいました。電子カルテは、入力する項目が決められています。電子カルテでは、項目に当てはめることが難しい症状や患者さんの状態を管理できなくなってしまったのです。

捨てることになった五感で感じ取る情報

 これまで患者さんの心と身体を直接みながら看護し、患者さんの家族のことまでも考えていた看護師さんも、情報のデジタル化によって、せっかくの大切な情報を記録する方法がなくなってしまいました。五感で感じていた患者さんの状況は、情報のデジタル化によって、捨てられるようになってしまったんです。

 そこでわたしは、看護師さんたちに、看護の基本を思い出していただければと、漢方医学を使ったプログラムを始めています。

 現在の看護学校では、漢方医学を学ぶ機会はほとんどありません。このため、看護師さんたちは、漢方医学についてはまったく知識と経験がなく、医療現場で使われている漢方薬の扱い方に困っていました。昨年、わたしは看護師向けの専門誌に漢方医学について1年間、連載をさせていただきました。この連載をきっかけに、今年は「看護師さんに必要な漢方医学の知識が何か」を考え、プログラムを作らせていただく機会を得ました。このプログラムで漢方医学を学んでいただくのは、首都大学東京と聖路加国際大学の看護師さんたちです。

漢方医学の方法を情報のデジタル化に応用

 漢方医学は、アナログな学問です。アナログゆえに、看護師さんが肌で感じたことを表現するにはもってこいの学問です。顔色、肌のつや、精神的な変化など、ちょっとした変化を漢方医学では、大切にします。そして、漢方医学は、その変化を言葉として記録する方法を持っています。わたしが考えたのは、この方法を活用して、情報をデジタル化する試みです。この方法を活用することで、記録することが難しかった情報を電子カルテに記録し、医療チームで共有することができるようにすることです。

 看護師さんが、看護学に漢方医学を取り入れることで、より良い看護ができるようになるでしょう。患者さんたちのために漢方医学という古い学問が、デジタル社会で再び活用され、看護師さんの役に立つ。これこそが、わたしの教育プログラムの目的です。

秋の魚はシイタケと一緒に

みなさんは、季節の食材を楽しんでいますか。「食欲の秋」、山の幸や海の幸などたくさんの季節の食材が食卓をいろどります。今回は、その中でも、とくに体に良い食材をご紹介します。

海の幸

 最近の日本人は、西洋的な食事に慣れ親しんできたため、肉料理が多くなっているそうです。残念なことに、農林水産省の統計でも、日本人ひとり当たりの魚消費量は、年々、減ってきているそうです。安価で美味おいしい魚からとることができる良質の栄養素で、元気で健康な毎日を過ごすことが出来るようになります。魚が持つ大切な栄養素は、テレビや新聞の宣伝でもよく見かける、EPAとDHAです。

 アジ、イワシ、サバ、サンマなどの秋に旬の魚たちは、血液をさらさらにしてくれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれています。冷たい海水の中で生きている魚の体の中でも、固まることなく潤滑油の役割をしている油が、EPAとDHAです。EPAとDHAは、わたしたち人間の体の中でも固まりづらいため、血管の壁にこびりついたり、沈殿したりすることがなく、動脈硬化になりにくいと言われています。

 EPAは、中性脂肪を減らす作用があることから、高脂血症の治療薬として使われています。DHAは、脳や神経組織の発育や機能維持の効果があります。

 EPAとDHAは、人の体では作ることが出来ない栄養素ですので、食品としてとることが必要です。

秋の食材を活用して料理を作る

 魚に含まれるEPAとDHAを合わせて、1日に1000mg以上、摂取するのがよいとされています。目安としては、アジ(小ぶりのもの)3匹、イワシ(マイワシ)1匹、サバ1/4匹、サンマ1匹、になります。調理方法は、さしみでも、焼き魚でも大丈夫です。EPAもDHAも、熱に強い性質を持っているため、加熱しても損なわれることがありません。

 海の幸に山の幸であるシイタケを組み合わせると、さらに効果的です。シイタケは、食物繊維が豊富で、ビタミンDやβ(ベータ)-D-グルカンを多く含んでいます。ビタミンDは、腸からのカルシウムの吸収を助ける働きをします。β-D-グルカンは、免疫力を上げる効果があります。このビタミンDやβ-D-グルカンも、熱に強い性質を持っています。魚と一緒に調理して、美味しくいただきましょう。

 お昼のランチを選ぶときやお弁当を作るとき、秋の食材を選択することで、簡単にワンランク上の健康管理が可能です。わざわざ高いお金を出してサプリメントや健康食品を購入するのではなく、毎日の食生活を見直すことから始めてはいかがでしょうか。

筋肉の動きを意識しよう

現在は、「体育の日」というと、10月の第2月曜日になっています。しかし、わたしが小学生の頃は、10月10日でした。毎年、体育の日は天気が良いので、かならず運動会が開催されました。徒競走や綱引きなど、楽しい思い出がいっぱいです。

 スポーツの秋、芸術の秋、食欲の秋――みなさんは、秋になって取り組んでいることがありますか。お金をかけずに、健康な毎日を過ごすために、まず、体を動かすことからはじめてみてはいかがでしょうか。

 今回は、スポーツではなく、運動でもなく、体を動かすことに注目したいと思います。気構えてスポーツをしようとすると、なかなか長続きしません。運動をしようと着替えてはみたものの、どういう運動をしたら良いか、わからないことがあります。

 しかし、スポーツや運動でなくても、体を動かすことは、毎日の生活で必ず行っていることです。これまで意識しないで動かしていた体を、意識して動かしてみてはいかがでしょうか。

 朝、目が覚めたとき、瞬まばたきをします。これも体を動かすことのひとつです。体のどこか一部の筋肉を動かすこと、を意味します。

 コップを持ち上げるとき、ゆっくりと一本一本の指の動きを確かめながら、行ってください。昔痛めた中指を動かすときに違和感があったり、自分の腕の重さに驚いたり、と意外な発見があるかもしれません。

 首や肩を動かしてみましょう。頭を支えている首の筋肉は、たくさんあります。首の前側には胸鎖乳突筋、前頚筋ぜんけいきんなど、首の後ろには僧帽筋、板状筋など、多くの筋肉が働いています。

 そして、寝ている時も、座っている時も、歩いている時も、同じように、筋肉を意識してみましょう。

 こうした確認をしながら体を動かすことで、自分の体の状態を簡単に知ることが出来るようになります。いつもと違う違和感や痛みを感じたときは、医療機関を受診することをお勧めします。

 50年前の10月10日に、東京オリンピックの開会式が行われました。そして、2020年、再び、東京でオリンピックが開催される予定です。それまで、元気で健康に生活するために、体を大切に手当てしていく必要があります。自分の健康を自分自身でチェックするために、体を動かしてみてはいかがでしょうか。

スギ花粉症に期待の新治療法

 

スギ花粉症に期待の新治療法

毎年、春になるとスギ花粉で、つらい毎日を過ごしている方に朗報です。スギ花粉によるアレルギーの新しい治療薬が発売されます。今回の治療薬は、減感作療法(アレルゲン免疫療法)に使う薬です。これまで、花粉症の治療は、アレルギー反応を抑える副腎皮質ホルモン、ヒスタミンによる症状を抑える抗ヒスタミン薬など、対症療法が中心でした。

 花粉症と減感作療法について、簡単に説明させていただきます。体がスギの花粉を取り込むと、拒否反応を起こします。拒否反応は、鼻水、鼻づまり、眼のかゆみなどの症状として現れます。これが花粉症です。減感作療法は、原因となるスギの花粉をほんのわずかずつ、体に入れるようにして、拒否反応を起こさないようにしていく治療法です。

 これまでの減感作療法は、スギ花粉を希釈した液を皮下注射する方法しかありませんでした。しかし、今回、新しい治療薬は、注射の痛みがなく、ただ毎日、舌のうらへスプレーするだけの簡単な治療法です。

 この新しい治療法は、医療者にとっても患者さんにとっても、いろいろと守らなければならない規則があります。医師がこの薬を処方するためには、指定された学会の講習会を受講する必要があります。そして、受講した医師には、インターネットで学習する権利が与えられます。医師は、自分のパスワードを使って、インターネットでの学習を行い、試験に合格して、初めて処方が許可される仕組みになっています。

 患者さんは、医師、薬剤師、看護師に十分な説明を受けてから始める必要があります。治療は2年間、毎日コツコツと続ける必要があります。また、最初の1年間は、2週間ごとに医療機関を受診する必要があります。定期的な診察によって、新しい治療薬の安全性を確認し、副作用などの調査を行うためです。

 科学の進歩によって、新しい治療法と治療薬が開発され、治癒可能な病気が増える。すばらしい時代になりました。

 しかし、どの時代にも、100%の治療はありません。最新治療だけでは、すべてを治すことは不可能です。減感作療法も、2年間にわたって毎日、治療を続けても、10~20%の方は、治療効果がない場合があります。減感作療法だけで、花粉症が完全に退治できるわけではありません。やはり、毎日の生活に注意し、健康への地道な努力が求められます。そのためには、自分の生活を今一度、見直してみることも、大切だと思います。自分では気づかない生活の問題点は、医師、薬剤師、看護師へ相談してみるといいでしょう。私たち医療従事者は、みなさんが毎日の生活を元気に安心して過ごすために手に手を取って前へ進んでいければと、日々、願っています。

感染症対策の基本は「手洗いとうがい」

人の歴史は、感染症との戦いです。「疫病えきびょう」は、いつの時代にも、人の生活を脅かしてきました。

 今、世界では、エボラ出血熱の患者が増えています。エボラ出血熱は、有効な治療法がない感染症です。エボラウイルスは、高い死亡率を持つ危険なウイルスのひとつです。どうか、はやく終息してもらいたいものです。

 今年の夏、東京近郊では、デング熱が広がりました。第2次世界大戦中に、戦地から持ち帰られたウイルスによって、1940年代に流行した時期がありました。70年ぶりに流行したデング熱も、有効な治療薬はなく、対症療法になります。

 デング熱の初期症状は、突然の高熱、頭痛、眼の痛み、顔の紅潮、結膜充血です。初期症状に続いて、筋肉痛、関節痛、全身倦怠けんたい感が起こります。症状がでてから3~4日目には、発疹が身体、手足、顔面に広がります。症状は、1週間程度で、回復します。ごくまれに、発熱後に出血傾向などで、致命的な状態になることがありますから、医療機関へ受診することが大切になります。感染を媒介する蚊が活動しなくなる10月中旬まで、注意が必要です。

 そして、これからは、インフルエンザが流行する季節になります。

 10月になると、インフルエンザの予防接種が始まります。みなさんは、毎年、予防接種を受けていますか。予防接種を受けないで死亡した人の約80%は、接種で防ぐことが出来たと言われています。65歳以上の高齢者、65歳未満から60歳で心臓疾患、呼吸器疾患、腎臓疾患を抱えている人は、予防接種を受けることがすすめられています。

 感染症対策の基本は、「手洗いとうがい」です。手洗いもうがいも、こまめに行うことが大切です。外出から帰ってきた時や人と会った時は、かならず手洗いとうがいを行うように、習慣づけるようにしましょう。

 手洗いのポイントは、慌てないことです。よくみかけるのは、指先だけ水に濡ぬらしたり、洗った後に手を拭かないでまわりを水滴で汚したりする姿です。手を洗うときは、自分では、汚していないと思う部分にも気を配ることが大切です。知らないうちに汚してしまっていることがあります。手についた水滴をパッパッと手を振って乾かそうとする動作は、手についていたバイ菌で水回りを汚してしまいます。これが感染を広げる原因になります。

 うがいについては、ポイントは口の中もゆすぐことです。のどをガラガラとうがいするだけでなく、かならず口の中の汚れも一緒に落とすといいでしょう。

 目に見えない感染症に対抗するには、毎日の「手洗いとうがい」が大切です。家族の誰かが感染すると、家族全員へ広がる危険性があります。感染症の予防は、家族全員で取り組む必要があります。そして、学校、職場など、みなさんの生活の場で、協力し合い、感染症が広がるのを予防していきましょう。

シソは身近な「漢方薬」

シソが、紫色をした小さな花をつけました。秋がやってきました。みなさんの家では、どんな植物を育てていらっしゃいますか。わたしが今年、ベランダ菜園で育てているのは、水戸のハーブ園からいただいた赤シソです。

 シソには、青シソと赤シソがあります。

 青シソは、「大葉おおば」とも呼ばれています。青シソには、殺菌・防腐作用を持つペリルアルデヒドが含まれているため、生ものといっしょに調理されることが多いようです。このため刺し身のつまやお弁当に入れられます。また、青シソは、ニンジンやパセリに比べて、ビタミンA(カロテン)を含む割合が多いのです。脂溶性ビタミンAを効率よく吸収するためには、シソを油で調理するといいでしょう。

 赤シソは、梅干しや紅ショウガの色付けに使われます。赤シソの種は、七味唐辛子などにも使われます。漢方薬の材料としても、赤シソ(紫蘇葉しそよう)が使われています。

 中国の後漢時代、名医・華陀かだがカニの食中毒で死にかけていた若者を「紫」色の草で、「蘇よみがえ」らせたことから、紫蘇しそと呼ばれるようになったといわれています。

風邪予防に香蘇散

 シソを使った漢方薬には、香蘇散こうそさんがあります。香蘇散は、シソ、ショウガ、みかんの皮などで、できています。香蘇散は、風邪薬として使われていますが、胃腸障害、精神的不安などにも使われています。よく風邪薬として使われる葛根湯かっこんとうや麻黄湯まおうとうとは、使い方に違いがあります。

 「のどがおかしい」「寒気がする」「体がだるい」など、風邪の初期症状があるとき、わたしは「麻黄まおう」というエフェドリンを含んだ葛根湯や麻黄湯などを処方します。エフェドリンは、交感神経を活性化して免疫力を高めます。しかし、胃腸の状態が悪いときや生まれつき胃腸が弱い人には、薬が強すぎることがあります。薬が強すぎるとかえって体調が悪くなり、場合によっては動悸どうきやめまい、吐き気などがでてしまいます。

 香蘇散は、胃腸薬としても使われる薬です。胃腸の弱い方が風邪にかかったときに使います。また、寒い時期に体調を崩しやすい方は、風邪の季節になったら予防的に服用を始めます。そうすることで、風邪予防になります。

機能性胃腸症に半夏厚朴湯

 半夏厚朴湯はんげこうぼくとうにもシソが使われています。半夏厚朴湯は、シソ、ショウガ、半夏、厚朴などで、できています。のどのつかえ、咳せき、吐き気といったのどから胸、みぞおちにかけての症状に使われる半夏厚朴湯は、耳鼻咽喉科、呼吸器内科、消化器内科で扱う病気(咽頭炎、気管支炎、逆流性食道炎、慢性胃炎など)に使われています。

 最近では、超音波検査でもCT検査、胃カメラ検査でも異常がなく、機能性胃腸症(FD:Functional Dyspepsia)と診断されている症状に、半夏厚朴湯が使われます。

 機能性胃腸症の治療には、酸分泌抑制薬、消化管運動機能改善薬、粘膜保護薬、マイナートランキライザーなどが使われるほか、最近ではヘリコバクター・ピロリ菌の除菌なども行われています。さらに、治療の選択肢に半夏厚朴湯を加えることで、症状に悩んでいる多くの人を救うことが出来ます。

 シソは、身近にある漢方薬の材料です。これからの時期、薬味としてシソを使ったり、ショウガを組み合わせてみたり、料理にうまく活用すると良いと思います。みなさんが、元気で健康に毎日を過ごされますように、心から祈っています。

生姜の効用 からだを温めて風邪予防

今年は、東京都港区の芝大神宮「だらだら祭り」が、9月11日から21日まで開催されます。芝大神宮は、平安時代の寛弘2年(1005年)、一条天皇の御代に創建されたと言われている由緒あるお社です。

芝大神宮の中には「生姜塚」もあります

 この「だらだら祭り」は、別名「生姜しょうが祭り」とも呼ばれています。平安時代に、神社の周辺には生姜畑が多く、生姜を神前に供えたそうです。この生姜をいただくと、風邪にかかりにくくなるという評判から、「生姜祭り」とも呼ばれるようになったのだそうです。

 漢方医学で「風邪薬」として処方される漢方薬には、生姜がよく使われています。代表的なもののひとつが「葛根湯かっこんとう」。落語に「葛根湯医者」という話があります。頭痛にも、腹痛にも、どんな症状にも、すべて葛根湯を処方する医者をおもしろおかしく、枕話にしています。葛根湯は江戸時代、庶民の風邪薬として、とても親しまれていました。

 新生姜は、6月から8月にかけて収穫されます。9月になると、生姜は赤い茎の部分が白くなります。そして、秋から冬にかけて、貯蔵されていた根生姜が、出回ります。生姜は1年を通して、私たちの生活にかかせない食品の一つです。

 海外でも、「ジンジャエール」「ジンジャーティー」など、飲み物として愛されている生姜ですが、どんな効用があるのでしょうか。

ジンゲロールとショウガオール

 生姜の成分は90%以上が水分です。あの香りと辛みは、ほんのわずか含まれている成分の働きです。この香りと辛みの成分が、風邪に効果を発揮します。その成分とはジンゲロールとショウガオールです。

 ジンゲロールとショウガオールを活用した料理で、風邪を予防する方法があります。例えば、生の生姜をそのまますりおろして、生姜汁を料理の香り付け、味付けに使いましょう。さっぱりとした生姜の辛みが食欲をそそります。生の生姜にはジンゲロールが豊富に含まれています。ジンゲロールの効果で、からだを温め、風邪予防になります。

 ちなみに、生の生姜は殺菌作用もあります。お刺し身やお寿司すしのツマに生姜を添えると効果的です。

 スライスした生姜を使って、温かい飲み物を作りましょう。生姜は、加熱するとジンゲロールがショウガオールに変わります。ジンゲロールよりもショウガオールのほうが、身体を温める作用が強いのです。このためショウガオールは、からだの芯から温めてくれます。また、肉料理に生姜を使うと、生姜に含まれる消化酵素が肉を軟らかくしてくれます。

 これからの季節、風邪対策が必要になってきます。生姜をうまく活用して、元気で健康な毎日をお過ごしください。

 そして、だらだら祭りにお越しの際は、ぜひ、日本社会薬学会市民講座「薬のホント!食のホント!」 にも、お寄りくださいね。私が生姜の効用についても解説する予定です。生姜とゆかりのある芝大神宮のそばで生姜の話ができるのも、ありがたいです。市民講座は13日(土)午後2時から、慶応大学薬学部芝共立キャンパス(東京都港区)で。参加無料。当日参加も受け付けています。詳しくはこちらをご覧ください。お待ちしております。

唐辛子で代謝を活発に

韓国に行ってきました!

 先日、わたしは、はじめて韓国へ行ってきました。韓国と日本の医学交流のために、大韓韓醫學會(大韓韓医学会)で講演するためです。「西洋医学と東洋医学の調和」と題して、お話しさせていただきました。

 それぞれの国の医療には、特色があります。例えば、韓国では伝統医学である韓医学は、西洋医学とは別の専門大学で学ばないといけません。病院も別で、西洋医学を受けている患者さんが、韓医学の治療を受けたいときは、あらためて韓医学の病院を受診する必要があります。日本では、西洋医学も日本の伝統医学である漢方医学も、一人の医師の診察で受けることが出来ます。

 医療の教育もシステムも違う国同士が、協力し合い、これからの医療を発展させていくために開かれた学会でした。

ソウルで食べた料理は…

 学会の合間、同行した日本東洋医学会の皆さんと一緒に、ソウル市内を観光させていただきました。旧市街地にある京東市場(キョンドンシジャン)には、薬草を扱う問屋が並び、街中にその臭いが漂っていました。日本と違い、生活の中に薬草を使った体調管理法が深く根付いていることをうかがわせる場所でした。

 もちろん、韓国料理もいただきました。はじめての韓国旅行でしたので、どんなに辛い食事になるのか、ドキドキしていました。大韓韓医学会の皆さんとの晩さん会ではいただいた伝統料理は、カボチャの甘いスープや酸っぱい水キムチなど、辛い味付けのものは、ほとんどありませんでした。

 数々の品の中で、ひとつだけ、辛い味付けの料理がありました。このとき、目の前にいらっしゃった学会会長夫人が、「この料理、辛いわね」と顔をしかめたものですから、びっくりです。わたしの先入観で、「韓国の人は、辛いものに慣れている」と思い込んでいたことが間違っている、と痛感した瞬間でした。

 「韓国料理は、辛い」のではなくて、日本では「辛い味付けの韓国料理が多い」ということだったのですね。

唐辛子の効用と注意点

 辛い味付けのもとは、唐辛子です。

 唐辛子の効能は、カプサイシンによる代謝亢進こうしん作用です。体の代謝を活発にしますので、熱を発生して、汗をたくさん出します。このため、エネルギーをたくさん燃やすことが出来ますので、ダイエット効果があると、一時、注目されましたね。また、寒い時期には、唐辛子で味付けをした料理を食べると体が温まると言われています。

 しかし、食べ過ぎるとカプサイシンの作用で、腸が刺激され、腹痛になったり、下痢をしたりしますので、注意が必要です。

 わたしは、今回の旅行で唐辛子が入った料理も食べてみました。すると、胃のあたりが温かくなり、頭のてっぺんから湯気が出るように汗がふきだしていました。さらに、お腹なかがゴロゴロと動き、何度もトイレへ行くことになりました。どうも、わたしには、その料理の唐辛子は強すぎたようでした。人によっては、少量の唐辛子でもお腹を壊してしまう人がいます。唐辛子の食べ過ぎにはくれぐれも注意してください。

別々に発展した韓医学と漢方医学

 それぞれの国で、医療は特徴のある医学へ何年もかけて発展してきました。それは、伝統料理や伝統文化と同じように、国民性や土地柄が大きく影響しています。韓医学と漢方医学は、同じ薬草を使った医学ですが、診断方法も、治療方法も大きく異なり、それぞれにすばらしい医学として、現在に至っています。

 わたしたちが、積極的に行う必要があるのは、海外の文化に学び、自分たちの生活に活いかすことです。医学も同じです。隣国である韓医学に学び、漢方医学を大きく発展させることが大切だと、強く感じた韓国旅行でした。